文献情報
文献番号
200821022A
報告書区分
総括
研究課題名
大腿骨頚部骨折予防技術による施設介護高齢者の転倒恐怖緩和、生活機能及びQOLの維持・向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-長寿・一般-033
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
原田 敦(国立長寿医療センター 機能回復診療部)
研究分担者(所属機関)
- 徳田 治彦(国立長寿医療センター 臨床検査部)
- 長屋 政博(介護老人保健施設ルミナス大府)
- 奥泉 宏康(東御市立みまき温泉診療所)
- 加藤 智香子(名古屋大学医学部 保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
介護施設高齢者でヒッププロテクター(以下HP)による大腿骨頸部骨折予防の検証を行うと共に二次効果で転倒恐怖、生活機能、生活の質(Quality of life:QOL)の維持向上が得られるかを検討した
研究方法
RCTで参加基準は特養及び老健施設入所者で介助車いす以上の移動能力、大腿骨頚部骨折リスク1つ以上を有する70歳以上女性で57施設612名が登録、最終解析できたのは55施設551名であった。硬性HP群142名、軟性HP群148名、コントロール261名で追跡期間は277日であった。開始時調査項目は、病歴・薬歴、転倒・骨折歴、認知能力、ADL、踵骨超音波骨評価、血液生化学検査で今年度は非カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)を含めた。MMSE15点以上者の転倒恐怖(FES)、身体活動量、QOL (SF-8)、筋力、バランス、歩行速度を評価追跡した。開始後はHP装着状況、転倒と外傷、転倒時装着が毎日記録された。HPによる介護者負担も調査した
結果と考察
参加者は平均86.0才、ucOCは特養入所者で高値を示し骨型ALP、NTxと正の相関、iPTHとも正の相関さらに踵骨超音波評価値と負の相関を示した。ucOCはビタミンK不足を反映するとされ介護施設高齢女性のビタミンK不足を考慮する必要性が示唆された。転倒発生はコントロールで43%とHP群28%より高かった。コンプライアンスは24時間完全着用は硬性HP59%、軟性HP64%で両者差はなく昼間着用は硬性HPが軟性HPより高かった。介護者はHPが介護時間延長に繋がるとは考えず40%はHP脱着の負担を受け入れても良いと回答した。大腿骨頚部骨折は16例(2.9%)発生し1例は転倒なく生じた。大腿骨頸部骨折発生をHP群とコントロールで比較すると、発生率は前者1.7%、後者4.2%で、年齢、MMSE、転倒回数、精神安定剤で調整したオッヅ比は0.35とHPで大腿骨頚部骨折リスクは減少するものの有意差は境界領域だった。しかし転倒による本骨折に限るとオッヅ比0.27(95%CI 0.08-0.89)と有意な有効性が示された。製品別検討では硬性HP群で本リスクが減少傾向にあった。認知機能障害が重度でないサブグループで12ヶ月までFESやQOL等が評価できたHP群21名、コントロール21名を解析すると開始時、3,6,12ヶ月時ともに、FES、SF-8下位項目のPCS、MCS、歩数は両群ともに有意な変化を示さず製品別検討でも同様であった
結論
HPは、介護施設高齢女性において転倒による大腿骨頸部骨折を減少させるが、転倒恐怖やQOLなどへの間接効果は期待できない
公開日・更新日
公開日
2009-05-22
更新日
-