内分泌かく乱性確定試験法及び内分泌かく乱性試験評価包括ガイドラインの開発に関する総合研究

文献情報

文献番号
200638001A
報告書区分
総括
研究課題名
内分泌かく乱性確定試験法及び内分泌かく乱性試験評価包括ガイドラインの開発に関する総合研究
課題番号
H16-化学-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小野 宏(財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 鈴木 勉(星薬科大学 薬品毒性学教室)
  • 宮川 宗之(独立法人 労働安全衛生総合研究所 産業医学総合研究所 健康障害予防研究グループ)
  • 今井 清(財団法人 食品農医薬品安全性評価センター)
  • 林 良夫(徳島大学大学院 口腔分子病態学分野)
  • 武吉 正博(財団法人 化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所)
  • 長尾 哲二(近畿大学 理工学部 生命科学科 発生生物学教室)
  • 吉田 緑(独立法人 放射線医学総合研究所 放射線安全研究センター 低線量プロジェクトチーム)
  • 太田 亮(財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 毒性部 遺伝学研究室)
  • 長村 義之(東海大学 医学部 基盤診療学系病理診断学)
  • 西川 淳一(大阪大学大学院 薬学研究科 生命情報環境科学専攻 微生物動態学分野)
  • 高木 篤也(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 松島 裕子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 吉村 愼介(財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 試験部)
  • 井上 達(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 永井 賢司(株式会社 三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所 )
  • 山崎 寛治(財団法人 化学物質評価研究機構 日田事業所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
136,670,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
確定試験として、一生涯(発生、発達、成熟、老化)の全段階を対象に、内分泌かく乱作用により懸念される毒性指標を確認する「齧歯類一生涯試験法」を開発する。また、これを支援する基礎研究を並行する。更に、OECD等を考慮した内分泌かく乱性試験法の開発、ガイドライン化に貢献する。
研究方法
実用的な確定試験法の開発に向けて、EDCs周産期暴露による神経・行動、免疫、内分泌系への有害性評価系を構築すると共に、これに資する物質の優先順位付けの基礎研究(受容体応答機構、応答遺伝子群発現影響等)による支援を行う。並行して、OECDに代表される国際的ガイドライン化に関わる研究を実施する。
結果と考察
神経・行動については、マウス胎生期・授乳期Bisphenol A低用量暴露によりdopamine神経が発達関連因子の発現異常に伴い発達異常となること、及びスケジュール制御オペラント行動実験系で認知機能影響は認められないことを明らかにし、ラット周産期DES、OP暴露による脳の性分化への影響をERα陽性細胞数を指標に検討した。免疫系ではTCDD周産期暴露がシューグレン症候群モデルマウスのT細胞活性化の異常、サイトカイン産生の亢進及び自己免疫病態を誘導すること、及びEEのマウス経胎盤・経母乳暴露が成獣期において抗原感作によるサイトカイン産生を亢進することが確認された。生殖器系では、雄はマウス胎生期DES暴露により精巣下降関連遺伝子発現が減少すること、雌はマウス周産期のBPA及びDESの低用量暴露による早期閉経が観測されること、雌マウス周産期DES暴露により内分泌系臓器形成に影響がみられること、が確認された。支援研究では、EDCsはSXRを活性化し、NFkBと相互作用し免疫系を抑制することを見出した。また、マイクロアレイ解析が本研究に貢献した。調査研究では、子宮肥大、Hershberger、及びTG407試験に関するデータを取得、整理し、OECD等での問題点の解決策を提示した。
結論
低用量EDCsの経胎盤・周産期・経母乳暴露が、受容体原性毒性メカニズムに基づくと理解される成熟後の神経・行動、免疫、内分泌のいくつかの指標に対して不可逆的な影響を誘発する事を確認した。従来の多世代繁殖毒性試験の限界を超えたEDCs有害性確定試験法の開発と、その基盤としての分子メカニズム研究について所定の結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200638001B
報告書区分
総合
研究課題名
内分泌かく乱性確定試験法及び内分泌かく乱性試験評価包括ガイドラインの開発に関する総合研究
課題番号
H16-化学-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小野 宏(財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 鈴木 勉(星薬科大学 薬品毒性学教室)
  • 宮川 宗之(独立法人 労働安全衛生総合研究所 産業医学総合研究所 健康障害予防研究グループ)
  • 今井 清(財団法人 食品農医薬品安全性評価センター)
  • 林 良夫(徳島大学大学院 口腔分子病態学分野)
  • 武吉 正博(財団法人 化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所)
  • 長尾 哲二(近畿大学 理工学部 生命科学科 発生生物学教室)
  • 吉田 緑(独立法人 放射線医学総合研究所 放射線安全研究センター 低線量プロジェクト第1チーム)
  • 太田 亮(財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 毒性部 遺伝学研究室)
  • 長村 義之(東海大学 医学部 基盤診療学系病理診断学)
  • 西川 淳一(大阪大学大学院 薬学研究科 生命情報環境科学専攻 微生物動態学分野)
  • 高木 篤也(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 松島 裕子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 吉村 愼介(財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 試験部)
  • 井上 達(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 永井 賢司(株式会社 三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所 )
  • 山崎 寛治(財団法人 化学物質評価研究機構 日田事業所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
確定試験として、一生涯(発生、発達、成熟、老化)を対象に、内分泌かく乱作用により懸念される受容体原生毒性を含む毒性指標を確認する「齧歯類一生涯試験法」を開発する。また、これを支援する基礎研究を並行する。更に、OECD等の内分泌かく乱性試験法の開発、ガイドライン化に貢献する。
研究方法
実用的な確定試験法の開発に向けて、内分泌かく乱化学物質(EDCs)の周産期暴露による神経・行動、免疫、内分泌系への有害性評価系を構築すると共に、これを支持する基礎研究(受容体応答影響等)を行う。並行して、国際的ガイドライン化に関わる調査研究を実施する。
結果と考察
【神経・行動】マウス周産期Bisphenol A(BPA)低用量暴露はホルモン受容体を介さずに神経機能亢進とアストロサイトの活性化が誘発されること、また遺伝子発現の異常がdopamine及びcholine作動性神経の異常を引き起こすこと、スケジュール制御オペラント行動実験系で認知機能影響は認められないこと、ラット周産期EE、DES、OP暴露により雌の前腹側室周囲核のERα陽性細胞が増加すること、が確認された。【免疫系】シューグレン症候群モデルマウスのBPA或いはTCDD周産期暴露によりT細胞分画等の異常及び自己免疫病態の出現、EEのマウス周産期暴露により胸腺細胞分化の異常及び初期免疫応答能の亢進、が確認された。【生殖器系】雄は肛門-生殖突起周辺組織のヒドロキシプロリン量の減少及び精巣下降関連遺伝子の発現減少が鋭敏な指標となること、雌ラットの周産期BPA、DES低用量暴露により早期閉経が、新生児期DES暴露により性周期、受胎率、交尾率、産児数、等への影響が確認された。支援研究では、乳がん細胞のERα解析研究、有機スズがRXR及びPPARの強力なアゴニストとなること、内分泌系と免疫系のクロストークはSXRを介すること、を見出した。また、マイクロアレイ遺伝子解析が本研究に貢献した。調査研究では、子宮肥大、Hershberger試験に関して、一定の性能を有することを確認した。
結論
EDCsの有害性評価の包括的対応体系の確立に向け、従来の多世代繁殖毒性試験の限界を認識しつつ、EDCsの低用量周産期暴露が成熟後の神経・行動、免疫、内分泌に不可逆的な影響を残す事例をもとに、確定試験法の開発が進んだ。その基盤としての分子メカニズム研究についても所定の結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200638001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
EDCs のげっ歯類胎生期・新生児期に於ける低用量暴露が成熟後の神経・行動、免疫、内分泌、生殖器のいずれの系にも不可逆的な影響を誘発することが確認された。これらの研究により明らかになった暴露時期、経路、有害影響指標等の諸要件から、低用量影響を含む内分泌かく乱化学物質の有害性評価に関わる包括的ガイドライン開発の基礎データの集積を得た。
臨床的観点からの成果
直接の臨床的データは得ていないが、ヒトに於けるDESの胎児期暴露による膣明細胞癌発がんに代表される種々の遅発性影響に生物学的な裏づけを確認し得る成果を得た。また、今後のモニタリングに対する一定の指針と成り得る情報を含む成果を得た。
ガイドライン等の開発
1)「厚労省・内分泌かく乱化学物質のスクリーニング法及び試験法スキーム概説レポート」をOECDに提出した(EDTA第6回VMG-mammalian会合(2007年1月17-18日))。
2)試験法開発にあたり、リードラボラトリー及びバリデーションを務めた子宮肥大試験のピアレビューの終了に伴う、OECDガイドラインの作成に参画した。特にマウスを含めるためのデータを提供した。
3)Hershberger試験ガイドライン化のためのvalidation phase 3を実施し、その結果を論文化した。
その他行政的観点からの成果
1)包括的ガイドラインへ向けた基礎データの集積に貢献した。
2)低用量問題を含む確定試験の評価の精度、客観性の向上、及び評価プロセスの迅速化に貢献した。
3)厚労省「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(伊東信行座長)」に掲げる「試験スキーム」を構成する諸要素の完成に貢献した。
4)OECDの子宮肥大試験、テストガイドラインの作成に対して、厚労省の立場を明確に伝えるとともに国際バリデーションのリードラボラトリーとしてデータ提供を含む貢献をした。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
80件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計9件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小野宏
OECDガイドラインにおける動物福祉
環境変異原研究 , 27 , 133-137  (2005)
原著論文2
Yamasaki K.,Ohta R.,Okuda H.
OECD validation of the Hershberger assay in Japan. Phase 3. Blind study using coded chemicals.
Toxicol Lett. , 163 , 121-129  (2006)
原著論文3
M. Narita, K. Miyagawa, T. Suzuki.
Prenatal and neonatal exposure to low-dose of bisphenol A enhance the morphine-induced hyperlocomotion and rewarding effect.
Neurosci. Lett. , 402 , 249-259  (2006)
原著論文4
M.Miyatake, K. Miyagawa, T. Suzuki.et al
Dynamic changes in dopaminergic neurotransmission induced by a low concentration of bisphenol A in neurones and astrocytes.
J. Neuroendocrinol , 18 (6) , 434-444  (2006)
原著論文5
Takeshi Honma, Muneyuki Miyagawa, Megumi Suda, et al
Effects of perinatal exposure to bisphenol A on brain neurotransmitters in female rat offspring.
Industrial Health , 44 , 510-524  (2006)
原著論文6
Hayashi Y., Arakaki R, Ishimaru N.,
Apoptosis and estrogen deficiency in primary Sjogren's syndrome.
Cur.Opin. Rheumatol , 16 , 522-526  (2004)
原著論文7
Yoshida M., Waganabe G., Shirota M, et al
Reduction of primordial follicles caused by maternal treatment with busulfan promotes endometrial adenocarcinoma development in Donryu rats.
J. Reproduction Development , 51 , 707-714  (2005)
原著論文8
Nakanishi T., Hiromori Y., Nishikawa J., et al
Organotin compounds enhance 17beta-hydroxysteroid dehydrogenase typ 1 activity in human choriocarcinoma Jar cells: potential promotion of 17beta-estradiol biosynthesis in human placenta.
Biochem. Pharmacol , 71 , 1349-1357  (2006)
原著論文9
Nishikawa J.,
Imposex in marine gastropods may be caused by bin3ing of organotins to retinoid X receptor.
Marine Biology , 149 , 117-124  (2006)
原著論文10
Yoshimura S., Yamaguchi H., Konno K., et al
Observation of preputial separation is a useful tool for evaluating endocrine active chemicals.
J Toxicol Pathol , 18 , 141-157  (2005)
原著論文11
Yoshimura S., Yamaguchi H., Konno K., et al
Hypospadias and incomplete preputial separation in male rats induced by prenatal exposure to anti-androgen.
J Toxicol Pathol , 17 , 113-118  (2004)
原著論文12
Corvi R., Ahr HJ., Inoue T., et al
Meeting report; Validation of toxicogenomics-based test systems; ECVAM-ICCVAM/NICEATM considerations for regulatory use.
Environ Health Perspect , 114 (3) , 420-429  (2006)
原著論文13
Katayama S., Ashizawa K., Nagai K., et al
Differential expression patterns of Wnt and beta-catenin/TCF-target genes in the uterus of immature female rats exposed to 17a-ethynyl estradiol.
Toxicol Sci , 91 (2) , 419-430  (2006)
原著論文14
Owens W., Gray L., Yamasaki K., et al
The OECD program to validate the rat Hershberger bioassay to screen compounds for in vivo androgen and antiandrogen responses; Phase-2 dose-response studies.
Environ Health Perspect , 115  (2007)
原著論文15
Grun F., Watanabe H., Kanno J., et al
Endocrine disrupting organtin compounds are potent inducers of adipogenesis in vertebrates.
Mol Endocrinol , 20 (9) , 2141-2155  (2006)
原著論文16
K Miyagawa, M Narita, T Suzuki., et al
Memory impairment associated with a dysfunction of the hippocampal cholinergic system induced by prenatal and neonatal exposures to bisphenol A.
Neurosci Lett  (2007)
原著論文17
Kenichi Kobayashi, Muneyuki Miyagawa, et al
Effects of in utero and lactational exposure to bisphenol A on thyroid status in F1 rat offspring.
Industrial Health , 43 , 685-690  (2005)
原著論文18
A Maekawa, M Yoshida, K Imai, et al
Toxicologic/carinogenic effects of endocrine disrupting chemicals on the female genital organs of rodents.
J Toxicol Pathol , 17 , 69-84  (2004)
原著論文19
Shina H., Matsumoto T., Kanno J., et al
Premature ovarian failure in androgen receptor-deficient mice.
Proc Natl Acad Sci USA , 103 (1) , 224-229  (2005)
原著論文20
K Miyagawa, M Narita, T Suzuki, et al
Changes in central dopaminergic systems with the expression of Shh or GDNF in mice perinatally exposed to bisphenol-A.
Jpn J Neuropsychopharmacol  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-