細胞移植医療における細胞のin vivoイメージングへ向けた新規細胞ラベル化用MRI造影剤の開発

文献情報

文献番号
200712029A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞移植医療における細胞のin vivoイメージングへ向けた新規細胞ラベル化用MRI造影剤の開発
課題番号
H19-ナノ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山岡 哲二(国立循環器病センター研究所先進医工学センター生体工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中谷 武嗣(国立循環器病センター臓器移植部)
  • 飯田 秀博(国立循環器病センター研究所先進医工学センター放射線医学部)
  • 藤里 俊哉(大阪工業大学工学部)
  • 橘 洋一(国立循環器病センター研究所先進医工学センター生体工学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの疾患に対する根治的手法として期待されている細胞移植療法であるが、その作用機序の解明は進んでいない。特に自家細胞移植では移植細胞の認識さえ容易ではない。本研究では、移植細胞の低浸襲トラッキングを可能にする、新規な造影剤の開発という基礎的な研究シーズを確立し、小動物から大動物までの疾患モデル動物における細胞移植療法のメカニズムを定量的に進めることで、細胞移植の臨床化のためのトランスレーショナル研究を推進する事を目的としている。
研究方法
細胞との相互作用が極めて小さい水溶性高分子であるポリビニルアルコール(PVA)の側鎖にガドリニウムキレート分子を結合させたPVA-DOTA-Gdを合成した。合成した新規造影剤をエレクトロポレーション法により細胞内へ送達した。移植実験系として、ラット下肢虚血モデル、および、ラット心筋梗塞モデルを立ち上げるとともに、標識した細胞を移植し、新たに導入した小動物用MRI装置のセットアップと撮像条件の最適化を進めた。
結果と考察
エレクトロポレーションにより細胞内に送達された造影剤分子は、細胞質領域に局在しており、また、細胞増殖性や分化能力には影響を与えないことが明らかとなった。また、いずれの細胞でも、10日間以上にわたって、細胞からの有意な漏出は認められず、約1年間にわたって移植細胞をMRIにより追跡できる性能を有していると考えられた。
標識したNIH-3T3細胞を皮下に埋入したマウスでは、移植細胞を確認することができ、これは、細胞内に存在する極微量の水を介して撮像可能なコントラストが得られていることを示す。キャリアーとして選択したPVA分子がGd周囲環境の水を確保しているためではないかと考えられる。このような現象の原因を詳細に解明することで、さらなる感度の向上が図れるであろう。さらに、担体として用いたPVAは、周囲組織に取り込まれることなく排泄される材料であることから、移植細胞が死滅した際には、体外に排泄されると期待される。
結論
得られた高分子化MRI造影剤であるPVA-DOTA-Gdは、細胞の機能に与える影響が極めて小さい世界初の精細胞追跡プローブである。樹立細胞株であるNIH/3T3やラット骨髄由来間葉系幹細胞など、多くの細胞に対して極めて汎用性の高い細胞ラベル化システムであることが証明され、細胞移植による疾患治癒メカニズムを解明できる極めて有効な手段となる。

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
-