社会保障と経済の相互関係に関する研究

文献情報

文献番号
200801014A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障と経済の相互関係に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
青木 玲子(一橋大学 経済研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 葉子(産業経済研究所)
  • 池永 肇恵(一橋大学 経済研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,643,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)出生率と女子就業率の地域差と時系列変化に注目し、労働と出生率の関係を明らかにすることにより、有効な少子化政策を提言する。

(2)観察されている高スキルと低スキルが増え、中間的な業務が減少するという労働市場の「業務の二極化」の非定型手仕事業務増加の背景を、人口動態、経済環境や機会費用の高い高スキル就業者の存在等から分析する。
研究方法
(1)スキル・非スキルな労働力と、高質財・標準的財がある一般均衡モデルを分析した。人口動態調査や全国消費実態調査を使って、出生率、女子労働就業率、婚姻率、教養娯楽支出、百貨店店舗数 等の変数を1975?2005年間の5年おきの時系列を都道府県別にまとめ、モデルの検証を行った。

(2)国勢調査の職業小分類を「非定型分析業務」?「非定型手仕事業務」の5つに分類した。全国消費実態調査や就業構造基本調査等を使って、5業務を、高スキル型就業者を「専門的・技術的・管理的職業」などの近似し、過去20年の非的計手仕事業務の増加の背景を需要面から分析した。 世帯個票を用いて、個人向けサービス消費の需要と家計の属性との関係や、都道府県のデータを用いて、サービス就業者比率と地域の属性及び高スキル就業者比率との関係を検証・要因分解した。
結果と考察
(1)出生率低下の背景は単に女子の労働参加以外の複雑な社会・経済の変化がある。労働条件の改善だけでは出生率の変化は期待できない。

(2)世帯の消費支出に占める個人向けサービスの支出割合には、高齢化、世帯人員数の減少、単身世帯の女性割合の増加など人口動態要因の支出割合の変化がかなり頑健な寄与を示した。また、一般世帯ではこうした人口動態要因は全般的に支出を高める方向い働いた一方、両年の世帯構成の差だけでは説明できない要因(介護保険制度の導入や新たなサービスの登場等)も無視できない寄与を示している。
結論
(1)出生率低下の背景は単に女子の労働参加以外の複雑な社会・経済の変化がある。労働条件の改善だけでは出生率の変化は期待できない。労働参加以外に教育・娯楽もふくむ消費活動が円滑にできる社会システムも考慮する必要がある。労働以外の社会復帰や余暇の創出を援助する社会体制を考えるべきである。
  
(2)非定型手仕事業務増加の背景には高齢化の進展、世帯規模の縮小という人口動態上の変化や高スキル就業者の増加があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-06-12
更新日
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