高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査と生活機能向上のための運動療法の開発

文献情報

文献番号
200718042A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査と生活機能向上のための運動療法の開発
課題番号
H18-長寿-一般-034
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚運動系病態医学講座運動機能外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 大川弥生(国立長寿医療センター研究所生活機能賦活研究部)
  • 木山博資(大阪市立大学医学研究科機能細胞形態学講座)
  • 萩野浩(鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部)
  • 石田健司(高知大学医学部附属病院リハビリテーション部)
  • 田村綾子(徳島大学医学部保健学科看護学専攻成人高齢者看護学講座)
  • 田中俊夫(徳島大学大学開放実践センター)
  • 高田信二郎(徳島大学医学部・歯学部附属病院整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査を実施しその予防に役立つ運動療法を開発すること。
研究方法
 徳島県、高知県、鳥取県の各地区での高齢者のねたきり老人の実態調査を行なう。寝たきりの原因、年令分布、在宅か施設かについても調査する。高齢者を対象にした座位でもできる阿波踊り体操リハビリ編を作成する。施設入居者を対象とし1ヶ月間阿波踊り体操を試行した後、日常生活動作の改善度を調査する。
(倫理面への配慮) 調査の過程で個人情報が漏洩しないよう配慮する。情報を公開する際は匿名化を行ない、特定の個人の情報が漏洩しないよう守秘を行なう。
結果と考察
 寝たきり老人(日常生活自立度のランクC)の実数を調査したところ、徳島市(人口26.7万人)で648人、鳴門市(人口6.4万人)で247人の寝たきり老人がいることがわかった。これは徳島市で人口の0.2%、鳴門市で人口の0.4%の寝たきり老人がいることになり、この結果から推定すると全国には約25万から50万の寝たきり老人がいることになる。在宅の寝たきり老人は徳島市で253名、鳴門市で50名であり、大部分の寝たきり老人は施設に収容されているものと思われた。寝たきりの原因として最も多いのは脳血管障害であるが、発症後早期から下肢筋肉量の減少がみられることがDXAを用いた測定でわかった。発症直後からベッドサイドでの機能訓練を行なうと筋萎縮を防ぐことができることも本研究で明らかとなった。
 高齢者の運動器廃用を予防するために阿波踊り体操リハビリ編を作成し、介護療養施設で1ヶ月間の試行を行なったところ、転倒に対する不安が有意に減少し、外出回数が増加した。阿波踊り体操リハビリ編は、鳴り物のリズムにのって楽しく訓練できるもので、徳島の老人には親しみ深いものである。車椅子の患者でも座位のまま行なうことができ、寝たきりの老人でも臥位のまま練習することも可能である。今後は全県的に阿波踊り体操の普及に努め、高齢者の寝たきりを減らし、要支援から要介護への流れをくいとめることに役立てる。

結論
 徳島市および鳴門市で集計した寝たきり老人の数から推定すると、全国には約25万から50万の寝たきり老人がいることになる。これは厚労省の予測した寝たきり老人数よりも少ないが寝たきりの定義、集計法などに違いがあるものと思われる。いずれにせよ社会の高齢化がすすむにつれ寝たきり老人の数は増加するものと思われ、阿波踊り体操などによる運動療法による寝たきりの予防が重要であることは間違いない。

公開日・更新日

公開日
2008-07-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200718042B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者における廃用症候群(生活不活発病)の実態調査と生活機能向上のための運動療法の開発
課題番号
H18-長寿-一般-034
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚運動系病態医学講座運動機能外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 大川弥生(国立長寿医療センター研究所生活機能賦活研究部)
  • 木山博資(大阪市立大学医学研究科機能細胞形態学講座)
  • 萩野浩(鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部)
  • 石田健司(高知大学医学部附属病院リハビリテーション部)
  • 田村綾子(徳島大学医学部保健学科看護学専攻成人高齢者看護学講座)
  • 田中俊夫(徳島大学大学開放実践センター)
  • 高田信二郎(徳島大学医学部・歯学部附属病院整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者における廃用症候群の実態を明らかにするとともに、廃用症候群を予防する運動療法を開発すること。
研究方法
 徳島県の調査では、介護認定調査会の資料を分析して、徳島市および鳴門市における障害老人の日常生活自立度のランクC(寝たきり)の実数を調査した。
 鳥取県の調査では、米子市介護保険認定の主治医意見書373例を無作為に抽出して、障害老人の日常生活自立度のランクCに属する高齢者を調査した。
 高知県では、旧佐賀町在住において、特定高齢者を算出した。
 廃用症候群を予防する運動療法として「阿波踊り体操―リハビリ編―」を開発した。徳島県94名と神奈川県46名の計140名を対象として、週2から3回で1ヵ月間体操を行わせ、その治療効果を解析した。
結果と考察
 平成17年度、鳴門市における寝たきり老人数は 247人と、鳴門市人口(64537人)の約0.4%を占めていた。平成18年度、徳島市における寝たきり老人数は648人であり、徳島市人口(267271人)の約0.2%を占めていた。この結果は、全国には約25万から50万人の寝たきり老人の存在を示唆した。
 米子市介護保険認定の主治医意見書373例を無作為に抽出して、障害老人の日常生活自立度のランクCに属する高齢者は、65人(17.4%)であることがわかった。高知県旧佐賀町在住の65歳以上の高齢者(1228人)のうち、155人(12.6%)が特定高齢者に該当した。
「阿波踊り体操―リハビリ編-」を応用した体操教室に参加した高齢者では、転倒に対する不安と自宅内引き蘢りに対する治療効果が得られた。「阿波踊り体操-リハビリ編-」は、転倒に対する不安が有意に減少し、外出回数が増加した。今後は全県的に阿波踊り体操の普及に努め、高齢者の寝たきりを減らし、要支援から要介護への流れをくいとめることに役立てることが可能と考えた。
  

結論
 本研究結果からの推計では、全国には約25万から50万の寝たきり老人が存在する。これは厚労省の予測した寝たきり老人数よりも少なかった。阿波踊り体操などによる運動療法は、寝たきりを予防することができる。

公開日・更新日

公開日
2008-07-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200718042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
徳島県における寝たきり老人の実数調査では、徳島市では人口の約0.2%、鳴門市ではその約0.4%が寝たきり老人である事がわかった。本結果から、日本国内における寝たきり老人数は、25万人から50万人であると推察できる。寝たきりを予防するためには、廃用症候群を改善することが重要である。「阿波踊り体操―リハビリ編-」は、高齢者の廃用症候群の改善に有効であることが明らかになった。さらに、基礎研究の成果から、神経障害を原因とする廃用症候群の発生機序を解明した。
臨床的観点からの成果
寝たきりは、廃用症候群の末期症状といえる。高齢者では、一旦、廃用症候群に陥ると、その回復には長期間を要する場合が多い。廃用症候群を予防する運動療法として開発された「阿波踊り体操―リハビリ編-」は、高齢者が楽しく、かつ、安全に実施することができる。本体操を用いた臨床研究から、引き蘢りと転倒に対する不安を改善させる効果が示された。
ガイドライン等の開発
廃用症候群を予防するための運動療法として、「阿波踊り体操-リハビリ編-」を開発した。本体操は、徳島県保健福祉部健康増進課、徳島県医師会の後援を受け、全県下において展開する予定である。
その他行政的観点からの成果
この度の研究では、「阿波踊り体操-リハビリ編-」を応用した体操教室は、高齢者の転倒に対する不安が解消されるとともに、引き蘢り傾向を改善させることが明らかになった。今後、徳島県において、「阿波踊り体操-リハビリ編-」を用いた体操教室を、全県下的に展開して高齢者における廃用症候群を予防し、その結果として、寝たきり老人数の減少を目指したい。
その他のインパクト
「阿波踊り体操-リハビリ編-」は、徳島新聞社が詳細に紹介した結果、徳島県内の医療機関、老人保健福祉施設等から、本体操を用いての体操教室を開催したいとの希望が寄せられている。本体操の指導者を養成するために、徳島大学病院リハビリテーション部が中心となり、定期的に指導者養成講習会を開催することになった。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
徳島県における「阿波踊り体操-リハビリ編-」を用いた体操教室の開催。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「阿波踊り体操-リハビリ編-」の指導者養成講習会を開催して、本体操の普及を進めている。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-