脳血管障害の診断解析治療統合化システムの開発

文献情報

文献番号
200713004A
報告書区分
総括
研究課題名
脳血管障害の診断解析治療統合化システムの開発
課題番号
H17-フィジ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
古幡 博(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 秀博(国立循環器病センター研究所先進医工学センター放射線医学部内)
  • 窪田 純(株式会社日立メディコ応用機器開発室)
  • 峰松 一夫(国立循環器病センター内か脳血管部門内)
  • 梅村 晋一郎(東北大学工学研究科電気・通信工学研究室)
  • 東 隆(株式会社日立製作所中央研究所ライフサイエンス研究センター内)
  • 井上 聖啓(東京慈恵会医科大学神経内科内)
  • 遠藤 怜子(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
  • 小川 武希(東京慈恵会医科大学救急医学講座内)
  • 荻原 誠(株式会社日立メディコ応用機器開発室)
  • 寺本 昇(国立循環器病センター研究所先進医工学センター放射線医学部内)
  • 榛沢 和彦(新潟大学第二外科内)
  • 福田 隆浩 (東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター神経科学研究部神経病理研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
63,529,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経頭蓋超音波脳血栓溶解療法の臨床適用を目標として開発中のTCT-LoFUT(Transcranial Targeting Low Frequency Ultrasonic Thrombolysis)について、その安全性を1.急性脳梗塞霊長類モデルによる、画像診断学的及び病理組織学的評価、2.脳卒中易発症高血圧自然発生ラット(SHR/SP)による評価により検証すること、また頭部XCTあるいはMRIと超音波治療断面統合化システム(BVS)のボランティアによる有効性検証を目的とした。
研究方法
安全性の検証は1.霊長類としてカニクイザル10頭を用い、急性脳梗塞モデルを作成し血栓溶解治療を施した。rt-PA単独投与群とTCT-LoFUT治療併用群について肉眼所見及び病理所見について比較した。2.脳動脈硬化亢進モデルとしてSHR/SPを用い、rt-PA単独投与群、US併用群のほか、比較対照群として生食投与群の3群比較を行った。US併用群では低周波超音波の出力条件を変えて経頭蓋照射し、その副作用を神経病理学的に評価した。
またBVSの有効性を健常ボランティア5例にMRI測定を行い、各例のTC-CFI像と対応するMRI断面像を表示させ、両画像における中大脳動脈表示位置のずれを調べた。
結果と考察
 急性脳梗塞霊長類モデルによる安全性検討では、rt-PA単独投与群とUS併用群において、肉眼所見では出血率に差が無かった(各群5例中3例)が、ミクロ所見ではUS群全例に出血を認めた。しかしその出血は血管周囲の小出血で症候性出血と考えられるmassiveな出血は認められず、安全性が示されたと考えられた。SHR/SPによる安全性評価においては、生食(PS)群、rt-PA単独投与群、US併用群とも、陳旧性梗塞内の出血率は平均50%程度の値を示し、US曝露による特異的出血率増高は認められなかった。しかし、massiveな出血所見はUS曝露群にのみ認め、本開発で提唱するUSの照射条件としては音響強度の適正化の必要性が考えられた。BVSシステムについて、TC-CFIとMRIの断面像が概ね一致した場合は、その誤差は1mm程度であり、臨床使用に充分な精度であったが、中には1cm程ずれたデータも存在した。これは、2基準点BVSにおけるマーカの配置に影響されており、マーカ配置の工夫などで精度向上し得ることを明らかにした。
結論
開発した経頭蓋超音波血栓溶解装置において、治験委員会の承認のもとに治験を開始するに充分な有効性と安全性の前臨床的試験/研究を終了した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200713004B
報告書区分
総合
研究課題名
脳血管障害の診断解析治療統合化システムの開発
課題番号
H17-フィジ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
古幡 博(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 東 隆(株式会社日立製作所中央研究所ライフサイエンス研究センター内)
  • 飯田 秀博(国立循環器病センター研究所先進医工学センター放射線医学部内)
  • 井上 聖啓(東京慈恵会医科大学神経内科内)
  • 梅村 晋一郎(東北大学工学研究科電気・通信工学研究室)
  • 遠藤 怜子(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
  • 小川 武希(東京慈恵会医科大学救急医学講座内)
  • 荻原 誠(株式会社日立メディコ応用機器開発室)
  • 川畑 健一(株式会社日立製作所中央研究所ライフサイエンス研究センター内)
  • 窪田 純(株式会社日立メディコ応用機器開発室)
  • 佐々木 明(株式会社日立メディコ マーケティング本部)
  • 寺本 昇(国立循環器病センター研究所先進医工学センター放射線医学部内)
  • 榛沢 和彦(新潟大学医学部第二外科内)
  • 福田 隆浩(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター神経科学研究部神経病理研究室)
  • 峰松 一夫(国立循環器病センター内科脳血管部門内)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦死因の第3位を占める脳血管障害について、脳出血の予防に係わる未破裂動脈瘤の経頭蓋超音波塞栓法、急性脳梗塞における血栓溶解剤と併用する経頭蓋超音波血栓溶解療法及び頭部CTやMRI像を3次元合成して、超音波ビームを治療部に誘導する画像フュージョンシステム(BVS: Brain Virtual Sonography )を開発し、脳血管障害の統合化診断治療システムの開発を目的として研究した。
研究方法
未破裂動脈瘤の経頭蓋超音波塞栓法については、超音波高吸収特性を有する高分子材料を選定し、それに適当な超音波を照射することにより、局所的発熱を起こし、周囲の高分子系を凝固させて、動脈瘤の塞栓が可能になるとの予想のもとに、実験的にこれを検証することとした。
経頭蓋超音波血栓溶解療法は、血栓溶解剤との併用により超音波照射によって血栓溶解が促進されることを実験的に実証すると同時に、生体内でキャビテーションなどの不具合事象を起こさずに、有効に血栓を溶解する超音波条件を求め、動物実験及び音響工学的実験考察により、臨床使用に適した安全性を有することを示すこととした。
BVSについては、システムを構築しファントムを用いて精度を確認した後、健常ボランティアを対照として臨床使用に近い状態で精度を確認した。統合化システムの検証実験のための実験室を整備した。
結果と考察
経頭蓋超音波塞栓法については、ファントムを用いて、局所にナノ粒子前駆体を封入し、これに超音波を照射することにより、限局的に短時間で温度が上昇することを示した。この発熱により凝固させる高分子系については探索中である。
血栓溶解療法については、安全性及び有効性の観点から、500kHz の連続波による超音波照射が適していること、海外の臨床試験失敗事例の医用音響工学的検討から、その臨床試験はかなり危険な音響条件であったことを示し、健常ラット、脳卒中易発症高血圧自然発生ラット、及び霊長類急性脳梗塞モデルの実験から、開発した経頭蓋超音波脳血栓溶解装置が、有効かつ安全であることを示した。
BVSについては、ファントム及びボランティアの実験から、臨床に使用し得る精度を持つことを示した。

結論
経頭蓋的超音波照射による、未破裂脳動脈瘤塞栓法は、その基礎的検討から、実現可能性が示された。経頭蓋超音波脳血栓溶解装置は、前臨床試験をほぼ終了し、治験に進める段階までシステム開発を完了させた。BVSは、センサーの配置などによりさらなる精度向上が見込まれ、臨床使用に充分な精度となった

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200713004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 脳血管障害の急性期の対応する低侵襲的経頭蓋超音波治療法の新技術開発に概ね成功し所期の目的を達成した。
(2) 特に急性脳梗塞(急性虚血性脳卒中)患者の神経学的な著しい改善の期待される経頭蓋超音波脳血栓溶解法は標的性、有効性、安全性に関して、世界を凌駕する先進技術となった。
(3) 本研究開発成果は、世界の急性虚血性脳卒中治療の新たなツールとして活用される。

臨床的観点からの成果
(1) 本邦死因第3位の6割を占める脳梗塞、要介護老人の20?30%を占める脳梗塞に対し、本成果は救命率及び予後の改善を招来する画期的成果である。
(2) 我が国の承認が遅れた脳への血栓溶解剤の効果向上は日本発の国際的治療技術になるものと期待される。
ガイドライン等の開発
本研究開発はガイドライン自体を直接目的としていない。しかし急性虚血性脳卒中治療の新治療ガイドラインへと、将来つながるものである。


その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
特許出願(国際2,国内6)を行った。
公開シンポジウムを2回行い、一般国民向けの研究内容報告を行った。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
公開シンポジウム「急性脳卒中治療における超音波の役割」を平成18年及び平成20年に開催し、国民向けに脳卒中治療への理解と本技術成果の有用性、将来への期待を伝えた。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
TakayukiSaguchi,Hisashi Onoue,Hiroshi Furuhata et al.
Effective and Safe Conditions of Low-Frequency Transcranial Ultrasonic Thrombolysis for Acute Ischemic Stroke
Stroke , 39 , 1007-1011  (2008)
原著論文2
Takashi Azuma, Kenichi Kawabata, Hiroshi Furuhata et al.
Bubble Generation by Standing Wave in Water Surrounded by Cranium with Transcranial Ultrasonic Beam
Japanese Journal of Applied Physics , 44 (6) , 4625-4630  (2005)
原著論文3
Zuojun Wang, Mark A. Moehring, Hiroshi Furuhata et al.
IN VITRO EVALUATION OF DUAL MODE ULTRASONIC THROMBOLYSIS METHOD FOR TRANSCRANIAL APPLICATION WITH AN OCCLUSIVE THROMBOSIS MODEL
Ultrasound in Medicine and Biology , 34 (1) , 96-102  (2008)
原著論文4
Fukuda T, Shimizu F, Furuhata et al.
Overexpression of heat shock protein in pallido-nigral axonal spheroids of nonhuman aged primates
Acta Neuropathology , 110 , 145-150  (2005)
原著論文5
Ogihara M, Kubota J, Furuhata H et al.
Verification of Ultrasonic Thrombolysis effect by in vitro experiments
Japan Journal ofApplied Physics , 45 (5) , 4736-4739  (2006)
原著論文6
Jun Kobota, Makoto Ogihara et al.
Real-Time monitoring transcranial sub-megahertz ultrasound thrombolysis with phased array scanner
IEEE Ultrasonic Symposium Proceedings  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-