ITを活用した医療事故防止対策の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200732057A
報告書区分
総括
研究課題名
ITを活用した医療事故防止対策の効果に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-033
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 司(財団法人 労働科学研究所 研究部 慢性疲労研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 内藤堅志(財団法人労働科学研究所主任研究員)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ITシステムの事故防止やリスク管理に対する有効性を評価する中で、システムの今後の方向性や現時点での課題を見極めることとした。H19年度はITシステムを導入した病院での看護業務の過程を分析し、ヒューマンファクター上のエラー誘発要因を記述し、改善点の評価、新たな問題点を抽出することを基本とした。さらに事故事例の解析、安全文化評価、患者満足度調査も同時に行い、善点の評価および新たな問題点を抽出をした。
研究方法
中規模地域一般病院の内科病棟及び外科病棟を対象とした。調査項目はITシステムを導入業務を把握するために、ヒアリング、業務観察、事故事例調査を、エラー誘発の背景要因を検討するために、安全文化調査、患者満足度調査を行った。
結果と考察
ITシステムは、電子カルテシステムとオーダリングシステムから構築されていた。看護師は情報収集を電子カルテ中心に行っていた。しかし情報を「自分のメモ」に転記していた。事故事例から、オーダリング・電子カルテ運用の不備、スタッフ間のコミュニケーション不足、職員の経験不足がリスクとして抽出された。特にオーダリング・電子カルテの運用に関しては、システムの特徴や情報転送の制限が職員に周知されていないためにトラブルが発生していた。
安全文化調査から、医師の認識が組織内で孤立していると考えられた。さらに作業条件、情報経路・コミュニケーションを改善すべきであると考えられた。患者満足度は、医師や看護師の説明に多くの患者が納得をしていた。患者の医療への参加について、半数が「参加をした」と回答しており、参加内容も「医師や看護師の説明の受入」、「与薬時の名前確認」などであった。
結論
看護師は情報収集の際に、電子化されている情報を「メモ」に転記しており、必要とする情報を覚えやすく、取り出しやすい状態に加工している事が推測された。これは記録媒体が紙ベースの時と同じ行為である。必要とする情報を取り出しやすく、わかりやすい状態で保存することが今後の課題と考えられる。安全向上のために、ITシステムの特徴や情報転送・共有制限の周知徹底、医師を中心とした「安全意識の向上、業務改善、ITシステムの運用方法」などを行う必要があると思われた。患者の医療参加は積極的で、内容も「与薬時の名前確認」であることから、今後ITシステムをさらに整備し、ベッドサイドで情報開示を行うことが医療参加・安全向上に繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200732057B
報告書区分
総合
研究課題名
ITを活用した医療事故防止対策の効果に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-033
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 司(財団法人 労働科学研究所 研究部 慢性疲労研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 内藤 堅志(財団法人労働科学研究所 主任研究員)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ITシステムの導入前の病院と,導入された病院での事故発生要因を明らかにすることで,IT化により,医療情報が業務遂行の過程でどのように有効活用され,安全確保及び事故防止にいかに寄与しているかを解明することを目的とした。本研究でのITシステムとは,対象病院で採用されていた,カルテおよびオーダリングシステムの電子化を指した。
研究方法
ITシステムの導入されていない心臓循環器の専門病院と,ITシステムが導入された中規模一般病院の2つの病院において,事故事例の解析,看護師の業務観察,アンケート手法による安全文化調査,医療提供に対する患者満足度調査を行った。これらの調査は,病棟で生じた事故の発生要因を明らかにし,その背景にある医療システム,医療従事者の働き方,安全意識,医療サービスに対する患者の満足度との関係を調べるために行った。
結果と考察
IT化が医療安全に寄与する点としては,対象病院での事故事例解析や業務観察より以下の項目が挙げられた。
1.帳票類の入力や指示出しの方法の統一による作業の標準化がなされる
2.1のような作業の統一による効率化がなされる
3.情報の共有化がなされる(スタッフが誰でもどこでも情報を得られる)
4.インシデント・アクシデントに対して再分析可能な医療プロセスの記録が得られる
5.記録が残ることで事故トラブルの防止に役立つ
6.指示や記録の字のきれいさが向上し,記録形式が統一されて読み違えが減る
7.ポータブル端末により記録がどこでもできるようになる
(実施と記録の時間差が縮まる,ナースステーションまで戻る手間が減る)

ITシステムが導入される前の病院においては,インシデント・アクシデントの背景に,口頭指示による指示・情報伝達の問題,記録や情報の転記による読み違え,実施と押印や記録時間の誤差が生じること,情報伝達・記録・作業ルールの統一が不十分であるという結果が示された。また,これらの問題点はITシステムが導入された病院においても指摘され,ITシステム導入の過渡期であると判断された。
結論
ITシステム導入過渡期における医療安全性確保のためには以下の点を優先する必要が示された。
1.帳票類の相互連動の促進
 →IT化されたことによる作業の煩雑さ,手間を防ぐ
2.業務ルールの整備
 →指示・情報伝達,記録,作業手順を明確にする
3.職種間の安全意識のギャップの解消
 →医師と看護師間の業務ルールの統一による指示・情報伝達の齟齬を防ぐ

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200732057C