トキシコゲノミクス手法を用いた医薬品安全性評価予測システムの構築とその基盤に関する研究

文献情報

文献番号
200612001A
報告書区分
総括
研究課題名
トキシコゲノミクス手法を用いた医薬品安全性評価予測システムの構築とその基盤に関する研究
課題番号
H14-トキシコ-指定-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
漆谷 徹郎(独立行政法人医薬基盤研究所基盤的研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 中山 裕之(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 金井 好克(杏林大学医学部)
  • 中釜 斉(国立がんセンター研究所化学部)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
480,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、in vivo及びin vitroのモデル系において、化合物の暴露により誘発される網羅的遺伝子発現をデータベース化し、化合物の安全性を従来の毒性試験よりも正確かつ詳細に予測するシステムを開発することである。これにより、より安全性の高い医薬品の創製、創薬の効率化が期待される。
研究方法
目標とした150化学物質について,前年度までのプロトコールに従って実験を継続した.ラットおよび培養系を用いた暴露実験を行い、肝・腎を主標的としてGeneChipを用いた遺伝子発現データ、古典的毒性学データ、更に関連する化合物情報をデータベース化した。前年度までに統合データベースv.3.0を完成したが,このシステムは本プロジェクトのプロトコールに特化したものであり、本システムの将来の利用を考えたとき、汎用性を持たせるべきであるという意見が強く、最終年度はラット以外の種、用量・時点を自由に設定できるシステムにグレードアップし、医薬品開発の現場において活用できるようなものとした。基盤的研究として、(1)薬物誘発肝病変の発現機構と遺伝子発現プロファイルに関する研究 (2)化学物質による腎臓発現遺伝子の制御と機能調節に関する研究 (3)大腸の前がん病変及び腫瘍における遺伝子変化の解析に関する研究 (4)恒常性維持機構を標的とした毒性に関する研究を継続した。
結果と考察
 最終年度までに目標とする150化合物に関しての最終データセットを取得し、データベースに格納した。培養系に関しては、ラット初代肝細胞について150,ヒト初代肝細胞は120化合物を実施した。統合データベースに解析ツール,判別分析からなる予測ツールを結合させたシステムを完成しGenomics-Assisted Toxicity Evaluation System developed by Toxicogenomics Project Japan(TG-GATEs)と命名した。将来マーカー遺伝子リストを蓄積させていけば予測の範囲が増大するであろうが、現状で代表的な表現型の予測率は80%を越える。システムの構築には、最先端の毒性発現機序研究の裏付けが必要不可欠であったが,分担研究者による基盤研究の多大な成果が得られた。
結論
 当初の計画通り150化合物についてのラットの毒性データと遺伝子発現データを統合データベースに格納し、解析・安全性予測システムからなるTG-GATEsを完成した。このシステムの活用により安全性試験の大幅な効率化が期待できる。また、基盤研究により得られた多くの成果は、毒性学の進歩に多大な貢献をした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200612001B
報告書区分
総合
研究課題名
トキシコゲノミクス手法を用いた医薬品安全性評価予測システムの構築とその基盤に関する研究
課題番号
H14-トキシコ-指定-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
漆谷 徹郎(独立行政法人医薬基盤研究所基盤的研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 中山 裕之(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 金井 好克(杏林大学医学部)
  • 中釜 斉(国立がんセンター研究所化学部)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所毒性部)
  • 長尾 拓(元 国立医薬品食品衛生研究所)
  • 土井 邦雄(元 東京大学大学院農学生命科学研究所)
  • 遠藤 仁(元 杏林医学医学部)
  • 若林 敬二(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、in vivo及びin vitroのモデル系において、化合物の暴露により誘発される網羅的遺伝子発現をデータベース化し、化合物の安全性を従来の毒性試験よりも正確かつ詳細に予測するシステムを開発することである。これにより、より安全性の高い医薬品の創製、創薬の効率化が期待される。
研究方法
データベース構築を目的とした、製薬会社、国立衛研(後半から医薬基盤研が参加)からなる官民共同のトキシコゲノミクスプロジェクトを設立し、データの収集・解析を行った。合議により医薬品を中心とした150化学物質を選定し、ラットおよび培養系を用いた暴露実験を行い、肝・腎を主標的としてGeneChipを用いた遺伝子発現データ、古典的毒性学データ、更に関連する化合物情報をデータベース化した。並行して、多数のモジュールからなる解析・予測システムを構築した。またデータ解析・予測アルゴリズム設定には、毒性学的メカニズムの理解が必須であるため、基盤的研究として、(1)薬物誘発肝病変の発現機構と遺伝子発現プロファイルに関する研究 (2)化学物質による腎臓発現遺伝子の制御と機能調節に関する研究 (3)大腸の前がん病変及び腫瘍における遺伝子変化の解析に関する研究 (4)恒常性維持機構を標的とした毒性に関する研究をおいた。
結果と考察
最終年度までに目標とする150化合物に関しての最終データセットを取得し、データベースに格納した。培養系に関しては、ラット初代肝細胞について150,ヒト初代肝細胞は120化合物を実施した。統合データベースに解析ツール,判別分析からなる予測ツールを結合させたシステムを完成しGenomics-Assisted Toxicity Evaluation System developed by Toxicogenomics Project Japan(TG-GATEs)と命名した。将来マーカー遺伝子リストを蓄積させていけば予測の範囲が増大するであろうが、現状で代表的な表現型の予測率は80%を越える。システムの構築には、最先端の毒性発現機序研究の裏付けが必要不可欠であったが,分担研究者による基盤研究の多大な成果が得られた。
結論
当初の計画通り150化合物についてのラットの毒性データと遺伝子発現データを統合データベースに格納し、解析システム、安全性予測システムからなるTG-GATEsを完成した。このシステムの活用により安全性試験の大幅な効率化が期待できる。また、基盤研究により得られた多くの成果は、毒性学の進歩に多大な貢献をした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200612001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
150化合物についてのラットの毒性データと遺伝子発現データを統合データベースに格納し、解析システム、安全性予測システムからなるTG-GATEsを完成した。このシステムの活用により安全性試験の大幅な効率化が期待できる。また、基盤研究により得られた成果は多くの論文として結実し、毒性学の進歩に多大な貢献をした。
臨床的観点からの成果
本プロジェクトはもともと、前臨床段階でのラットを用いた毒性試験の効率化・高精度化を目標としていた。薬物開発に必須の項目である毒性試験の改良は結果的には臨床における安全性にも通じる。しかし、ゲノミクスデータによる臨床での安全性予測精度の向上は大きな課題であり、これは本プロジェクトの成果の上に立つ後継プロジェクトの中心的なテーマとなっている。
ガイドライン等の開発
本プロジェクトで完成したデータベースは、将来的にゲノミクスデータを申請資料として使用する場合のリファレンスとなり、かつデータ評価の基礎となりうる。現在厚労省医薬食品局・総合機構と打ち合わせを始めており、このデータベースを基にした後継プロジェクトにおいて、ガイダンス案作成のためのワーキンググループを組織する予定である。
その他行政的観点からの成果
第4回有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会(2007年3月2日)において、本研究成果と将来展望を説明した。
その他のインパクト
2002年9月13日、化学工業日報にプロジェクト開始の紹介、2004年9月3日、日本経済新聞夕刊にプロジェクト進行状況の紹介、2007年3月7日、読売新聞夕刊にプロジェクトの成果の紹介。2007年2月13日、薬学会館において研究成果を発表する公開シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
233件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
362件
学会発表(国際学会等)
99件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Anzai N, Jutabha, P, Kanai Y et al.
Integrated physiology and proximal tubular organic anion transport.
Curr Opin Nephrol Hypertens , 14 , 472-479  (2005)
原著論文2
Miyazaki H, Anzai N, Ekaratonawong S, et al.
Modulation of renal apical organic anion transporter 4 function by two PDZ domain-containing proteins.
J. Am. Soc Nephol , 16 , 349-3506  (2005)
原著論文3
Shoji, Y. Takahashi, M, Takasuka, N. et al.
Prostaglandin E receptor EP3 deficiency modifies tumor outcome in mouse two-stage skin carcinogenesis.
Carcinogenesis. , 26 , 2116-2122  (2005)
原著論文4
菅野純、相崎健一、五十嵐勝秀、他 
ゲノム毒性学 形質非依存型トキシコゲノミクスの導入
細胞工学 , 23 , 685-693  (2004)
原著論文5
菅野純、相崎健一、五十嵐勝秀、他 
 トキシコゲノミクス
実験医学別冊 ゲノム研究ハンドブック , 329-337  (2004)
原著論文6
H.Matsuo, Y.Kanai, M.Tokunaga et al.,
High affinity D- and L-serine trasnporter Asc-1:cloning and dendritic localization in the rat cerebral and cerebellar cortices.
Neurosci. Lett. , 358 , 123-126  (2004)
原著論文7
Shoji, Y., Takahashi, M., Kitamura T., et al.
Down-regulation of prostaglandin E receptor subtype EP3 during colon cancer development.
Gut , 53 , 1151-1158  (2004)
原著論文8
He X.J., Ejiri N., Nakayama H., et al.
Changes in cytochrome P450 isozymes (CYPs) protein levels during lactation in rat liver.
Exp.Mol.Pathol. , 79 , 224-228  (2005)
原著論文9
Sehata S., Kiyosawa N., Makino T., et al.
Morphological and microarray analysis of T-2 toxin –induced fetal brain lesion.
Food Chem.Toxicol. , 42 , 1727-1736  (2004)
原著論文10
Baba Y. and Doi K.
MHC class II-related genes expression in porcine-serum-induced rat hepatic fibrosis.
Exp. Mol. Pathol. , 77 , 214-221  (2004)
原著論文11
Kume E., Aruga C., Ishizuka Y., et al.
Gene expression profiling in streptozotocin treated mouse liver using DNA microarray.
Exp.Toxicol.Pathol , 56 , 235-244  (2005)
原著論文12
Niho, N., Takahashi, M., Kitamura, T., et al.
Concomitant suppression of hyperlipidemia and intestinal polyp formation in Apc-deficient mice by peroxisome proliferator-activated receptor ligands.
Cancer Res. , 63 , 6090-6095  (2003)
原著論文13
Takahashi, M., Mutoh, M., Shoji, Y. et al.
Transfection of K-rasAsp12 cDNA markedly elevates IL-1β-and lipopolysaccharide-mediated inducible nitric oxide synthase expression in rat intestinal epithalial cells.
Oncogene , 22 , 7667-7676  (2003)
原著論文14
Niho, N., Takahashi, M., Shoji, Y et al.
Dose-dependent suppression of hyperlipidemia and intestinal polyp formation in Min mice by pioglitazone, a PPARγ ligand.
Cancer Sci. , 94 , 960-964  (2003)
原著論文15
Toshihiko Kasahara, Toshiko Miyazaki, Hiroyuki Nitta, et al.
Evaluation of the methods for duration of preservation of RNA quality in rat liver used for transcriptome analysis.
J. Toxicol. Sci. , 31 , 509-520  (2006)
原著論文16
Katsumi Morishita, Yumiko Mizukawa, Toshihiko Kasahara, et al.
Gene expression profile in liver of differing ages of rats after single oral administration of acetaminophen.
J. Toxicol. Sci. , 31 , 491-508  (2006)
原著論文17
Kotaro Tamura, Atsushi Ono, Toshikazu Miyagishima, et al.
Profiling of gene expression in rat liver and rat primary cultured hepatocytes treated with peroxisome proliferators.
J. Toxicol. Sci. , 31 , 471-490  (2006)
原著論文18
Kotaro Tamura, Atsushi Ono, Toshikazu Miyagishima, et al.
Comparison of gene expression profiles among papilla, medulla and cortex in rat kidney
J. Toxicol. Sci. , 31 , 449-470  (2006)
原著論文19
Naoki Kiyosawa, Kouji Shiwaku, Mitsuhiro Hirode, et al.
Utilization of a one-dimensional score for surveying the chemical-induced changes in expression levels of multiple biomarker gene sets using a large-scale toxicogenomics database.
J. Toxicol. Sci. , 31 , 433-448  (2006)
原著論文20
K. Takashima, Y. Mizukawa, K. Morishita, M. et al.
Effect of the difference in vehicles on gene expression in the rat liver — analysis of the control data in the Toxicogenomics Project Database.
Life Sci. , 78 , 2787-2796  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-