職場における心臓突然死や事故発生に及ぼす失神・睡眠障害等の潜在危険因子の早期発見とその対策に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200635002A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における心臓突然死や事故発生に及ぼす失神・睡眠障害等の潜在危険因子の早期発見とその対策に関する総合的研究
課題番号
H16-労働-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
安部 治彦(産業医科大学医学部 第二内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 野上昭彦(横浜労災病院 冠疾患集中治療部)
  • 中村 純(産業医科大学 精神医学)
  • 鈴木秀明(産業医科大学 耳鼻咽喉科学)
  • 住吉正孝(順天堂大学静岡病院 循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
就労者の心臓突然死や自殺による死亡、ならびに就労中の失神や睡眠障害による事故発生の要因と原因を解明し、それらの早期発見や予防に有効な治療法を見いだし、事前に大作を講じる手段を確立することである。
研究方法
就労者にみられる心臓突然死の原因としてBrugada症候群があり検診時の心電図検査で異常を早期に発見することは可能である。本研究では、実際に突然死を来しかけた事例からその治療と心電図学的特長および就労復帰に必要な治療法を調査研究した。生体内デバイス患者では、職場の電磁干渉によりペースメーカ・ICDの誤作動やショック治療で失神をきたすことがあるため、電磁干渉について調査した。また、疲労やストレスは神経反射性失神を来たし、就労事故の原因となる。その実態と予防法について検討した。睡眠障害もまた就労事故の原因となる。睡眠時無呼吸症候群の早期検出方法を検討した。職場での鬱はストレスが原因である。鬱は自殺の最も大きな要因の一つであるため、ストレスと鬱との関係を調べた。
結果と考察
Brugada症候群は、心電図検査と簡単な糖負荷試験により、high risk症例の検出が可能である。また、それらの患者の一部はカテーテル心筋焼灼術治療により危険な不整脈から解放される。職場の電磁調査はデバイス患者の安全な就労に必要不可欠であり、その調査は簡単に施行出来る。失神患者の約3割は外傷の経験があることが判明した。この神経反射性失神はストレスで発生するが、簡単なトレーニング治療で予防できる。睡眠時無呼吸症候群の早期発見に現在使われているスクリーニング法に加え、額関節のX線検査を併用すると検出率が高まることが判明した。鬱は自殺の原因であり、メンタルヘルスケアにより予防できる。
結論
就労者の心臓突然死や自殺、就労事故の多くは、職場環境や産業保健対策により呼ぼう可能であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200635002B
報告書区分
総合
研究課題名
職場における心臓突然死や事故発生に及ぼす失神・睡眠障害等の潜在危険因子の早期発見とその対策に関する総合的研究
課題番号
H16-労働-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
安部 治彦(産業医科大学医学部 第二内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 野上 昭彦(横浜労災病院 冠疾患集中治療部)
  • 中村 純(産業医科大学医学部 精神医学)
  • 鈴木 秀明(産業医科大学医学部 耳鼻咽喉科学)
  • 住吉 正孝(順天堂大学静岡病院 循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
就労者の心臓突然死や自殺による不慮の死亡、ならびに就労中の失神や睡眠障害による事故発生の要因と原因を解明し、それらの早期発見や予防に有効な治療法を見いだし、事前に対策を講じる手段を確立することである。
研究方法
就労者の心臓突然死の原因としてBrugada症候群があり、健康診断時の心電図検査で以上を早期に発見することは可能である。本研究では、実際に突然死を来しかけた事例から、その治療と心電図学的特長および就労復帰に必要な治療法を調査研究した。生体内デバイス患者では、職場の電磁干渉によりペースメーカ・ICDの誤作動やショック治療で失神をきたすことがあるため、種々の職場環境における電磁干渉について調査した。また、ICD患者の国内での就労状況について調査した。また、疲労やストレスは神経反射性失神を来たし、就労事故の原因となる。その実態はこれまで明らかではなかったので、その実態と予防法について検討した。睡眠障害もまた就労事故の原因となる。睡眠時無呼吸症候群の早期検出方法を検討した。職場での鬱は多くの場合ストレスが原因である。鬱は自殺の最も大きな要因の一つであるため、ストレスと鬱との関係を調べた。
結果と考察
Brugada症候群は、心電図検査と簡単な糖負荷試験により、high risk症例の検出が可能である。また、それらの患者の一部はカテーテル心筋焼灼術治療により、危険な不整脈から解放される。職場の電磁調査はデバイス患者の安全な就労に必要不可欠であり、その調査は簡単に施行できる。失神患者の役3割は外傷の経験がある。ストレスで発生する神経反射性失神は、自宅で自分一人でできる簡単なトレーニング治療を指導することで失神の再発が完全に予防できる。睡眠時無呼吸症候群の早期発見に現在しようされているスクリーニング法に加え、顎関節のX線検査を併用すると検出率が更に高まることが判明した。鬱は自殺の原因であり、メンタルヘルスケアで予防可能である。
結論
就労者の心臓突然死や不慮の自殺、就労事故の多くは、職場環境や適切な産業保健対策を施行することにより十分予防可能である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200635002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成16?18年度(平成19年3月時点)での本研究班の業績は、著書48編(欧文著書13編、和文著書35編)、学術論文158編(欧文論文77編、和文論文81編)、国際学会発表63編である。今後更に増えるものと期待される。ストレスで発生する神経調節性失神の治療において、本研究で開発されたトレーニング治療が日本循環器学会学術委員会「失神の診断・治療ガイドライン」(日本心臓病学会、日本不整脈学会、日本心電学会、日本救急医学会、日本小児循環器学会合同)でクラスIIaとして取り上げられた。
臨床的観点からの成果
臨床医学的研究のみならず社会医学としても最先端的研究がなされている。特に、Brugada症候群の治療法の開発、失神と就労状況の実態調査、国内におけるICD患者の就労に関する調査研究とその対策、ペースメーカ・ICDのX線ならびに電磁干渉の実験と影響(特に、職場環境での影響について)、鬱と自殺との関係および対策、睡眠時無呼吸症候群の早期発見のためのスクリーニング法の新しい開発、等がなされた。
ガイドライン等の開発
日本循環器学会学術委員会「失神の診断・治療ガイドライン」作成班(平成17?18年度:班長 井上博、富山大学医学部内科学二教授)、日本循環器学会学術委員会「ペースメーカ、ICD、CRT治療を受けた患者の就学・就労・社会復帰に関するガイドライン」作成班(平成18?19年度:班長 奥村 謙、弘前大学医学部第二内科額教授)
日本不整脈学会ICD委員会によるICD患者の就労に関する指針作成。
その他行政的観点からの成果
バス運転手に最近多発する事故原因として、運転中の失神が原因として最多であることを明らかにし、その原因としてストレスが考えられたのを明らかにしたことにより、国土交通省はバス事業者に対して対策を指示した。
本研究データを基に「生体内デバイス患者と電磁干渉」(日本不整脈学会監修、安部治彦・豊島健編集、メデイカルレビュー社)、「失神の診断と治療」(今泉勉監修、安部治彦編集、メデイカルレビュー社)を出版した。
その他のインパクト
Medical Tribune誌にて、『国内におけるICD患者の就労に関する実態調査」、Medical Tribune誌「ペースメーカのX線による影響」、NHK総合テレビ(全国放送「おはよう 日本」:平成19年3月14日放送;東北6県「クローズアップ東北」にて「意識を失う バス運転手」)でストレスによる失神と就労事故について、平成16?18年度国土交通省の運転手事故調査報告書の詳細な解析とその対策について放映された。

発表件数

原著論文(和文)
81件
原著論文(英文等)
77件
その他論文(和文)
35件
その他論文(英文等)
13件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
63件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kohno R, Abe H, Oginosawa Y, et al.
Effects of atrial tachypacing on symptoms and blood pressure in severe orthostatic hypotension
PACE , 30 (1) , 203-206  (2007)
原著論文2
Oginosawa Y, Abe H, Yasumasu T, et al.
Comparison of the effects of VVI versus DDD pacing on cardiac baroreflex function
J Cardiovasc Electrophysiol , 17 , 526-531  (2006)
原著論文3
Oginosawa Y, Abe H, Nakashima Y
Prevalence of venous anatomical variants and occlusion among patients undergoing implantation of transvenous leads.
PACE , 28 , 425-428  (2005)
原著論文4
Yasumasu T, Abe H, Oginosawa Y, et al.
Assessment of cardiac baroreflex function during fixed atrioventricular pacing using baroreflex-stroke volume reflex-sensitivity.
J Cardiovasc Electrophysiol , 16 , 727-731  (2005)
原著論文5
Abe H, Kohshi K, Nakashima Y
Home orthostatic self-training in neurocardiogenic syncope
PACE , 28 , 246-248  (2005)
原著論文6
Tanikawa T, Abe H, Tanaka Y, Nakashima Y
Cardiac autonomic balance and QT dispersion during head-up tilt testing in diabetic patients with and without sensory neuropathies.
Clin Exp Hypertens , 26 , 137-144  (2004)
原著論文7
河野律子、安部治彦、荻ノ沢泰司、長友敏寿、尾辻豊
神経調節性失神患者に対する起立調節訓練の治療継続性と失神再発に関する検討
心電図 , 26 , 819-824  (2006)
原著論文8
Abe H, Kitamura T, Oginosawa Y, Nakashima Y
Alleviation of central sleep apnea by ventricular pacing in a patient with an implanted cardioverter defibrillator.
PACE , 27 , 1447-1448  (2004)
原著論文9
Yasumasu T, Takahara K, Abe H, Nakashima Y
Determination of baroreceptor-stroke volume reflex sensitivity by power spectral analysis.
Clin Exp Hypertens , 26 , 165-175  (2004)
原著論文10
Nagatomo T, Abe H, Kikuchi K, Nakashima Y
New onset of pacemaker dependency after permanent pacemaker implantation.
PACE , 27 , 475-479  (2004)
原著論文11
安部治彦、河野律子、長友敏寿
神経調節性失神
心電図 , 26 (3) , 47-59  (2006)
原著論文12
Abe H, Kohno R, Sumiyoshi M, Oginosawa Y, Takemasa H, Tsurugi T, nagatomo T, Otsuji Y
Non-pharmacological management of neurocardiogenic syncope
J Arrhythmia , 23 , 21-24  (2007)
原著論文13
Nogami A, Sugiyasu A, Kubota S, Kato K
Mapping and ablation of idiopathic ventricular fibrillation from Purkinje system.
Heart Rhythm , 2 , 646-649  (2005)
原著論文14
中野英樹、寺尾岳、新開隆弘、中村純
自殺者の危険因子の検討
精神神経学雑誌 , 108 , 24-30  (2006)
原著論文15
北村拓朗、吉田雅文、森本泰夫、成井浩司、津田徹、菊池央、鈴木秀明
睡眠時無呼吸症候群に関する産業医の意識調査
日本耳鼻咽喉科学会誌 , 108 , 20-26  (2005)
原著論文16
安部治彦、北村拓朗、竹政啓子、白石隆吉、荒木優、村里嘉信、中島康秀
ペースメーカ患者における睡眠呼吸障害の発生頻度とペーシング治療の効果
心臓 , 37 , 11-13  (2005)
原著論文17
荻ノ沢泰司、安部治彦、剣卓夫、河野律子
ペースメーカ患者の予後規定因子ー圧受容体反射機能に及ぼすペーシングモードの影響ー。
Therapeutic Research , 26 , 1875-1877  (2005)
原著論文18
安部治彦
ペーシング治療の新しい試みー心臓ペーシングと心機能ー。
Therapeutic Research , 26 , 2001-2007  (2005)
原著論文19
安部治彦、河野律子、住吉正孝
神経調節性失神
失神の診断と治療(安部治彦編集、メデイカルレビュー社) , 61-76  (2006)
原著論文20
安部治彦
失神を理解する
失神の診断と治療(安部治彦編集、メデイカルレビュー社) , 17-25  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
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