建設工事における安全衛生の確保のための設計段階の措置の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202023016A
報告書区分
総括
研究課題名
建設工事における安全衛生の確保のための設計段階の措置の確立に向けた研究
課題番号
20JA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
  • 平岡 伸隆(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所)
  • 堀 智仁(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 高橋 弘樹(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所建設安全研究グループ)
  • 伊藤 和也(東京都市大学 建築都市デザイン学部 都市工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,356,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、①国内外の行政及び研究分野の動向についての調査、②国内の建設工事現場において実施された設計段階の安全衛生に関する措置の事例収集、③設計段階(施工前段階)からの安全衛生確保について、既に行政がガイドラインで示している分野(工事種)での事例研究、を3つの柱として実施することで、国内の建設工事において、活用できる設計段階の安全衛生対策をまとめることを目的とする。
研究方法
 第1の柱の研究①としては、国内外の公的機関の資料、国際的な学術論文、ヒアリング等を通して調査した。
 第2の柱の研究②としては、設計段階の措置の具体例を抽出できるようなヒアリング調査票を作成し、同調査票を国内の建設工事における発注者、設計者、施工者に配布し、ヒアリング調査を行った。
 第3の柱の研究③としては、設計段階又は施工計画段階からの安全対策をまとめている「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン(厚生労働省)」について、現場での取組について調査した。
結果と考察
 第1の柱の研究①から、英国及び独国の行政では、設計段階から安全衛生を考慮し、それをBIMに取り入れていることが分かった。特に、英国では、BIMの安全衛生への利活用について、英国安全衛生庁が公的な資料を公開し普及に努めており、独国でも独国連邦運輸デジタルインフラ省がBIM4INFRA2020ハンドブックとして公的な資料を公開し、BIMの安全衛生への利活用を含めた形で、BIMの普及に努めていた。
 第2の柱の研究②からは、発注者、設計者及び施工者とヒアリング調査をしてきた中で、三者とも設計段階からリスクの除去・低減を考慮し、設計段階からリスク低減措置を施すことに賛成であった。また、明確な社会的な枠組がないものの、会社単位、プロジェクト単位で設計段階からリスクの除去・低減を実施するような取組があった。
 第3の柱の研究③からは、今後の土木事業では「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン(厚生労働省)」と「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン(国土交通省)」とが融合した「意識と体制」を構築したリスクコミュニケーションが重要であることがわかった。
結論
 このように、全体を概観すると、すでに我が国においても、設計段階から考慮する(している)労働安全衛生に係るリスクがあることがわかる。
 具体的には、国土交通省の各地方整備局が設計業務を発注する際に参考とする「BIM/CIM活用業務実施要領」に「BIM/CIM を活用した検討等の具体的な内容」として「リスクに関するシミュレーション(地質、騒音、浸水等)」が明記されている。その詳細としては、「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン(国土交通省)」に、発注者、設計者、施工者等の関係者の連携によるリスクマネジメントとして記載されていた。
 今後は、このような動きを拡大し、建設業において最もリスクの高い墜落・転落災害に対するリスクにも適用していくことが望まれる。
 そのためには、ヒアリング調査からも好事例として情報提供のあった「BIM/CIM」の活用、「設計段階から施工者が関与する方式(ECI方式)」の採用、発注者、設計者及び施工者の合同連絡会議の開催等を適宜実施し、設計段階から安全衛生への配慮を推進していくことが望まれる。
 また、設計段階又は施工計画段階からの安全衛生への配慮の1つの具体的な事例として、斜面ガイドラインを挙げ、リスクコミュニケーションの重要性を指摘した。

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202023016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,662,000円
(2)補助金確定額
5,295,000円
差引額 [(1)-(2)]
367,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,296,000円
人件費・謝金 0円
旅費 23,000円
その他 1,670,000円
間接経費 1,306,000円
合計 5,295,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-03-14
更新日
2022-05-26