たばこに関する科学的知見の収集に係る研究

文献情報

文献番号
200722003A
報告書区分
総括
研究課題名
たばこに関する科学的知見の収集に係る研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 正和(大阪府立健康科学センター)
  • 磯 博康(大阪大学大学院予防環境医学専攻社会健康医学)
  • 井上 真奈美(国立がんセンターがん予防・検診研究センター・予防研究部)
  • 若井 建志(名古屋大学大学院医学研究科)
  • 小笹 晃太郎(京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学)
  • 玉腰 暁子(愛知医科大学医学部公衆衛生学)
  • 西野 善一(宮城県立がんセンター研究所疫学部)
  • 片野田 耕太(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
たばこ対策を推進するための科学的根拠を提供することを目的とする。
研究方法
 3つの前向きコホート研究、厚生労働省コホート(JPHC-I、JPHC-II)、文部科学省コホート(JACC)および大阪府・愛知県・宮城県の3府県コホート(3-Pref)のデータを併合して、喫煙の健康影響に関する解析を行った。対象者は296,836名(男性140,026, 女性156,810)、対象年齢は40-79歳(ベースライン調査時)、平均観察期間は9.6年、観察死亡数は25,700だった。以下の解析を行った。
①喫煙と循環器疾患死亡との関連
②喫煙習慣別累積がん死亡確率
③出生年代別肺がん死亡リスク
④非喫煙者の肺がん死亡率の変遷
⑤受動喫煙と肺がんリスクに関する併合解析の可能性
 6つのAnalytic Frameworkについて喫煙との関連をMedlineで検索した。
1.MS発症の危険因子であることを示す直接的証拠
2.内臓脂肪蓄積への影響
3.サイトカインへの作用
4.脂質代謝への影響
5.糖代謝への影響
6.血圧への影響
1、2について文献の個別評価、構造化抄録、サマリー表、要約の作成を行った。
結果と考察
併合解析の結果、循環器疾患死亡全体における年齢・コホート調整相対リスクは男性で1.5 、女性で1.9であった。男性では虚血性心疾患死亡において、女性では循環器疾患死亡全体において喫煙本数との量反応関係が認められた。男女とも過去喫煙者の循環器死亡リスクは禁煙後約10年で非喫煙者のリスクと同じレベルに達した。男性の全がんについて89歳までの累積死亡確率は、現在喫煙者40%、非喫煙者23%に対して、禁煙者は32%から37%まで分布し、リスクの低下が観察された。喫煙による肺がんリスクの増加は出生年によって異なり、1940年代前半生まれで高かった。本研究の対象者における非喫煙者の肺がん死亡リスクは米国よりも高く、日本国内でも過去のコホート研究より高かった。受動喫煙について上記3つのコホート研究はメタ・アナリシスで統合研究が可能であると判断した。系統的文献レビューの結果、メタボリック・シンドローム発症の直接的証拠に関しては、横断研究では喫煙がMSそのものの発症のリスクを高めることを報告する研究が多かったが、コホート研究では結果は一致していなかった。喫煙の内臓脂肪蓄積への影響に関しては、横断研究36編では結果が一致していなかったが、コホート研究では関連を否定する研究が多かった。
結論
循環器疾患およびがんのリスクは、喫煙により増加し、禁煙により減少する。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200722003B
報告書区分
総合
研究課題名
たばこに関する科学的知見の収集に係る研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 正和(大阪府立健康科学センター健康生活推進部)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 井上 真奈美(国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部)
  • 若井 健志(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学/医学推計・判断学)
  • 小笹 晃太郎(京都府立医科大学医学研究科地域保健医療疫学)
  • 玉腰 暁子(愛知医科大学医学部公衆衛生学)
  • 西野 善一(宮城県立がんセンター研究所疫学部)
  • 片野田 耕太(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部)
  • 望月 友美子(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
たばこ対策の推進のためにたばこに関する科学的証拠を提供すること。
研究方法
わが国における10万人規模の地域住民を対象としたコホート研究である、厚生労働省コホート、文部科学省コホート、および大阪府・愛知県・宮城県の3府県コホートのデータを用いて併合解析を行った。喫煙に関する科学的証拠の評価を行う際の方法論について検討し、喫煙とメタボリック・シンドローム(MS)との関連についての系統的文献レビューを行った。
結果と考察
喫煙経験の人口寄与危険割合は全死亡で男性28%、女性7%、男女計20%、全がんで男性39%、女性5%、男女計27%、全循環器疾患で男性23%、女性8%、男女計17%、全呼吸器疾患で男性23%、女性5%、男女計18%、全消化器疾患で男性37%、女性10%、男女計28%だった。全死亡の結果を平成17年(2005年)人口動態統計に適用すると、男性16万3千、女性3万3千の死亡が喫煙に起因すると推定された。40歳時の平均余命は、男女とも喫煙者が非喫煙者より約4年短く、男性の禁煙者では禁煙年齢が若いほど長かった。男性の虚血性心疾患、女性の循環器疾患全体、男性の呼吸器疾患において喫煙との量反応関係が見られた。男女とも循環器疾患において、また男性の全がん、肺がん、および呼吸器疾患において、禁煙による死亡リスクの減少が見られた。男女とも、未成年で喫煙を開始した者の虚血性心疾患リスクが高かった。喫煙による肺がんリスクの増加は出生年によって異なり、1940年代前半生まれで高かった。本研究の対象者における非喫煙者の肺がん死亡リスクは、米国よりも高く、日本国内でも過去のコホート研究より高かった。受動喫煙について上記3つのコホート研究はメタ・アナリシスで統合研究が可能であると判断した。喫煙がMS発症の危険因子であることを示す直接的証拠に関しては、横断研究では喫煙がリスクを高めることを報告する研究が多かったが、コホート研究では研究報告間で一致した結果は得られなかった。喫煙の内臓脂肪蓄積への影響に関しては、横断研究では研究報告間で一致した結果は得られなかったが、コホート研究では、喫煙と内臓脂肪蓄積との関連を否定する研究が多かった。
結論
わが国における喫煙の疾病負荷は大きいため、効果的なたばこ対策の推進が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
禁煙による循環器疾患およびがんのリスク減少に関する結果は、わが国における禁煙の推進の重要な科学的根拠となる。喫煙と肺がんとの関連については、従来から確固たる科学的知見があったものの、民族間の違いや出生年による違いなど、不明な部分も残っていた。本研究の成果はそれらの未検討分野での研究の参考となることが期待できる。
臨床的観点からの成果
禁煙による循環器疾患およびがんのリスク減少に関する結果は、禁煙治療の推進に有用である。
ガイドライン等の開発
(なし)
その他行政的観点からの成果
平成19年6月に策定された「がん対策推進基本計画」のたばこ対策の効果推計の根拠として用いられた。
その他のインパクト
平成18年11月14日付け朝日新聞夕刊に「がん死男性4割、たばこ原因」との見出しで紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
43件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-