微小流路を備えた柔軟神経電極の開発

文献情報

文献番号
200712015A
報告書区分
総括
研究課題名
微小流路を備えた柔軟神経電極の開発
課題番号
H17-ナノ-若手-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 隆文(東京大学 大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 昌治(東京大学 生産技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,柔軟なフィルム基板上に流路と電極とを配置した微小多点多機能神経プローブの開発とそれを用いた神経インタフェースシステムの試作を目的とする.これにより薬液投与と神経信号計測の統合など,次世代の神経プローブに求められる様々な機能が実現可能になると考えられる.本研究は,柔軟な流路と神経電極と統合し,さらに多点化を目指す点が特色である.従来は微細ガラス管で短時間でのみ可能であった薬液注入等が,慢性的にかつ多点で実現可能になるだけでなく,流路への物質注入によるプローブ硬化手法や,流路を神経再生電極に利用することなど,次世代の神経インタフェースデバイスとしての様々な可能性を有するものである.今年度は前年度までに行った流路電極の改良や流路構造を応用した神経再生型電極の開発を進めると共に,神経インタフェースシステムの試作を行うことを目的として研究を行った.
研究方法
下記の(1)~(6)の課題に取り組んだ.特に今年度は課題(2),(5),(6)について重点的に取り組んだ.(1)電極の作成方法の確立,(2)流路による薬液注入・吸引機能の確立,(3)流路内外の電極による神経信号計測,(4)プローブを刺入時のみ硬化させる方法の検討,(5)再生型電極への応用,(6)神経インタフェース試作システムの構築
結果と考察
(1)各種の仕様の電極を再現性良く作成するための電極作成方法について改良を行った.(2)流路による薬液の注入吸引能力について確認した.流路構造に半透膜を付与しマイクロダイアリシス機能を統合したプローブについても試作に成功した.(3)流路内外の電極による神経信号計測を行った.(4)ポリエチレングリコール(PEG)等を流路に注入する方法を検討し,刺入に必要な硬さが得られていることを確認した.(5)流路構造を応用した神経再生型電極の試作と評価を前年度に引き続いて行った.各流路に神経成長因子などの薬液を注入する新しい原理の神経再生型電極の評価を行った.(6)多機能プローブの評価システムとして,ラット運動野の神経情報により車両を制御するシステムを構築した.
結論
ほぼ計画通りの成果が得られた.特に流路構造の神経再生型電極への応用やマイクロダイアリシス統合プローブに関しては,当初計画以上に次世代の神経インタフェースデバイスとして有望なものを提案することができた.

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200712015B
報告書区分
総合
研究課題名
微小流路を備えた柔軟神経電極の開発
課題番号
H17-ナノ-若手-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 隆文(東京大学 大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 昌治(東京大学 生産技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,柔軟なフィルム基板上に流路と電極とを配置した微小多点多機能神経プローブの開発とそれを用いた神経インタフェースシステムの試作を目的とする.これにより薬液投与と神経信号計測の統合など,次世代の神経プローブに求められる様々な機能が実現可能になると考えられる.本研究は,柔軟な流路と神経電極と統合し,さらに多点化を目指す点が特色である.従来は微細ガラス管で短時間でのみ可能であった薬液注入等が,慢性的にかつ多点で実現可能になるだけでなく,流路への物質注入によるプローブ硬化手法や,流路を神経再生電極に利用することなど,次世代の神経インタフェースデバイスとしての様々な可能性を有するものである.
研究方法
下記の(1)~(6)の課題に取り組むことで,上述の目的の達成を目指した.(1)電極の作成方法の確立,(2)流路による薬液注入・吸引機能の確立,(3)流路内外の電極による神経信号計測,(4)プローブを刺入時のみ硬化させる方法の検討,(5)再生型電極への応用,(6)神経インタフェース試作システムの構築.
結果と考察
(1)各種の仕様の電極を再現性良く作成するための電極作成方法について改良を行った.(2)流路による薬液の注入吸引能力について確認した.期間当初には流路構造の強度向上を中心に行った.流路構造に半透膜を付与しマイクロダイアリシス機能を統合したプローブについても試作に成功した.(3)流路内外の電極による神経信号計測について確認した.(4)ポリエチレングリコール(PEG)等を流路に注入する方法を検討し,刺入に必要な硬さが得られていることを確認した.他の物質についても検討した.(5)流路構造を応用した神経再生型電極の試作と評価を行った.各流路に神経成長因子などの薬液を注入する新しい原理の神経再生型電極の評価を行った.(6)多機能プローブの評価システムとして,ラット運動野の神経情報により車両を制御するシステムを構築した.
結論
ほぼ当初計画通りの成果が得られ,流路構造を活用した神経インタフェースデバイスの有効性を示すことができた.特に流路構造の神経再生型電極への応用やマイクロダイアリシス統合プローブに関しては,当初計画以上に次世代の神経インタフェースデバイスとして有望なものを提案することができた.

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果は,薬理的な計測や薬液投与と神経信号計測の統合など,次世代の神経プローブに求められる様々な機能の実現可能性を示したという点で意義深いものであると考えられる.つまり従来は専用のマイクロダイアリシスプローブや微細ガラス管で行われてきた薬理的実験と神経信号計測が統合できるだけでなく,流路への物質注入によるプローブ硬化手法や,流路の神経再生電極への応用など,次世代の神経インタフェースデバイスとして求められる多機能化の可能性を示した点で大きな意義があると考えられる.
臨床的観点からの成果
本研究の成果は,次世代の人工肢(義手や義足)・人工臓器等の制御システムや人工視覚等の人工感覚生成システムの実現に必要不可欠の技術であり,福祉社会実現の要求が増大しつつある現在社会の要望と合致するものである.近年,こうしたブレイン-マシン・インタフェース技術の臨床的応用が注目されているが,そのボトルネックとなっているデバイス研究において上述のような新しい技術を提案した点で大きな意義があるものと考えられる.
ガイドライン等の開発
現在までのところ,ガイドライン等の開発に関しては,特別な寄与のない状況である.
その他行政的観点からの成果
上述のような専門的・学術的・臨床的観点での意義に加えて,本研究の成果は,近年国内において需要の増大しているリハビリテーションの効率化という観点においても新たな技術を提供するものである.つまり各種の薬液の投与が,神経系の修復過程や可塑性の促進に与える影響を検討するに当たって,神経信号モニタ下での薬液投与を実現する本研究成果は,強力なツールを提供するという点で意義あるものと考えられる.
その他のインパクト
本研究の成果は,上述した補綴的な医学領域やリハビリテーション研究における応用に留まらず,脳科学研究のツールや,埋め込み型の小型医療デバイスをはじめとした広範囲な応用が可能であり,学術的,社会的,産業的にも大きな意義があると考えられる.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
鈴木隆文, 満渕邦彦, 竹内昌治 et al.
束状微小流路を利用した神経再生型電極の開発
電気学会論文誌C , 127 (10) , 1544-1548  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-