細胞性免疫誘導能を持つペプチド結合リポソームを応用したウイルスワクチンの創製

文献情報

文献番号
200609042A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞性免疫誘導能を持つペプチド結合リポソームを応用したウイルスワクチンの創製
課題番号
H18-ナノ-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
内田 哲也(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 昌(東京大学大学院分子予防医学教室)
  • 赤塚 俊隆(埼玉医科大学微生物学教室)
  • 松井 政則(埼玉医科大学微生物学教室)
  • 梶野 喜一(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 種市 麻衣子(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、高病原性鳥インフルエンザの発生が世界的に拡大し、人への感染報告が増加している。また、近年動物由来コロナウルスを病原体とする重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行するなど、新興感染症が人類の脅威となりつつある。これらの感染症への予防対策としてワクチンの開発が急がれている。ウイルスを病原体とする感染症に対するワクチンは、宿主のウイルス感染細胞を破壊・除去する細胞性免疫を誘導することが効果的であると考えられるが、現在臨床応用に供されているワクチンアジュバントは、液性免疫(抗体産生)はよく誘導するものの細胞性免疫は誘導しにくいという欠点がある。本研究は我々が近年開発した細胞性免疫を高効率に誘導するリポソーム処方を用いて、現在人類の脅威となりつつある新興感染症(鳥インフルエンザ、SARS)、および、未だ有効なワクチンが得られていないC型肝炎に対するワクチンを開発することを目的とする。
研究方法
鳥インフルエンザ、SARS、HCVの各ウイルス由来CTLエピトープをペプチド検索システムを用いて予測し、これに基づいて合成したペプチドにつきヒトHLAクラスIとの結合親和性、試験管内CTL誘導能等によりスクリーニングして候補となるエピトープを選ぶ。次いで、in vivo CTL誘導能を検討することにより各ウイルスのイムノドミナントエピトープを同定する。
結果と考察
鳥インフルエンザ:H5N1型鳥インフルエンザウイルスの核蛋白由来のMHC class I分子に結合するぺプチド2種類を結合モチーフ予測システムを用いて選び出し、合成した。リポソームに結合したペプチドの効果をin vivo CTL assayにより判定したところ、リポソームと結合したぺプチドは何れもCTL活性化を誘導した。SARS:既知のSARSスパイク由来のペプチド結合リポソームをマウスに免疫することにより効率よくSARS特異的CTLを誘導することが可能であることを確認した。HCV:リポソームワクチンのウイルスワクチンとしての有効性を、マウスのLCMV感染実験をモデルとして検討した。LCMV GP33-41 ペプチド結合リポソームをマウスに免疫したところ、有意なCTLの誘導が認められた。更にLCMVチャレンジ実験で、ウイルス感染をほぼ完璧にブロックできた。
結論
以上、本年度の検討の結果、我々が開発したリポソーム処方にウイルス由来ペプチドを結合させることにより有意なCTL誘導が行われること、および、LCMVを用いたマウスのウイルス感染モデルにおいて、リポソーム結合ペプチドによってウイルス感染抵抗性が誘導されることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-