文献情報
文献番号
202002005A
報告書区分
総括
研究課題名
NDBデータから患者調査各項目及びOECD医療の質指標を導くためのアルゴリズム開発にかかる研究
課題番号
19AB1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
研究分担者(所属機関)
- 田村 寛(京都大学 医学部附属病院)
- 森 由希子(京都大学 医学研究科 医療情報学)
- 平木 秀輔(京都大学 医学研究科)
- 大寺 祥佑(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
- 植嶋 大晃(京都大学医学部附属病院)
- 酒井 未知(立命館大学総合科学技術研究機構)
- 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 児玉 知子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
NDBデータの公的統計等の基礎データとしての活用可能性を探るという本研究の目的のもと、患者調査を対象として「患者調査各項目の再現の検討」「患者調査における平均診療間隔についての評価」を行った。同様に、OECD保健医療の質とアウトカム(HCQO:Health Care Quality and Outcome)において、NDBデータ利用の可能性が期待できる領域におけるアルゴリズム作成を実施した。また、NDBサンプリングデータセットから得られた終末期高齢者の診療実態に関する記述・横断研究を通じて、確認される検討課題の提示を試みた。
研究方法
研究に際しては、2014年度分NDBデータを使用し、厚生労働省に利用申出を行い承諾を得たうえで、所定のガイドラインを遵守して行った。分担研究においては、他年度のサンプリングデータセットも個別に活用している。
結果と考察
患者調査各項目の再現については、患者調査の集計値と比較して、外来事例において入院事例よりも患者数が少なく集計される傾向が見て取れたが、外来事例において「ⅩⅠ 消化器系の疾患」「ⅩⅩⅠ 健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用」に限定されて「患者調査/NDB比」が著しく大きな値となっていたことから、それ以外の疾患の章においては、疾患間でそれほど大きな差がみられないことが示された。また、転帰区分「死亡」については、特に「一般病床(病院)」において「患者調査/NDB比」の値が通常の患者総数の比率と近い値を示していたとともに、いずれの在院期間においても似たような傾向となっていた。このことから、一般病棟での入院事例においてレセプトにおける転帰区分「死亡」は一定程度活用可能であることが示唆された。
患者調査における平均診療間隔については、従来の患者調査では前回診療日より30日以内に受診した再来患者のみを診療間隔計算の対象としており、31日以上経って再来した患者は考慮していないが、近年、診療間隔が延長傾向にあることや、患者調査では3年に1回の調査年の特定の日の受診状況のみが把握されるため、季節変動の大きな疾患の影響をうまく把握できないことが、現在の患者調査における平均診療間隔の評価方法の限界として存在していることを確認した。
NDBデータからOECD-HCQO指標を導くためのアルゴリズム開発についは、HCQOの7領域(プライマリケア‐回避可能な入院、プライマリケア‐処方、急性期ケア、メンタルヘルス、患者安全、患者経験、がんケア)のうち、主に”プライマリケア-入院”に関する7指標(喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うっ血性心不全、高血圧、糖尿病(による下肢切断)に対して行った。HCQOガイドラインでは、“全ての急性期病院(all acute care hospitals)”という定義がなされているが、国内での急性期病院の定義は定まっておらず、NDBでは入院基本料によって医療機関を絞り込むか、もしくはDPC病院のみを急性期医療機関と定義する等が考えられるが、何れにしてもコンセンサスを得ることが求められる。また、傷病の絞り込みに際しては、ICD10に加え、医薬品処方歴や診療行為による絞り込みが必須となる。本報告中の糖尿病の下肢切断のコーディングにみられるように、収載年度によって変更・削除されるレセプトコードの把握が求められる。抽出の精度を高めるには、カルテレビュー等を含めた妥当性評価(validation study)が必要であり、今回抽出した疾患別の絞り込み条件についても更なる検証とコンセンサス形成が重要であることが確認できた。
末期高齢者の診療実態に関する記述・横断研究を通じて確認された検討課題として、レセプトデータを用いた診療実態解明研究では、医療資源消費量が主要評価指標として関心が寄せられているが、実際には個々の患者の予後の予測や、疾患、重症度等によって解釈が異なることから、消費された医療資源の量と、医療の質や患者アウトカムとの関連をいかに評価するかが挙げられると考えられた。また、所在地域、病床数、医療機関の種別(がん拠点病院等)、集中治療室診療料、救急医療診療料、緩和ケア診療加算等のデータから医療体制の差異などを検討することも可能である。これらのデータを活用し、診療内容や医療費のばらつきに寄与する医療供給側因子を明らかにすることも課題であると考えられた。
患者調査における平均診療間隔については、従来の患者調査では前回診療日より30日以内に受診した再来患者のみを診療間隔計算の対象としており、31日以上経って再来した患者は考慮していないが、近年、診療間隔が延長傾向にあることや、患者調査では3年に1回の調査年の特定の日の受診状況のみが把握されるため、季節変動の大きな疾患の影響をうまく把握できないことが、現在の患者調査における平均診療間隔の評価方法の限界として存在していることを確認した。
NDBデータからOECD-HCQO指標を導くためのアルゴリズム開発についは、HCQOの7領域(プライマリケア‐回避可能な入院、プライマリケア‐処方、急性期ケア、メンタルヘルス、患者安全、患者経験、がんケア)のうち、主に”プライマリケア-入院”に関する7指標(喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うっ血性心不全、高血圧、糖尿病(による下肢切断)に対して行った。HCQOガイドラインでは、“全ての急性期病院(all acute care hospitals)”という定義がなされているが、国内での急性期病院の定義は定まっておらず、NDBでは入院基本料によって医療機関を絞り込むか、もしくはDPC病院のみを急性期医療機関と定義する等が考えられるが、何れにしてもコンセンサスを得ることが求められる。また、傷病の絞り込みに際しては、ICD10に加え、医薬品処方歴や診療行為による絞り込みが必須となる。本報告中の糖尿病の下肢切断のコーディングにみられるように、収載年度によって変更・削除されるレセプトコードの把握が求められる。抽出の精度を高めるには、カルテレビュー等を含めた妥当性評価(validation study)が必要であり、今回抽出した疾患別の絞り込み条件についても更なる検証とコンセンサス形成が重要であることが確認できた。
末期高齢者の診療実態に関する記述・横断研究を通じて確認された検討課題として、レセプトデータを用いた診療実態解明研究では、医療資源消費量が主要評価指標として関心が寄せられているが、実際には個々の患者の予後の予測や、疾患、重症度等によって解釈が異なることから、消費された医療資源の量と、医療の質や患者アウトカムとの関連をいかに評価するかが挙げられると考えられた。また、所在地域、病床数、医療機関の種別(がん拠点病院等)、集中治療室診療料、救急医療診療料、緩和ケア診療加算等のデータから医療体制の差異などを検討することも可能である。これらのデータを活用し、診療内容や医療費のばらつきに寄与する医療供給側因子を明らかにすることも課題であると考えられた。
結論
本研究では、研究班の最終年度として、主にNDBデータを用いた患者調査各項目の再現を行い、得られた結果への評価を行った。また、患者調査における平均診療間隔についての評価、NDBデータからOECD-HCQO指標を導くためのアルゴリズムの開発、末期高齢者の診療実態に関するNDBを用いた記述・横断研究を通じて確認された検討課題の確認を行った。
公開日・更新日
公開日
2022-10-17
更新日
-