文献情報
文献番号
200736014A
報告書区分
総括
研究課題名
内分泌かく乱化学物質と子宮体がん発生リスクに関する症例対照研究
課題番号
H17-化学-一般-015
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
八重樫 伸生(東北大学大学院医学系研究科発生発達医学講座婦人科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 潔(東北大学大学院医学系研究科)
- 佐藤 洋(東北大学大学院医学系研究科)
- 坪野 吉孝(東北大学大学院法学研究科)
- 新倉 仁(東北大学病院)
- 永瀬 智(東北大学病院)
- 岡村 智佳子(仙台市立病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1、食物中や環境中に存在する低濃度の内分泌かく乱物質への長期暴露と子宮体がん発生との因果関係を症例対照研究により明らかにすること 2、日本人における子宮体がんの発症危険因子や予防因子を明らかにすること
研究方法
東北大学病院または宮城県立がんセンターで手術を施行し病理組織学的に子宮体がんと診断された者を症例とし、対照として人間ドックを受診した女性を1症例につき1ないし2名登録。研究対象者のPCB、農薬、ビタミン類の血中濃度を測定し、生活習慣に関する記述式アンケートと食物摂取頻度調査票を調査。環境要因、栄養素、などを含む危険因子を抽出するとともに、PCBや塩素系農薬の子宮体がんに対するリスク評価をする。
結果と考察
PCB、DDTおよびDDEは、年齢が上昇するに従いそれらの血中濃度も有意に増加しており、体内への蓄積性が確認された。PCB類を4分位に分けEEA発症リスクのオッズ比を検討した。年齢と居住地域のマッチ以外補正をしていない粗オッズ比では、4分位最小群を基準にしたとき4分位最大群ではHeptaCBで0.40 (95% 信頼区間:0.20 – 0.81) (P for trend=0.043)、DecaCBで0.41 (0.22 – 0.78) (P for trend=0.08)と有意なリスク低下を示し、負の量―反応関係も認められた。一方、多変量解析では、同様に4分位最小群を基準にしたとき4分位最大群ではTriCBでオッズ比0.37 (0.15 – 0.93) (P for trend=0.10)と有意なリスク低下を示したが、量-反応関係は有意ではなかった。農薬においても同様に血中の濃度を4分位に分け検討した。4分位最小群を基準にした時、粗オッズ比、多変量オッズ比共に有意なものは認めなかった。飲料と子宮体がんとの関連については、緑茶の摂取頻度が高まるに従い、子宮体がんのリスクは低下し(p-trend =0.017)、交絡因子を加えた多変量解析においても、緑茶摂取頻度が増加するに従い子宮体がんの発生リスクが有意に低下した(p-trend=0.036)。
結論
現時点では、方法的限界はあるものの、日本の一般住民レベルおいて、PCBや農薬への長期的曝露が子宮体がんの原因にはならないことが初めて明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2008-04-09
更新日
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