長期的人口減少と大国際人口移動時代における将来人口・世帯推計の方法論的発展と応用に関する研究

文献情報

文献番号
202001018A
報告書区分
総括
研究課題名
長期的人口減少と大国際人口移動時代における将来人口・世帯推計の方法論的発展と応用に関する研究
課題番号
20AA2007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では 2008 年頃より長期的な人口減少時代に突入しているが,近年では出生 数の急速な減少ともに,将来人口の動向に 対していっそう注目が集まっている。また,2019 年の新規在留資格の創設に伴って外 国人労働者のさらなる拡大が見込まれていることに加え,国内では,東京圏における人口一極集中の継続や地方圏における著し い人口減少及び超高齢化の顕在化など,人 口に関連する問題は非常に多岐にわたっている。本研究では,新たなフェーズに入っ たと考えられる国際人口移動をはじめ,出 生・死亡・国内人口移動の短期的・長期的傾向を的確に把握して分析するとともに,国立社会保障・人口問題研究所(社人研) が実施する人口・世帯の将来推計の精度向上および推計手法の方法論的発展およびその応用に関する研究を行うものである。
研究方法
研究は以下の(1)〜(3)の3領域に分けて進めた。
(1)長期的人口減少と大国際人口移動時代 における人口・世帯分析の深化
(2)外国人人口の急増や新たな出生・死亡のトレンドに対応した将来人口・世帯推計モデルの開発
(3)将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
なお,研究全般にわたり,社人研や研究 者個人が属する国際的研究ネットワークを 最大限に活用し,諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また,研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに,所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し,総合的に研究を推進した。
結果と考察
本研究の結果と考察は多岐にわたるため、一部を抜粋して記す。
人口規模の小さい自治体を対象とした実績値とベイズ推定値の比較分析の結果、ベイズ推定により市町村の出生率(実績値)より低い都道府県の出生率(実績値)に引き寄せられる傾向が強いことなどが明らかとなった。同様に出生力の地域差に関する知見として、市区町村別の出生力指標とその他のマクロデータをリンクさせ、全国の市区町村を9つのクラスターに分類した結果、夫婦の出生行動に作用すると考えられる要因がクラスターによって大きく異なることが明らかになった。出生と居住地移動に関する研究からは、2000年代以降の都心回帰においては、子育て世代による移動パターンの変化、とりわけ郊外への転出傾向の低下が一定の役割を果たしていることが示唆された。死亡率推計へのモデル生命表の応用として、Wilmoth et al.(2012)のflexible modelを都道府県別生命表に適用した結果、高齢層で系統的な乖離が観察された。そこで、flexible modelの修正モデルを開発し、これを埼玉県和光市の死亡率推 計に応用したところ良好な結果が得られた。新型コロナウイルス感染症によって、今後の人口動態の行方に大きな関心が集まっているが、毎年の出生数から生年別死亡数を差し引くことで日本人生年コホートデータを作成し、それを国勢調査をはじめとする横断データと比較することで、過去に発生した想定外の人口変動の評価を試みた。その結果、1918~1920年のスペインインフルエンザ、1957年のアジアかぜ流行時に、出生数の減少の後に増加が認められ、失われた妊娠・出産機会の取り戻しとも考えられる。
結論
市区町村別の出生力指標とその他のマクロデータから析出された9つのクラスター間において夫婦出生力の規定要因が大きく異なることから、出生力が回復した他の市区町村の事例をそのまま参照することの危険性が示唆された。地域文脈によって効果のある対策が異なるとすれば、当該地域がどのような社会経済文化的特徴を有しているのか、また同じような社会経済文化状況を前提に、どのような取り組みが有効かを議論していくことが効率的である。また、市区町村別出生率に仮にベイズ推定の枠組みを維持するのであれば、「より広い地域」を平成10~14年統計以前において採用されていた二次医療圏に戻すことがひとつの可能性としてあり得るだろう。その他の推定法としては、過去に観察された実績値とベイズ推定値の乖離の情報を反映させる手法や、ベイズ推定法に依拠しない別の手法も考えられる。死亡率推計へのモデル生命表の応用については、修正モデルは自治体が将来口推計を行う際に必要となる生残率の設定などに極めて有用と考えられる。また、社会保障財政影響シミュレーションについては、新たなシミュ レーションに向けての問題点を検討することにより、今後、実際の財政影響シミュレーションを行うにあたっての基礎的な整理がなされた。

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202001018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,390,000円
(2)補助金確定額
5,390,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,536,006円
人件費・謝金 455,800円
旅費 0円
その他 1,398,484円
間接経費 0円
合計 5,390,290円

備考

備考
自己資金による負担が290円発生したため。

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
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