トランスジェニックマウスを用いたミトコンドリア酸化ストレスの抑制によるアルツハイマー病予防・治療法の開発

文献情報

文献番号
200619022A
報告書区分
総括
研究課題名
トランスジェニックマウスを用いたミトコンドリア酸化ストレスの抑制によるアルツハイマー病予防・治療法の開発
課題番号
H17-長寿-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
太田 成男(日本医科大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳の酸化ストレスを軽減し、神経を保護することによって、アルツハイマー病の発症を遅延させること、すなわち予防すること、あるいは治療できるようにすることである。 (A)アルツハイマー病を予防するに足る理想的な抗酸化物質を見いだすこと、(B)その抗酸化物質を評価できるモデル動物を作製することである。(C)抗酸化剤による還元による効果を評価する。同時に、(D)酸化ストレスとAβの関連をより明確にする。
研究方法
省略
結果と考察
(A)水素の効果
1.水素は試験管内実験においても、培養細胞中においても、・OHとONOO-のみを選択的に還元消去した。
2. ・OH産生を引き起こすCu+やFe2+を生成しないことを明らかにした。
3.脳虚血モデルラットの脳傷害を劇的に軽減した。脳梗塞巣を小さくし、予後の運動機能、体温、体重の改善が見られた。
 以上の結果より、水素は脳神経を護り、副作用のない理想的な抗酸化物質であることが示唆された。
(B)モデル動物の作製
1. 脳と筋肉に、加齢依存的に酸化ストレスマーカーの4-HNEが増加したマウスを作製した。
2.初代神経培養細胞は、4-HNEへの耐性が低下していた。
3.加齢に伴って、海馬の神経変性とグリオーシスが見られた。
4.Tau蛋白質のリン酸化が見られた。
5.水迷路試験で加齢に伴う空間認知機能が明らかに低下した。
6.以上の現象は、apoE(-/-)と掛け合わせることによって、表現型が生じるまでの時間が短縮された。
 ALDH2欠損により酸化ストレスが亢進し、加齢に伴う認知機能が低下したことを示す。
(C) 水素によるDALマウス等の酸化ストレス軽減による評価
1.DAL02に水素水を飲ませると血液中、筋肉中の4-HNEが減少し、酸化ストレスが軽減した。
2.apoE(-/-)に水素水を飲ませると、動脈硬化が抑制された。
(D) 酸化ストレスとアミロイドβペプチド(Aβ)の関連の研究方法
1.ABADはミトコンドリアに存在し、4-HNEを解毒する作用があり、Aβによってその解毒作用が阻害される。結果的にAβによって、酸化ストレスが亢進することになることを明らかにした。
結論
水素のOHラジカル消去能は顕著であった。酸化ストレスの最終産物を蓄積させるマウスを確立し、加齢に伴う認知症モデル動物を作製した。同時にタウ蛋白のリン酸化が認められたことはアルツハイマー病に近いモデルであることを示唆する。なお、水素の選択的還元作用とその臨床への可能性についての論文は、Nature Medicineの2007年5月号に掲載される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200619022B
報告書区分
総合
研究課題名
トランスジェニックマウスを用いたミトコンドリア酸化ストレスの抑制によるアルツハイマー病予防・治療法の開発
課題番号
H17-長寿-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
太田 成男(日本医科大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳の酸化ストレスを軽減し、神経を保護することによって、アルツハイマー病の発症を遅延させること、すなわち予防すること、あるいは治療できるようにすることである。 (A)アルツハイマー病を予防するに足る理想的な抗酸化物質を見いだすこと、(B)その抗酸化物質を評価できるモデル動物を作製することである。(C)抗酸化剤による還元による効果を評価する。同時に、(D)酸化ストレスとAβの関連をより明確にする。
研究方法
省略
結果と考察
(A)水素の効果
1.水素は試験管内実験においても、培養細胞中においても、・OHとONOO-のみを選択的に還元消去した。
2. ・OH産生を引き起こすCu+やFe2+を生成しないことを明らかにした。
3.脳虚血モデルラットの脳傷害を劇的に軽減した。脳梗塞巣を小さくし、予後の運動機能、体温、体重の改善が見られた。
 以上の結果より、水素は脳神経を護り、副作用のない理想的な抗酸化物質であることが示唆された。
(B)モデル動物の作製
1. 脳と筋肉に、加齢依存的に酸化ストレスマーカーの4-HNEが増加したマウスを作製した。
2.初代神経培養細胞は、4-HNEへの耐性が低下していた。
3.加齢に伴って、海馬の神経変性とグリオーシスが見られた。
4.Tau蛋白質のリン酸化が見られた。
5.水迷路試験で加齢に伴う空間認知機能が明らかに低下した。
6.以上の現象は、apoE(-/-)と掛け合わせることによって、表現型が生じるまでの時間が短縮された。
 ALDH2欠損により酸化ストレスが亢進し、加齢に伴う認知機能が低下したことを示す。
(C) 水素によるDALマウス等の酸化ストレス軽減による評価
1.DAL02に水素水を飲ませると血液中、筋肉中の4-HNEが減少し、酸化ストレスが軽減した。
2.apoE(-/-)に水素水を飲ませると、動脈硬化が抑制された。
(D) 酸化ストレスとアミロイドβペプチド(Aβ)の関連の研究方法
ABADはミトコンドリアに存在し、4-HNEを解毒する作用があり、Aβによってその解毒作用が阻害される。結果的にAβによって、酸化ストレスが亢進することになることを明らかにした。

結論
水素のOHラジカル消去能は顕著であった。酸化ストレスの最終産物を蓄積させるマウスを確立し、加齢に伴う認知症モデル動物を作製した。同時にタウ蛋白のリン酸化が認められたことはアルツハイマー病に近いモデルであることを示唆する。なお、水素の選択的還元作用とその臨床への可能性についての論文は、Nature Medicineの2007年5月号に掲載される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 ALDH2活性を低下させるだけで、加齢に伴う認知機能障害がトランスジェニックマウスに見られた。この原因は酸化ストレスにより生じた過酸化脂質由来の有害なアルデヒドの蓄積によるものであり、認知機能の低下における重要性が明確になった。酸化ストレスを低下させる抗酸化物質として、水素分子が有益であることを見いだした。水素分子には適度な還元力があり、活性酸素のなかでも有益なものは消去せず、有害な活性酸素のみを選択的に消去することがわかった。副作用のない抗酸化物質として有力である。
臨床的観点からの成果
 アルツハイマー病型認知症の原因のひとつとして酸化ストレスがあげられる。酸化ストレスは活性酸素とりわけヒドロキシルラジカルはDNAに変異を生じさせ、蛋白質と細胞膜を変性させて、神経を死に至らしめるので、活性酸素を消去する抗酸化物質が予防に有効であると考えられる。しかし、還元力が強い抗酸化物質を過剰に摂取するとむしろ死亡率が増加することが報告されている。水素は、有益な活性酸素は消去せず、適度の還元力をもち、極めて効果的なので、副作用のない抗酸化物質として有力である。
ガイドライン等の開発
 特になし。
その他行政的観点からの成果
 多くの抗酸化サプルメントは、酸化ストレスを軽減するので、老年病や癌の予防に有効であると考えられてきた。しかし、還元力の強いサプルメントを過剰に摂取すると有益な活性酸素による生体防御機構が低下し、逆に死亡率が上昇することが海外の大規模疫学調査により判明した。水素は生体防御機構に関する活性酸素を還元せず、有害な活性酸素のみを選択的に効率よく消去するので、アルツハイマー病をはじめとする老年病の予防に有力である。
その他のインパクト
 水素の還元力の有効性についての研究は、Nature Medicine 2007年6月号に発表され、 それに伴って、press releaseされ、新聞報道された。又、2008年6月にはNeuropsycopharmacologyにも論文が発表された。

発表件数

原著論文(和文)
13件
神経研究の進歩,日本認知症学会誌, 他
原著論文(英文等)
13件
Nat. Med. J. Hum. Genet. etc.
その他論文(和文)
2件
臨床神経科学 アニムス 肥満と糖尿病  他
その他論文(英文等)
2件
Oncogene etc.
学会発表(国内学会)
25件
第6回日本ミトコンドリア学会年会, 第40回日本アルコール・薬物医学会総会 他2005.9.他
学会発表(国際学会等)
14件
FinMIT/J-Mit Joint Meeting, International Conference on Mitochondria and Life 2005
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
WO2005020681, WO2007021034 
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohsawa I, Ishikawa M, Takahashi K, et al.
Molecular hydrogen acts as a therapeutic antioxidant through the selective reduction of cytotoxic oxygen radicals.
Nature Medicine , 13 (6) , 688-694  (2007)
原著論文2
Nagata K, Nakashima-Kamimura N, Mikami T, et al.
Consumption of molecular hydrogen prevents the stress-induced impairments in hippocampus-dependent learning tasks during chronic physical restraint in mice
Neuropsycopharmacology  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-