文献情報
文献番号
200808005A
報告書区分
総括
研究課題名
人工酸素運搬体の臨床応用に関する研究
課題番号
H18-創薬・一般-022
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
堀之内 宏久(慶應義塾大学医学部 外科)
研究分担者(所属機関)
- 小林 紘一(慶應義塾大学 医学部 外科)
- 高折 益彦(東宝塚さとう病院)
- 土田 英俊(早稲田大学理工学術院)
- 池田 久實(北海道赤十字血液センター)
- 小田切 優樹(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
- 酒井 宏水(早稲田大学理工学術院)
- 饗庭 了(慶應義塾大学 医学部 外科)
- 甲斐 俊哉(二プロ㈱医薬品研究所)
- 高野 久輝(二プロ㈱総合研究所人工臓器開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
人工酸素運搬体であるヘモグロビン小胞体(HbV)のGLP試料を用いて物性の評価,動物を用いて生体反応性及び治療有効性を検討し,GMP製剤製造法を検討した.
研究方法
小角散乱X線,特殊分光法、電極法などを用い小胞体内部の物性を評価。HbV反復投与による代謝をアイソトープで評価。HbV投与後誘導される免疫抑制細胞の形質を明らかとする。動物を用い、長期生存後の組織学的変化、制御不能出血に対する効果、周術期の回復効果、体外循環での評価、臓器移植での検討、脂質の滅菌工程管理向上法の検討,粒子状物質に対する新しい滅菌技術の開発。臨床試験に応用可能な治験モデルを策定した。
結果と考察
小胞体内でHb蛋白は凝集,結晶化をせず酸素運搬機能を発揮。小胞体内で拡散障壁被膜を形成し,NOとの緩やかな反応を示す。一酸化炭素(CO)とは,拡散障壁としての役割は少ない。HbV生食分散系での電解質濃度の評価は困難。リン脂質2重膜の疎水領域におけるNO消費はほとんど無視できる。HbV反復投与では細網内皮系が飽和されるため,ABC現象は起こらない。DSPE-PEGに対するIgM抗体産生が認められた。HbV投与後の免疫抑制状態は脾内のCD11+, CD146+細胞による可能性がある。ビーグル犬に大量使用1年後,組織学的変化は認められず安全に使用可能。制御不能出血に使用して生存率を改善し,酸素代謝が維持された。マウス肺全摘後,出血の補填に使用し,回復は速やかで輸血と同等。体外循環後の脳血流の減少はHbV使用により抑制された。膵島移植にHbVを用いるとViabilityが向上,移植膵島の生着率が向上。滅菌過程での脂質分解は温度,pHに依存,脂質の安定性を確保できる工程が必要。超高圧による滅菌法について検討,滅菌条件を確立することができると考えられた。臨床応用では体外希釈式自己血保存による自己血輸血方式を利用した治験モデルを検討すべきである。
結論
HbVは他の生理活性ガスとの関与し,病的状態でも生体に有利に働く可能性がある.代謝,免疫系への変化は許容範囲内であり,長期生存,出血に対する治療,移植医療への展開が可能と考えられた.GMP製剤の開発にあたり,滅菌技術の確立が最大の課題で高圧による滅菌技術を発展させるべきである.
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
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