急性脊髄損傷に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いた神経保護療法:エビデンスの確立をめざした臨床試験

文献情報

文献番号
200818032A
報告書区分
総括
研究課題名
急性脊髄損傷に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いた神経保護療法:エビデンスの確立をめざした臨床試験
課題番号
H20-臨床研究・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 正志(千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 大河 昭彦(千葉大学医学部附属病院整形外科)
  • 村田 淳(千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
35,062,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性期脊髄損傷に対する顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte colony-stimulating factor: G-CSF)を用いた神経保護療法の安全性を確立し、治療効果を明らかにすることを目的とした。我々はG-CSFが脊髄損傷に対して治療効果を有することを基礎研究にて実証してきた。本研究では、脊髄損傷の臨床例におけるG-CSF神経保護療法の有用性を明らかにすることを目的とした。
研究方法
安全性確認を主目的とするphase I・IIa臨床試験を計画し、2008年3月に千葉大学医学部附属病院治験審査委員会の承認を得た。対象は急性期脊髄損傷患者および圧迫性脊髄症急性増悪患者である。研究デザインはオープンラベル用量漸増試験で、第1段階はG-CSF 5μg/kg/日を5日間、第2段階は10μg/kg/日を5日間、第3段階は15μg/kg/日を5日間、第4段階は15μg/kg/日を10日間点滴静注にて投与する。有害事象の有無を確認し、運動・感覚麻痺の推移、血液・MRI・髄液所見の評価を行う。
結果と考察
平成20年度は、急性期脊髄損傷患者(受傷後48時間以内の例)3例、圧迫性脊髄症急性増悪患者(直近1ヵ月間に日本整形外科学会頚髄症治療判定基準にて2点以上の悪化を認めた例)1例に対して本試験を施行した。本人の自由意思による文書同意を得た後、G-CSF 5μg/kg/日を5日間点滴静注投与した。投与後に有害事象の有無を確認し、運動・感覚麻痺の推移、MRI所見の評価を行った。神経所見については、G-CSF投与後に、程度の差はあるものの全例で運動・感覚麻痺の改善が得られた。白血球数は投与開始の翌日には19400以上に上昇し、投与期間中は19400-32400の値が維持され、最終投与の3日後には、ほぼ投与前の値に戻った。G-CSF投与期間中および投与後に有害事象の発生はなかった。今回施行している臨床試験phase I・IIaでG-CSF投与の安全性が確認できれば、次の段階として、G-CSFの治療効果の評価を主目的とする臨床試験phase IIbに進む計画である。
結論
急性脊髄損傷に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いた神経保護療法のエビデンス確立のために、安全性確認を主目的としたphase I・IIa臨床試験を開始した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-