ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発

文献情報

文献番号
200619085A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発
課題番号
H18-長寿-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 良輔(京都大学大学院医学研究科臨床神経科学)
  • 吉政康直(国立循環器病センター内科動脈硬化代謝臨床栄養部門)
  • 永谷憲歳(国立循環器病センター研究所再生医療部)
  • 仁藤新治(田辺製薬株式会社先端医療研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで認知障害に対する根治的治療法はなく、保存的に患者を見守るしかない状況である。我々はわが国で発見された心臓血管ホルモンであるナトリウム利尿ペプチド及びアドレノメジュリン(AM)が、血管再生を促進することを明らかにした。一方ES細胞より血管を構成する内皮細胞及び血管平滑筋細胞の双方に分化する“血管前駆細胞(Vascular Progenitor Cells; VPC)”の同定に成功した。そこで本研究では、ヒトES細胞と血管ホルモンを応用し、新たな認知症に対する治療法の開発を目指す。
研究方法
1.ES細胞より血管細胞、神経細胞に分化する“血管神経前駆細胞(Vasculo-Neural Progenitor Cells; VNPC)”を同定し、ヒト血管、神経細胞への分化誘導システムを構築し、同システムを駆使して新たな虚血脳再生ホルモンを探索する。
2.血管ホルモン過剰発現トランスジェニックマウスなどを用いて、認知障害治療におけるホルモン補償の臨床的有用性を検討する。
3.脳虚血性認知症患者における血管構築異常の特性を明らかにしその病態をモデル動物を用いて検討する。
4.脳血管障害のリスクファクターであるメタボリックシンドローム(MS)患者での血管前駆細胞の動態特性を明らかにする。
結果と考察
基礎研究においては、1.サルES細胞から、神経細胞各コンポーネントへ分化誘導させる方法を確立した。2.AMトランスジェニックマウスを用いてAMの虚血脳における血管再生、神経再生作用を発見した。3.AMの骨髄からの内皮前駆細胞(Endothelial Progenitor Cells; EPC)の誘導と肺気腫モデルでの組織修復促進作用を見出した。4.マトリックスメタロプロテアーゼの虚血脳での血液脳関門の破綻と神経障害における意義を明らかにした。
一方、臨床応用研究として、1.皮質下血管性認知症患者での白質血管障害を見出した。
2.脳虚血のリスクであるMS患者でのEPCの動態(内臓脂肪との相関)を明らかにした。
結論
AMの虚血脳再生ホルモンとしての有用性が明らかとなった。それらの成果を踏まえ我々は、脳虚血患者にAMを投与することで、血管再生と神経再生を誘導する新しい治療法「血管-神経再生療法」を構築できる可能性を着想し、血管性痴呆患者に対するAM投与治療法の臨床プロトコールを作成中である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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