文献情報
文献番号
202025001A
報告書区分
総括
研究課題名
個人輸入されるライフスタイルドラッグの実態に関する研究−主に美容関連薬及び脳機能調整薬について−
課題番号
H30-医薬-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座)
研究分担者(所属機関)
- 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
- 秋本 義雄(金沢大学 医薬保健学総合研究科)
- 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
- 大栁 賀津夫(北陸大学 薬学部)
- 平賀 秀明(東邦大学 薬学部)
- 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
美容や脳機能向上等ライフスタイルの改善を目的とした医薬品の個人輸入及び国内ネット販売化粧品について保健衛生上の実態を明らかにし、今後の対策の参考に資する。
研究方法
(1)医師による美容関連薬個人輸入に関する実態調査:医療情報専門サイトの登録会員で美容医療経験のある美容外科、形成外科及び皮膚科の医師にインターネット質問票調査を実施した。個人輸入経験のある医師60名の回答をFisherの正確確率検定で解析した。
(2)美容関連薬による健康影響に関する文献調査:昨年度までの調査で明らかになった一般人及び医師により個人輸入される美容関連薬の成分に起因する健康被害の種類と重篤度を副作用等情報並びに事故情報データバンクにより調査した。
(3)脳機能調整薬の使用実態と健康影響に関する調査:インスタグラムおよびユーチューブから脳機能調整薬の使用実態を調査した。さらに、販売・輸入代行サイトで検出された28成分の脳機能調整薬の健康被害を科学論文及び公的情報で調査した。
(4)まつげ美容液に含まれるビマトプロスト等の医薬品成分の分析:試買したまつげ美容液64種について、HPLC-MS/MSによりプロスタグランジンF2類縁体(PGF2α)の含有の有無を確認し、さらに、内部標準法により各PGF2類縁体を定量した。
(5)アナボリックステロイドの試買・調査・分析:試買したメタンジエノン製品の注文サイトの記載事項を観察した。入手製品について外観観察、真正性調査、およびラマン散乱分析により錠剤と製品の異同識別を行った。
(2)美容関連薬による健康影響に関する文献調査:昨年度までの調査で明らかになった一般人及び医師により個人輸入される美容関連薬の成分に起因する健康被害の種類と重篤度を副作用等情報並びに事故情報データバンクにより調査した。
(3)脳機能調整薬の使用実態と健康影響に関する調査:インスタグラムおよびユーチューブから脳機能調整薬の使用実態を調査した。さらに、販売・輸入代行サイトで検出された28成分の脳機能調整薬の健康被害を科学論文及び公的情報で調査した。
(4)まつげ美容液に含まれるビマトプロスト等の医薬品成分の分析:試買したまつげ美容液64種について、HPLC-MS/MSによりプロスタグランジンF2類縁体(PGF2α)の含有の有無を確認し、さらに、内部標準法により各PGF2類縁体を定量した。
(5)アナボリックステロイドの試買・調査・分析:試買したメタンジエノン製品の注文サイトの記載事項を観察した。入手製品について外観観察、真正性調査、およびラマン散乱分析により錠剤と製品の異同識別を行った。
結果と考察
(1)医師による美容関連薬個人輸入の実態調査:個人輸入した美容薬の有効性・安全性の問題経験者は16名であり、問題未経験者に比べて製品の不具合等の経験割合が高かった。また、規格違いや添付文書無しなどの不具合等の経験者は11名であり、不具合未経験者に比べて製品の効果が期待より弱かった及び効果が強く現れすぎた割合が高かった。適切に評価された品質の確かな美容薬を信頼できる購入先から輸入し、納品時の検品や添付文書の確認が重要である。
(2)美容関連薬による健康影響に関する文献調査:副作用等情報から、個人輸入される美容関連薬成分のうち、ボツリヌス毒素、トラネキサム酸、ミノキシジル、ビマトプロストおよびヘパリン類似物質並びにステロイドの美容目的使用に起因する健康被害が検出され、死亡(ステロイド)を含む重篤なものも検出された。ベタメタゾン類に起因する被害件数が高かった。事故情報データバンクでの美容関連薬成分の訴えでは、ボトックス、ヒアルロン酸、ステロイドおよびハイドロキノンによる皮膚障害を主とする多岐の傷害が検出された。
(3)脳機能調整薬の使用実態と健康影響に関する調査:輸入確認通知施行(H31)後SNSへの投稿から脳機能調整薬の指定成分は消えたが、覚せい剤などの輸入規制成分の投稿が増加した。処方箋医薬品(レミニール、ラサギリン、レボドパ、塩酸アマンタジン、プロプラノロール)は件数も多く重篤な健康被害が報告された。サプリメントではイチョウ葉エキスおよびフェニバットについて報告数が多く重篤なものも含まれていた。
(4)まつげ美容液に含まれるビマトプロスト等の医薬品成分の分析:まつげ美容液64製品のうち、ビマトプロストを含有する製品は4製品あり、グラッシュビスタとほぼ同量のビマトプロストを含有していた。その他、医薬品としては使用実績がないBimatoprost isopropyl ester、Tafluprost ethyl amide Cloprostenol isopropyl esterを含む製品が、それぞれ1製品、2製品、5製品見出された。本測定系は、まつげ美容液中に含有されるPGF2類縁体を同定・定量する有用な手段である。
(5)アナボリックステロイドの試買・調査・分析:個人輸入代行サイト14サイトから、入手したメタンジエノン製品4種15サンプルには、製品ラベルに処方箋医薬品と示すサンプルも存在したが、注文時に処方箋は要求されなかった。ラマン散乱分析の結果、同一製品の錠剤からは類似したラマンスペクトルが得られた。ラマンスペクトルの主成分分析により、製品識別が可能であることが示された。対象を拡大して検証する必要性はあるが、含有成分とその含量が異なる偽造医薬品を鑑別できる可能性を支持する結果が得られた。
(2)美容関連薬による健康影響に関する文献調査:副作用等情報から、個人輸入される美容関連薬成分のうち、ボツリヌス毒素、トラネキサム酸、ミノキシジル、ビマトプロストおよびヘパリン類似物質並びにステロイドの美容目的使用に起因する健康被害が検出され、死亡(ステロイド)を含む重篤なものも検出された。ベタメタゾン類に起因する被害件数が高かった。事故情報データバンクでの美容関連薬成分の訴えでは、ボトックス、ヒアルロン酸、ステロイドおよびハイドロキノンによる皮膚障害を主とする多岐の傷害が検出された。
(3)脳機能調整薬の使用実態と健康影響に関する調査:輸入確認通知施行(H31)後SNSへの投稿から脳機能調整薬の指定成分は消えたが、覚せい剤などの輸入規制成分の投稿が増加した。処方箋医薬品(レミニール、ラサギリン、レボドパ、塩酸アマンタジン、プロプラノロール)は件数も多く重篤な健康被害が報告された。サプリメントではイチョウ葉エキスおよびフェニバットについて報告数が多く重篤なものも含まれていた。
(4)まつげ美容液に含まれるビマトプロスト等の医薬品成分の分析:まつげ美容液64製品のうち、ビマトプロストを含有する製品は4製品あり、グラッシュビスタとほぼ同量のビマトプロストを含有していた。その他、医薬品としては使用実績がないBimatoprost isopropyl ester、Tafluprost ethyl amide Cloprostenol isopropyl esterを含む製品が、それぞれ1製品、2製品、5製品見出された。本測定系は、まつげ美容液中に含有されるPGF2類縁体を同定・定量する有用な手段である。
(5)アナボリックステロイドの試買・調査・分析:個人輸入代行サイト14サイトから、入手したメタンジエノン製品4種15サンプルには、製品ラベルに処方箋医薬品と示すサンプルも存在したが、注文時に処方箋は要求されなかった。ラマン散乱分析の結果、同一製品の錠剤からは類似したラマンスペクトルが得られた。ラマンスペクトルの主成分分析により、製品識別が可能であることが示された。対象を拡大して検証する必要性はあるが、含有成分とその含量が異なる偽造医薬品を鑑別できる可能性を支持する結果が得られた。
結論
美容関連薬、脳機能調整薬は、嗜好され汎用されることがあるが、重篤な健康被害を引き起こす可能性のある医薬品である。また、LC/MSやラマンによる高度な分析が、流通薬の品質に関わる問題の検出に有用である。ライフスタイル薬であっても、品質の確かな医薬品が適正に使用されるよう啓発、情報提供並びに適切な対策が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2021-08-30
更新日
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