文献情報
文献番号
200736001A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質による子どもへの健康影響に関する研究-恒常性維持機構発達の過渡特性に立脚したリスク評価研究-
課題番号
H17-化学-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター総合評価研究室)
研究分担者(所属機関)
- 中島 欽一(奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科・動物代謝調節学講座・分子神経分化制御学分野)
- 種村 健太郎(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・毒性部)
- 竹田 潔(大阪大学大学院医学系研究科(C6)感染免疫医学講座免疫制御学)
- 渡邉 肇(自然科学研究機構・基礎生物学研究所・岡崎統合バイオサイエンスセンター・生命環境)
- 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・毒性部)
- 田上 昭人(国立成育医療研究センター・薬剤治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
53,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「子どもは小さな大人ではない」との考えのもと、離乳や性成熟などの外的・内的な大変動を経て成人に至る過程で子どもが経験する高次恒常性維持機構の過渡的アンバランスの特性を踏まえた化学物質の有害作用発現の子どもとしての特異性を解明する。
研究方法
「恒常性維持機構発達解析」として神経・免疫・内分泌系の発生成長の解析、「外挿問題解析」として大人の評価を子どもへ、及び実験動物の評価をヒトへ外挿する研究を実施する。
結果と考察
「恒常性維持機構発達解析」:1)紫外線吸収剤について、女性ホルモンによる毒性軽減が示唆される結果が得られ、これが離乳前の子どもに毒性が強く出る理由であることが示された。2)神経系について、レチノイン酸が神経幹細胞の成熟を早め、バルプロ酸は分化に影響を与えることが明らかになった。また、3)胎児期のグルタミン酸受容体過剰刺激により、成熟時の脳構造、行動に顕著な障害が生じることが分かった。4)免疫系について、自然免疫系の細胞も、獲得免疫系を担当するリンパ球のように子どもの成長に応じて発達する可能性がある結果が得られ、これは化学物質の子どもへの健康影響を考察するための基盤的知見として特に有用であると考えられた。5)内分泌について、新生仔期エストロゲン曝露による不可逆的な影響の誘発メカニズムに関わる遺伝子を同定した。
「外挿問題解析」:1)網羅的遺伝子発現解析を駆使し、ドーモイ酸(DA)に対する感受性が幼若期の方が成体より高い背景を遺伝子レベルで解析した結果、幼若個体、成体で遺伝子発現応答が異なっていることが確認された。幼若期投与では成体期投与とは異なり、脳発達に関連する遺伝子発現変化を起点に、グルタミン酸受容体過剰刺激の影響が固定化し、成体期投与よりも重篤な影響を起こす可能性が示唆された。2)マウス細胞を用い、バルプロ酸が神経細胞分化を促進する分子メカニズムの一端が明らかになり、個体レベルでのバルプロ酸の催奇形性の発症のメカニズムの解明に有用な知見であると考えられた。
「外挿問題解析」:1)網羅的遺伝子発現解析を駆使し、ドーモイ酸(DA)に対する感受性が幼若期の方が成体より高い背景を遺伝子レベルで解析した結果、幼若個体、成体で遺伝子発現応答が異なっていることが確認された。幼若期投与では成体期投与とは異なり、脳発達に関連する遺伝子発現変化を起点に、グルタミン酸受容体過剰刺激の影響が固定化し、成体期投与よりも重篤な影響を起こす可能性が示唆された。2)マウス細胞を用い、バルプロ酸が神経細胞分化を促進する分子メカニズムの一端が明らかになり、個体レベルでのバルプロ酸の催奇形性の発症のメカニズムの解明に有用な知見であると考えられた。
結論
各々のテーマについて「子どものリスク評価」を科学的に検討する基礎となる知見が得られた。特に自然免疫系の細胞も、獲得免疫系のように発達するという、従来の常識を覆す知見は特筆すべき結果であった。更に研究を続け、その基礎となる知見を集積する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2008-04-12
更新日
-