新規γ・β線核種によるがん診断・治療の開発研究

文献情報

文献番号
200712011A
報告書区分
総括
研究課題名
新規γ・β線核種によるがん診断・治療の開発研究
課題番号
H17-ナノ-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤林 康久(福井大学高エネルギー医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 雄次(福井大学 工学部)
  • 清野 泰(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 森 哲也(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 岡沢 秀彦(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 富樫 かおり(京都大学大学院医学研究科)
  • 谷森 達(京都大学大学院理学研究科)
  • 窪 秀利(京都大学大学院理学研究科)
  • 身内 賢太朗(京都大学大学院理学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コンプトンCT(CPT)の開発により,従来の核医学用放射性核種に加えて,高エネルギーガンマ線,中半減期核種が臨床利用可能となる。これらの多くが内部放射線治療薬剤としても利用可能となる可能性が高い。CPTとの併用により局所薬剤量(すなわち放射線量)を直接モニタリングできる。本研究では,放射性核種(RI)の製造技術を確立するとともに,それらを用いたがん親和性薬剤の設計開発を行う。
研究方法
超小型サイクロトロンと固体ターゲットシステムを用いた Cu-64 の製造技術の改良を行うとともに,製造された大量のCu-64 を安全かつ高収率に回収・精製するための自動化装置を開発した。これと並行して Br-77 の製造に必要な Se-77固体ターゲットならびにターゲットからBr-77を回収・精製するシステムの製造開発と評価を行った。一方,これまでの研究において放射性Cu標識薬剤Cu-ATSMによるがんイメージングと治療の可能性を明らかにしてきたが,特に Cu-ATSM 高集積部位の特性について治療効果との関連でがん幹細胞との関連についいて検討を加えた。また RDG 配列をリードとして設計された新規ペプチド型および非ペプチド型分子について、引き続き合成検討を行った。
結果と考察
世界初の超小型サイクロトロンによる内部放射線照射治療用放射性同位元素 Cu-64、Br-77 の実用的製造法を確立した。ターゲットの照射技術、放射性同位元素の精製技術ならびにシステムは、容易に技術移転可能であり、現在PET診断目的に限定されている国内外の医療用サイクロトロン施設へ広く普及を図る。
がん親和性薬剤設計については、低酸素を標的とする Cu-ATSM、転移能や血管新生に関連するインテグリンを標的とするRGD配列を母体とするペプチドならびに非ペプチド化合物について新知見を得た。
自動合成装置にてF-18-エストラジオール、F-18-フルオロ酢酸等の合成技術を確立した。
結論
新規な概念に基づくコンプトンCTに適したがん内容照射治療用放射性同位元素であるCu-64ならびにBr-77の実用的製造法を確立した。本法は、国内100箇所以上の病院に設置された超小型サイクロトロンで実施可能であり、普及性に優れると考えられる。またそれらの同位元素で標識されたがん親和性の薬剤について標的分子親和性の分子設計、がん集積性、集積機序等の観点から評価を行い、いくつかの有用な化合物を得た。
今後、動物等での検討を経て臨床検討へと進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200712011B
報告書区分
総合
研究課題名
新規γ・β線核種によるがん診断・治療の開発研究
課題番号
H17-ナノ-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤林 康久(福井大学高エネルギー医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 雄次(福井大学 工学部)
  • 清野 泰(福井大学 高エネルギー医学研究センター)
  • 森 哲也(福井大学 高エネルギー医学研究センター)
  • 岡沢 秀彦(福井大学 高エネルギー医学研究センター)
  • 富樫 かおり(京都大学大学院 医学研究科)
  • 谷森 達(京都大学大学院 理学研究科)
  • 窪 秀利(京都大学大学院 理学研究科)
  • 身内 賢太朗(京都大学大学院 理学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,FDG-PETの保険適用により本邦に急速に普及しつつある超小型サイクロトロンを利用し,各病院・センターで実施可能な種々の放射性核種(RI)の製造技術を確立するとともに,それらを用いた新規な概念に基づくがん親和性薬剤の設計開発を行う。これらと従来の画像診断儀靴を融合することにより,新しいがんの高感度診断法を確立するとともに,非侵襲的かつ最適化されたがん治療技術へと展開していくことを目的とする。
研究方法
超小型サイクロトロンを用いて大量のCu-64を安全に製造する自動精製装置の開発を行った。これとは別にBr-77の製造・回収・精製を試みた。また、β線放出核種のドラッグデリバリーシステムとしてCu-64-ATSMを調製し、がん細胞への集積性、がん細胞毒性とその細胞毒性機序について検討を行った。またコンピュータ支援によるがん親和性分子設計を行った。婦人科腫瘍における悪性度診断に有用なPET薬剤の開発と評価を行った。これとは別にコンプトンCTの開発を行った。
結果と考察
ロボット化要素技術を独自に開発し、大量の放射能を取り扱うことのできる装置を構築した。Br-77製造検討において120 Ci/A の収率で製造・回収することに成功した。固形腫瘍内でCu-ATSM高集積領域にがん幹細胞と考えられる細胞群が多数存在する可能性が示された。インテグリンを標的とするプローブ開発に関する分子計算において良好な結果を得た。子宮体がん診断においてCTやMRにPET検査を追加して得られる情報は遠隔転移や予期せぬ別の疾患の発見につながった。子宮頸癌においては、FDG・FES検査は内膜癌と頸癌との病理組織の違いを反映する結果を示した。子宮頸癌や子宮肉腫ではFDGとFESによる鑑別診断への応用が期待される。コンプトンCT開発では、診断面積10cm角の可搬型ガンマ線カメラを製作し、長距離移動後数時間で動作可能な状態になることを確認した。
結論
放射性同位元素Cu-64、Br-77について、製造から検出に至る技術が確立された。また新しい概念に基づくプローブ設計・合成と評価を行い、がんの特性診断や治療対象の鑑別、遺伝子発現レベルでの標的検出について方向性を示すことができた。これと並行して新しい概念に基づく放射線検出器CPTが開発できた。これらを総合しがんの新しい最適化治療法の開発に関する基盤を形成することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん内用放射線照射治療ならびコンプトンCTによる局所薬剤量モニタリングに適した放射性同位体Cu-64ならびにBr-77を超小型サイクロトロンで高効率に製造回収するための技術を確立した。これらにより標識されたCu-ATSMをはじめとする複数の標識化合物を合成することができた。
臨床的観点からの成果
がん選択的集積を示すCu-ATSMをはじめとする複数の化合物を得、それらの実験動物ならびにがん患者におけるがん集積挙動を明らかにした。これにより治療対象の選択ならびに内用放射線照射治療薬剤適用量の算定が可能であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
臨床研究については、大学倫理委員会の規定に従った。
その他行政的観点からの成果
国内に100箇所以上設置されたPET診断用サイクロトロンの有効利用と治療用放射性同位元素の安定的供給を可能にする研究であり、新しい医療技術を展開する基盤を有する研究として価値がある。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-