新しいマテリアル創製を基盤とする運動器疾患治療法の開発

文献情報

文献番号
200718057A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいマテリアル創製を基盤とする運動器疾患治療法の開発
課題番号
H19-長寿-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
川口 浩(東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 一彦(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 高取 吉雄(東京大学 大学院医学系研究科 関節機能再建学講座)
  • 茂呂 徹(東京大学 大学院医学系研究科 関節機能再建学講座)
  • 三浦 俊樹(東京大学 医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 金野 智浩(東京大学 大学院工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,224,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、生体適合性と潤滑特性を発揮する高分子材料・2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholineを用いた生体内解離性ハイドロゲル(MPCポリマーゲル)を運動器疾患の新規治療法として臨床応用するために必要な基礎的検討を完成させることである。このため、今年度は、至適合成条件を検討するとともに、関節軟骨保護効果、組織癒着防止効果の検討を行った。
研究方法
至適合成条件の検討では、MPCポリマーゲル形成時のポリマー濃度や混合比率がゲル形成過程、構造、および解離過程に与える影響について検討した。関節軟骨保護効果の検討では、Ball-on-Flat型摩擦試験機と変形性関節症モデルを用いて有効性を確認した。組織癒着防止効果の検討では、屈筋腱癒着モデルを確立し、これらのモデルを用いて有効性を確認した。
結果と考察
合成条件の検討では、MPCポリマー合成時の仕込み組成比および重合開始剤の種類によって組成・分子量を制御し、これから形成されるゲルの物性を任意に制御することに成功した。また、ゲルを構成するポリマー濃度により、生体内の解離速度を制御できることを明らかにした。関節軟骨保護効果の検討では、関節の半月板切除と靱帯切離を組み合わせることにより重傷度が異なる4種類の変形性膝関節症を再現する変形性関節症モデルを確立し、MPCポリマーゲルの投与により関節面の静摩擦係数、動摩擦係数がともに改善すること、これらの効果は添加剤の投与により影響を受けないことを明らかにした。組織癒着防止効果の検討としては、ラットのアキレス腱損傷モデルを確立し、MPCポリマーゲルで腱縫合部を被覆することで、縫合部周囲の癒着を顕著に抑制すること、ゲルによる修復過程の阻害はみられないことを明らかにした。また、来年度以降の生体工学的な検討に向けて、鶏趾屈筋腱損傷モデルも確立した。
結論
以上の結果は、新規運動器疾患治療法の開発への推進を得るに十分な結果であった。来年度以降は本年度の研究内容を継続することに加え、骨折モデルを用いた関節拘縮防止効果の検討、脊椎椎弓切除モデルを用いた神経・硬膜外癒着防止効果の検討、を行う予定である。本研究開発によりこれらの新規運動器疾患の治療法の有効性が証明できれば、高齢者のQOLの維持・改善とともに支援介護費用までも含めた医療費の削減、労働力という社会資本の確保、当該分野での国際競争力の獲得に多大な貢献が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2008-11-14
更新日
-