将来人口推計の手法と仮定に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200701004A
報告書区分
総括
研究課題名
将来人口推計の手法と仮定に関する総合的研究
課題番号
H17-政策-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,112,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」によれば、今後わが国は少なくとも半世紀以上に及ぶ恒常的人口減少過程に入る。また、すでに世界一となった高齢化率は引き続き上昇し、さらに倍増することが見込まれる。これらの知見は、本研究事業によって開発された多くの新たな手法や詳細な分析結果が応用された結果得られたものである。本年度の研究目的は、これらの信頼性や仮定設定の効果等について検証し、推計結果や仮定値の持つ意味をより明瞭とするための国際比較やライフコース的帰結等を検討することである。
研究方法
本研究では、社会的要請に応え得る科学的推計の在り方を総合的に検討し、有効な手法の探索・応用・開発を行い、また少子化、長寿化、人口の国際化に対する研究分析と見通しの策定(仮定設定)の両面から新たな将来人口推計の枠組みを構築することを目指している。本年度研究にあたっては、将来人口推計の説明責任遂行に資する研究を中心課題とした。すなわち、新たに公表された「日本の将来推計人口」について、その結果の不確実性について検討し、すでに本事業において開発した確率推計手法を応用することによってその影響を検証した。また、諸外国の最新の公的将来推計人口について推計結果、手法および仮定等に関する情報、ならびにデータを収集し、わが国の新推計と比較を行った。さらに、多相生命表等による新推計の出生仮定、死亡仮定のライフコース的帰結について分析研究を行った。またこれらの成果を人口推計に関する国際的会議において報告した。
結果と考察
確率推計法の一つexpert opinion法を新推計に適用し分析した結果、既存の推計の高位・低位の幅は、有識者調査から得られた専門的知見の幅から見てほぼ妥当なものであった。また新推計をH14年1月推計と比較したとき2050年時点の高齢化率の違いは、出生仮定の更新による効果が56%、死亡仮定更新の効果は38%であった。出生中位仮定の90年生まれ女性生涯未婚率、無子率は23.6%、37.5%であるが、多相生命表により死亡を考慮した90年生まれ女性の出生時の生涯未婚率、無子率は24.3%、38.1%であった。また世代別の平均寿命は50年生まれ女性80.8年から90年生まれでは89.8年であり、現在の50歳代と10歳代では9年ほどの差が見込まれた。
結論
将来推計人口は、不確実性を科学的に扱うこと、一定仮定を含めた仮定の組み合わせを変えること、さらには仮定設定にコーホート法用いることなどにより、豊富で有用な情報を提供することができることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2008-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200701004B
報告書区分
総合
研究課題名
将来人口推計の手法と仮定に関する総合的研究
課題番号
H17-政策-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年12月に公表された「日本の将来推計人口」によれば、今後わが国は少なくとも半世紀以上に及ぶ恒常的人口減少過程に入る。また、すでに世界一となった高齢化率は引き続き上昇し、さらに倍増することが見込まれる。わが国はこうした変化に備える必要があるが、その際に人口状況についての定量的情報を提供するのが将来人口推計である。本研究は、転換期に特有の将来人口推計の重要性の増大と予測の困難さの増大を背景に、将来人口推計の手法と仮定について科学的に再検討を行い、わが国の特異性と時代の展開に即した方法論の開発と応用を目的として行われた。
研究方法
第一に推計の枠組みについて検討を行い、コーホート要因法の再検討、ならびに確率推計手法、シミュレーション技法等の有効性を検討した。第二に人口動態率推計の先端的な手法、モデルについて有効性と限界の検証を行い、わが国近年の出生低下、長寿化、人口移動の国際化に対して有効に応用できる手法を開発した。第三に推計の実施や国際比較に必要な横断的、時系列的データの把握と分析を行い、仮定設定の方法を緻密化した。
結果と考察
わが国における将来人口推計の役割、現状の課題等を検討した上で、従来のコーホート要因法を精密化し、国籍別の人口動態を考慮する枠組みを導入した。不確実性の分析を行い、確率推計法を新推計に適用した。出生仮定設定の枠組みを再構築し、女性の国籍別に結婚・出生行動を把握し、また離死別再婚の効果等についての精密化が図られた。死亡仮定設定のモデルとしてLee-Carter法を再構築し、長寿化の先端を行くわが国の状況に適合させた。国際人口移動では相手国の地域・国別の詳細な動向分析による仮定設定法を整備した。これらのモデルならびに分析結果は「日本の将来推計人口」の作成に応用された。さらにそれらを諸外国の公的推計の手法、仮定等と比較することでわが国の特徴を明らかとし、また多相生命表の応用によって出生、死亡仮定のライフコース的表現を提示するなど、応用面について新たな方法論を提案した。
結論
本研究は、総じて従来の将来人口推計のすべての要素について科学的精度を向上させ、また今後発展や応用について新たな方向性を提示するものとなっており、わが国における科学的根拠に基づいた政策形成とその説明責任の遂行という枠組みの構築に資する体制が築かれた。また成果の国際的な普及に努めた結果、一定の協力体制が築かれた。

公開日・更新日

公開日
2008-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
将来人口推計の技術的課題等を精査した結果に基づき、従来のコーホート要因法を精密化、国籍別人口動態を扱う枠組を導入した。不確実性の分析を行い、新推計に確率推計法を適用した。出生仮定設定の枠組を女性の国籍別に再構築、結婚・出生行動、離死別再婚の効果等について精密化を図った。死亡仮定設定のモデルとしてLee-Carter法を再構築し、長寿化の先端を行くわが国の状況に適合させた。更に国際人口移動では相手国の地域・国別の詳細な動向分析による仮定設定法を整備した。これらは全てわが国では初めての試みである。
臨床的観点からの成果
本項目は、本研究に該当せず。
ガイドライン等の開発
本項目は、本研究に該当せず。
その他行政的観点からの成果
わが国における将来人口推計の役割、現状の課題等を明らかにし、実証的分析に基づいて精密な推計モデルと仮定値の生成手法を開発した。それらは国・自治体等の施策計画の基礎となる公的な将来推計人口の作成に応用され、その科学的精度向上に寄与した。また、それらを諸外国の公的推計の手法、仮定等と比較することでわが国の人口動向の特徴を明らかするとともに、多相生命表の応用によって出生、死亡仮定のライフコース的表現を提示するなど、説明責任の遂行に資する成果を達成した。
その他のインパクト
本研究の成果となる新将来推計人口の公表に際しては、今後のわが国社会経済を左右する人口減少・少子高齢化の最も基礎となる統計として、国内主要全紙が取り上げるなど大きな社会的反響を呼んだ。その後は施策等への反映以外でも将来制度に関わる審議会、研究会等の論議の基礎資料として不可欠なものとなっており、わが国における科学的根拠に基づいた政策形成とその説明責任の遂行の過程において、本研究事業の研究成果は基礎的な役割を果たしている。また成果の国際的普及に努めた結果、諸外国の推計に対しても一定の影響を与えている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
25件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-