双極性障害の神経生理・画像・分子遺伝学的研究

文献情報

文献番号
200730034A
報告書区分
総括
研究課題名
双極性障害の神経生理・画像・分子遺伝学的研究
課題番号
H18-こころ-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
神庭 重信(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 飛松省三(九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学)
  • 清原裕(九州大学大学院医学研究院環境医学)
  • 黒木俊秀((独)国立病院機構 肥前精神医療センター)
  • 川嵜弘詔(九州大学病院精神科神経科)
  • 門司晃(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野)
  • 鬼塚俊明(九州大学病院精神科神経科)
  • 本村啓介(九州大学病院精神科神経科)
  • 前川敏彦(九州大学病院精神科神経科)
  • 吉川武男(理化学研究所脳科学総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
双極性障害における疾患および病相に特異的な脳情報処理機能ならびにゲノム機能を明らかにすることである。本研究によって得られる病態マーカーは、安定性および予測性に優れた包括的診断に応用可能である。さらには脳情報処理過程をエンドフェノタイプとして、疾患あるいは病相に特徴的な分子遺伝学的基盤を明らかにすることにより、本障害の責任神経回路の同定およびその分子情報伝達系における特徴をも明らかにすることが可能である。
研究方法
[1] 罹患群および非罹患群に対する神経生理学的、脳機能画像解析
最終解析対象数は各罹患群30症例、非罹患対照群30症例
④ 事象関連電位(ERP)
音に注意集中しながらモニター画面に種々の刺激をランダムに呈示する条件下で、高密度脳波計(128ch)によりERPを測定する。ミスマッチ陰性電位(MMN)を抽出し、潜時、分布について各群で比較する。
⑤ 脳磁図(MEG)
安静側臥位にて、聴覚刺激に対する誘発磁気反応を37チャネルの脳磁界計測装置により測定する。クリック音及び声刺激を用いた2条件で記録を行う

[2] 分子遺伝学的解析
疾患の有無とDNA多型、病相に特徴的なRNA発現パターン等の分子遺伝学的な解析結果とエンドフェノタイプとしての神経心理学的、神経生理学的、脳機能画像との相関についてロジスティック回帰解析を用いた多変量解析を行う。
結果と考察
(1)双極性障害者では両側性に声に対する感覚フィルタリング機能の障害があることが示唆された。双極性障害・統合失調症患者ともに声に対する感覚フィルタリング機能障害が認められたが、両疾患ではその障害は異なる半球パターンを示すことが示唆された。
(2) 双極性障害患者の視覚認知機能異常の脳内基盤を明らかにしつつある(文献1)。
(3)セロトニントランスポーター遺伝子のSERTin2多型で、双極性障害患者群でLアリルの頻度が有意に高かった。
結論
感覚フィルタリング機構の指標であるP50抑制度の検索において、脳磁図を用いて連続言語音を提示することで、双極性障害および統合失調症を対象に言語音に対する聴覚誘発磁場P50mの測定を行い、感覚フィルタリング機構の障害を見いだした。
高密度脳波計を用いて双極性障害患者の視覚ミスマッチ陰性電位を記録した。双極性障害患者は陽性成分の出現が弱く、視覚情報自動処理の障害の可能性が示唆された。さらに被験者を増やして確認する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-03-21
更新日
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