がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究

文献情報

文献番号
200621009A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究
課題番号
H16-3次がん-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 卓二(金沢医科大学病理学第一講座)
  • 塚本 徹哉(愛知県がんセンター研究所腫瘍病理学部)
  • 石川 秀樹(健康保険連合会大阪中央病院)
  • 徳留 信寛(名古屋市立大学大学院医学研究科健康増進・予防医学分野)
  • 高山 哲治(札幌医科大学医学部内科学)
  • 白井 智之(名古屋市立大学大学院医学研究科病態病理学講座実験病態病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
82,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんハイリスクグループにおける発がん要因の把握と、食品素材、医薬品を対象としたがん予防剤の開発、がん予防方法の確立を行い、臨床応用を目的とする。
研究方法
Plasminogen activator inhibitor-1(Pai-1)阻害剤のMinマウス腸ポリープ生成に対する影響を検討した。脂溶性HMG-CoA還元酵素阻害剤、ピタバスタチンの発がん抑制効果をAOM/DSS誘発炎症関連マウス大腸発がんモデル系にて検討した。ポリフェノールの1つであるレスベラトロールのTRAPラットにおける前立腺がん増殖抑制効果を検討した。H. pylori感染スナネズミに食品中の酸化ラジカルスカベンジャーcanololを投与し、胃炎と胃がんに対する影響を検討した。NSAIDsを投与し、ヒトの大腸ACFに対する影響を検討した。家族性大腸腺腫症患者を対象とし、緑茶抽出物及び少量アスピリンによる直腸ポリープ抑制効果を二重盲検法による無作為割付試験にて検討中である。
結果と考察
Pai-1阻害剤は、Minマウスの腸管ポリープ生成を抑制することがわかった。炎症関連マウスにおいてピタバスタチンに強い大腸発がん抑制作用が認められた。レスベラトロールはTRAPラットにおける前立腺がん増殖を抑制した。その作用機序としてアンドロゲン受容体発現低下を介するアポトーシスの亢進が考えられた。Canololによって、H. pylori感染による胃の炎症の有意な改善と胃がんの発生抑制が見られた。NSAIDsの投与により、ヒトの大腸ACFは数ヶ月間でアポトーシスを起こして消失した。家族性大腸腺腫症患者に対する緑茶抽出物を用いた大腸ポリープ予防介入試験の評価を分析中である。また、大腸がん化学予防のための低用量アスピリン腸溶錠の効果を評価する臨床試験実施の準備が整い、現在、エントリー中である。
結論
Pai-1阻害剤ががん予防剤として利用できる可能性が示唆された。ピタバスタチンは炎症関連マウス大腸発がんを抑制した。食品中の抗酸化物質によるDNAの酸化障害の改善、炎症所見の軽減が、胃発がん予防の一助となると考えられた。これら基礎資料をもとに行われている緑茶抽出物、少量アスピリンを用いた介入研究において得られる成果は、今後のがん予防研究にとって有意義なデータとなる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200621009B
報告書区分
総合
研究課題名
がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究
課題番号
H16-3次がん-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 白井 智之(名古屋市立大学大学院医学研究科病態病理学講座実験病態病理学)
  • 田中 卓二(金沢医科大学病理学第一講座)
  • 塚本 徹哉(愛知県がんセンター研究所腫瘍病理学部)
  • 高山 哲治(札幌医科大学医学部内科学)
  • 石川 秀樹(健康保険連合会大阪中央病院)
  • 徳留 信寛(名古屋市立大学大学院医学研究科健康増進・予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんハイリスクグループにおける発がん要因の把握と、食品素材、医薬品を対象としたがん予防剤の開発、がん予防方法の確立を行い、臨床応用を目的とする。
研究方法
Plasminogen activator inhibitor-1(Pai-1)阻害剤のMinマウス腸ポリープ生成に対する影響を検討した。脂溶性HMG-CoA還元酵素阻害剤、ピタバスタチンの発がん抑制効果をAOM/DSS誘発炎症関連マウス大腸発がんモデル系にて検討した。ポリフェノールの1つであるレスベラトロールのTRAPラットにおける前立腺がん増殖抑制効果を検討した。H. pylori感染スナネズミに食品中の酸化ラジカルスカベンジャーcanololを投与し、胃炎と胃がんに対する影響を検討した。NSAIDsを投与し、ヒトの大腸ACFに対する影響を検討した。家族性大腸腺腫症患者を対象とし、緑茶抽出物及び少量アスピリンによる直腸ポリープ抑制効果を二重盲検法による無作為割付試験にて検討中である。
結果と考察
Pai-1阻害剤は、Minマウスの腸管ポリープ生成を抑制することがわかった。炎症関連マウスにおいてピタバスタチンに強い大腸発がん抑制作用が認められた。レスベラトロールはTRAPラットにおける前立腺がん増殖を抑制した。その作用機序としてアンドロゲン受容体発現低下を介するアポトーシスの亢進が考えられた。Canololによって、H. pylori感染による胃の炎症の有意な改善と胃がんの発生抑制が見られた。NSAIDsの投与により、ヒトの大腸ACFは数ヶ月間でアポトーシスを起こして消失した。家族性大腸腺腫症患者に対する緑茶抽出物を用いた大腸ポリープ予防介入試験の評価を分析中である。また、大腸がん化学予防のための低用量アスピリン腸溶錠の効果を評価する臨床試験実施の準備が整い、現在、エントリー中である。

結論
Pai-1阻害剤ががん予防剤として利用できる可能性が示唆された。ピタバスタチンは炎症関連マウス大腸発がんを抑制した。食品中の抗酸化物質によるDNAの酸化障害の改善、炎症所見の軽減が、胃発がん予防の一助となると考えられた。これら基礎資料をもとに行われている緑茶抽出物、少量アスピリンを用いた介入研究において得られる成果は、今後のがん予防研究にとって有意義なデータとなる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、がんのハイリスクグループの発がん要因を把握するとともに、食品素材及び医薬品を対象としたがん予防剤、がん予防方法を開発し、臨床への応用を目指すことを目的とする。16-18年度は、食品素材及び医薬品から新規がん化学予防剤を見い出し、その発がん抑制機構の解明を行った。特に脂質代謝の観点から、新規の大腸発がん分子機構が解析され、重要な基礎的資料を得たものと確信する。
臨床的観点からの成果
FAP患者において高脂血症の割合が健常人に比べ多いことが示唆され、NSAIDsの投与により、ヒトの大腸ACFが消失したという結果は、動物実験の結果の妥当性を示している。各々の発がんモデル動物実験とヒトがんとを結び付けることにより、個別化予防及び実用的ながん化学予防薬の開発に結びつくと思われる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
がん予防のための基礎的研究成果をあげることは、最終的には我が国の保健医療の向上に役立つものと考えられる。
その他のインパクト
メタボリックシンドローム等、肥満や高脂血症と発がんとの関連性の基礎的データ及びそれらを標的としたがん化学予防剤の候補物質を収集、蓄積することにより、我が国におけるがんとその他の疾患の予防に関する有益な情報を発信できる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
64件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
63件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahashi, M., Mutoh, M., Wakabayashi, K. ,et al.
Suppressive effect of an inducible nitric oxide inhibitor, ONO-1714, on AOM-induced rat colon carcinogenesis.
Nitric.Oxide. ,  (14) , 130-136  (2006)
原著論文2
Mutoh, M., Niho, N., and Wakabayashi, K. et al.
Concomitant suppression of hyperlipidemia and intestinal polyp formation by increasing lipoprotein lipase activity in Apc-deficient Mice.
Biol. Chem. ,  (387) , 381-385  (2006)
原著論文3
Mutoh, M., Takahashi, M., and Wakabayashi, K. et al.
Roles of prostanoids in colon carcinogenesis and their potential targeting for cancer chemoprevention.
Curr.Pharm. Des. ,  (12) , 2375-2382  (2006)
原著論文4
Niho, N., Mutoh, M., Wakabayashi, K. et al.
Inhibition of intestinal carcinogenesis by a new flavone derivative, chafuroside, in oolong tea.
Cancer Sci. ,  (97) , 248-251  (2006)
原著論文5
Hikosaka, A., Futakuchi, M., Shirai, T. ,et al.
Lack of prophylactic effect of incadronate on skeletal lesions associated with implants of prostate cancer.
Eur. Uro., ,  (49) , 176-182  (2006)
原著論文6
Kawai, N., Ito, A., Nakahara, Shirai, T., et al.
Complete regression of experimental prostate cancer in nude mice by repeated hyperthermia using magnetite cationic liposome and a newly developed solenoid containing a ferrite core.
Prostate ,  (66) , 718-727  (2006)
原著論文7
Said, M., Hokaiwado, N., Shirai, T. , et al.
Inhibition of prostate carcinogenesis in probasin/SV40 T antigen transgenic rats by leuprorelin, a luteinizing hormone-releasing hormone agonist. 
Cancer Sci. ,  (97) , 459-467  (2006)
原著論文8
Tang, M-X., Ogawa, K., Shirai, T. ,et al.
Protective effects of citrus nobiletin and auraptene in transgenic rats developing adenocarcinoma of the prostate (TRAP) and human prostate carcinoma cells.
Cancer Sci.  (2007)
原著論文9
Tanaka, T., Miyamoto, S., Suzuki, R., et al.
Chemoprevention of colon carcinogenesis by dietary non-nutritive compounds
Curr Topics Neutraceut Res, ,  (4) , 127-152  (2006)
原著論文10
Tanaka, T., Kohno, H., Suzuki, R., et al.
Dextran sodium sulfate promotes colorectal carcinogenesis in ApcMin/+ mice: Inflammation stimuli by dextran sodium sulfate resultes in development of multiple colonic neoplasms.
Int.J. Cancer. ,  (118) , 25-34  (2006)
原著論文11
Hata, K., Tanaka, T., Kohno, H., et al.
Lack of enhancing effects of degaraded l-carrageenan on the development of beta-catenin-accumulated crypts in male DBA/2J mice initiated with azoxymethane.
Cancer Lett. ,  (238) , 69-75  (2006)
原著論文12
Mizoshita, T., Tsukamoto, T., Takenaka, Y., et al.
Gastric and intestinal phenotypes and histogenesis of advanced glandular stomach cancers in carcinogen-treated Helicobacter pylori-infected Mongolian gerbils.
Cancer Sci. ,  (97) , 38-44  (2006)
原著論文13
Ogasawara, N., Tsukamoto, T., Mizoshita, T., et al.
Mutations and nuclear accumulation of beta-catenin correlate with intestinal phenotypic expression in human gastric cancer.
Histopathology ,  (49) , 612-621  (2006)
原著論文14
Takenaka, Y., Tsukamoto, T., Mizoshita, T., et al.
Helicobacter pylori infection stimulates intestinalization of endocrine cells in glandular stomach of Mongolian gerbils.
Cancer Sci. ,  (97) , 1015-1022  (2006)
原著論文15
Tsukamoto, T., Mizoshita, T., and Tatematsu, M.
Gastric-and-intestinal mixed-type intestinal metaplasia: aberrant expression of transcription factors and stem cell intestinalization.
Gastric Cancer ,  (9) , 156-166  (2006)
原著論文16
Takayama, T., Miyanishi, K., Hayashi, T., et al.
Colorectal cancer: genetics of development and metastasis.
Journal of Gastroeneterology ,  (40) , 185-192  (2006)
原著論文17
Hirata, K., Kanemitsu, S., Ishikawa, H., et al.
HNPCC registry and genetic testing project of the Japanese society for cancer of the colon and rectum (JSCCR). A case of hereditary nonpolyposis colorectal cancer with novel germline mutation of MSH2, associated with liposarcoma of the thigh.
Am J Gastroenterology ,  (101) , 193-193  (2006)
原著論文18
Jiang, J., Wang, J., Ishikawa, H., et al.
Elevated risk of colorectal cancer associated with the AA genotype of the cyclin D1 A870G polymorphism in an Indian population.
J. Cancer Res. Clin.Oncol. ,  (132) , 193-199  (2006)
原著論文19
Ghadimi, R., Taheri, H., Tokudome, S. ,et al.
Host and environmental factors for gastric cancer in Babol, the Caspian Sea Coast,
Iran. Eur. J .Cancer. Prev.  (2007)
原著論文20
Okamoto, Y., Tsuboi, S., Tokudome, S. ,et al.
Effects of smoking and drinking habits on the incidence of periodontal disease and tooth loss among Japanese males: a four-year longitudinal study.
J. Periodont. Dis.  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-09-18
更新日
-