ナノテクノロジーによる機能的・構造的生体代替デバイスの開発

文献情報

文献番号
200609002A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノテクノロジーによる機能的・構造的生体代替デバイスの開発
課題番号
H14-ナノ-指定-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
杉町 勝(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 洋(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 川田 徹(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 佐藤 隆幸(高知大学医学部循環制御学)
  • 砂川 賢二(九州大学大学院医学研究院循環器内科)
  • 河野 隆二(横浜国立大学大学院工学研究院知的構造の創生部門)
  • 西澤 松彦(東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻)
  • 妙中 義之(国立循環器病センター研究所先進医工学センター人工臓器部)
  • 絵野沢 伸(国立成育医療センター研究所)
  • 久保井 亮一(大阪大学大学院基礎工学研究科化学系専攻)
  • 大政 健史(大阪大学大学院工学研究科応用生物工学専攻)
  • 植田 和光(京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻)
  • 藤村 昭夫(自治医科大学臨床薬理学)
  • 黒田 章夫(広島大学大学院先端物質科学研究科専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
99,104,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. ナノテクノロジを駆使した高機能LSI、生体内通信、生体燃料電池による循環調節機能の植込み代替医療機器「神経制御システム」および高機能ペースメーカ「超小型分散ペーシングシステム」の開発、2. 多くの循環器系植込み機器の血液界面に必要な生体のもつ抗血液凝固性や種々の特性をナノ分子操作技術を用いて代替し実現する方法の開発、3. 生体細胞の必要な機能のみを抽出し脂質膜上で代替する非細胞性ナノ生化学系の開発を行うことを目的とした。
研究方法
1. 超小型ペースメーカ回路の設計と動作確認を行った。バイオニック治療装置の低侵襲化のために体表刺激について検討した。
2. ヘパリン表面固定技術(T-NCVCコーティング)の抗血栓性機序について検討した。
3. Anodiscを基材とした機能性膜の開発を検討した。
結果と考察
1. グルコース燃料電池による電力確保の見込み、1?2GHzでのUWBによる生体内通信の見通しがたった。超小型ペースメーカは既存の高集積度LSIを用いても約7mm角の回路により実現できる見通しができた。本年度はVVIペースメーカ機能を実現するソフトウェアの開発を行い機能を確認した。足三里への低周波電気鍼刺激により交感神経活動を抑制することができた。
2. T-NCVCコーティングでは抗血栓性にもかかわらず、生体内では溶血や好中球の活性化が起こりうることを明らかにした。T-NCVCコーティング国循型補助人工心臓を開発し、他の機能に影響を与えることなく抗血栓性が飛躍的に向上することを明らかにした。
3. 機能性膜をAnodiscを基材として行い、MDR1による基質輸送の検討の結果、吸着と透過を合わせ2割程度の吸着が見られ、そのうち1割程度がATP依存的な除去と考えられた。またポリリン酸キナーゼ系をこの機能性膜に組み込むことに成功した。
結論
バイオニックナノ循環器調節機能デバイス、血液界面代替デバイス、非細胞性代謝機能代替デバイスのいずれも実現に向けた基盤技術が確立した。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200609002B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノテクノロジーによる機能的・構造的生体代替デバイスの開発
課題番号
H14-ナノ-指定-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
杉町 勝(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 洋(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部 )
  • 川田 徹(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部 )
  • 佐藤 隆幸(高知大学医学部循環制御学)
  • 砂川 賢二(九州大学大学院医学研究院循環器内科)
  • 河野 隆二(横浜国立大学大学院工学研究科知的構造の創生部門)
  • 西澤 松彦(東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻)
  • 小久保 優(日立製作所中央研究所)
  • 妙中 義之(国立循環器病センター研究所先進医工学センター人工臓器部 )
  • 絵野沢 伸(国立成育医療センター研究所)
  • 久保井 亮一(大阪大学大学院基礎工学研究科化学系専攻)
  • 大政 健史(大阪大学大学院工学研究科応用生物工学専攻)
  • 植田 和光(京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻)
  • 藤村 昭夫(自治医科大学臨床薬理学)
  • 三枝 順三(産業医学総合研究所人間工学特性研究部)
  • 黒田 章夫(広島大学大学院先端物質科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾患の治療に生体機能の代替や是正が有効であるいくつかの代表例について、ナノテクノロジーを駆使してその実現を図った。循環調節機能に長期慢性的に是正を加えるための植え込み治療装置、血液に直接に触れる医療機器の表面を改変して長期抗血栓性を実現する技術、生体細胞から必要な要素のみを抽出して再構成し免疫原性や感染の危険性のない人工細胞の開発を並行して行った。
研究方法
1.循環調節機能代替デバイスでは課題を(1)治療装置電子回路の微小化・省電力化(2)電池微小化の鍵となる生体燃料電池の開発(3)生体局所に作用する微小機器を分散させ統合させるための生体内通信(4)バイオニック治療植え込み装置の低侵襲化に設定した。
2.血液界面代替デバイスでは、血液に直接に触れる医療機器の表面を改変して長期抗血栓性を実現する技術の開発を行った。
3.非細胞性代謝機能代替デバイスでは、生体細胞から必要な要素のみを抽出して再構成し免疫原性や感染の危険性のない代謝・排泄機能をもつ人工細胞の開発を行った。
結果と考察
1.(1)微小(7mm角)ペースメーカ回路試作を行いVVIペースメーカの機能の実現を確認した。(2)電源の微小化のためにグルコース燃料電池を開発により60μW/cm2の電力密度(最適時)を得た。(3)比較的低い周波数(1?2GHz)の電波を用いたUWB通信による生体内通信の設計を行った。(4)バイオニック神経制御システムの二次試作、防水試験、通信実験を完了した。
2.T-NCVCコーティングの作用機序検討では、抗血栓性にもかかわらず生体内では溶血や好中球の活性化が起こりうることを明らかにした。T-NCVCコーティング人工肺、補助人工心臓を開発し、他の機能に影響を与えることなく抗血栓性が飛躍的に向上(最長154日間)することを明らかにした。
3.リポソームの透析カラムを利用した大量連続作製法、トランスポータ、薬物代謝酵素の大腸菌およびバキュロウィルス合成系による大量調製に成功した。ジゴキシンのトランスポータMDR1融合プロテオリポソームによる一方向性の能動輸送を確認した。Anodiscを基材として機能性膜を再構成した。
結論
循環調節機能代替デバイス、血液界面代替デバイス、非細胞性代謝機能代替デバイスのいずれについても実用化のために必須な基礎技術を確立し、実用化に向けて大きく開発が進歩した。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.(1)微小ペースメーカ回路試作でVVIペースメーカの機能を実現した。(2)グルコース燃料電池により60μW/cm2の電力密度を得た。(3)比較的低周波数UWB通信による生体内通信の設計した。(4)バイオニック神経制御システムの試作した。
2.T-NCVCコーティング人工肺、補助人工心臓を開発により抗血栓性が飛躍的に向上した。
3.リポソームの大量連続作製法、トランスポータ、薬物代謝酵素の大量調製により、MDR1融合プロテオリポソームによる一方向性の能動輸送を確認した。
臨床的観点からの成果
T-NCVCコーティングを施した人工肺は上市され臨床で用いられている。他の課題は今期内には臨床応用に至っていないが、コンセプト実証の暁には臨床治療を根底から変える大きな潜在的可能性をもつ。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
総合科学技術会議のナノメディスン分野に関するヒアリングにおいて実例としてとりあげられた。
総合科学技術会議の科学技術基本計画に関するナノテク分野ワーキンググループに意見を述べた。
その他のインパクト
平成19年2月22日に東京コンファレンスセンター・品川において公開講座「ナノテクノロジーはいかに医学と融合して医療に貢献できるか」を開催した。一般向けの発表と聴衆からの熱心な質問により効率的な成果公開を果たした。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
245件
その他論文(和文)
77件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
266件
学会発表(国際学会等)
69件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計39件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kawada T, Yamazaki T, Akiyama T, et al.
Angiotensin II attenuates myocardial interstitial acetylcholine release in response to vagal stimulation.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 293 (4) , 2516-2522  (2007)
原著論文2
Kawada T, Kitagawa H, Yamazaki T, et al.
Hypothermia reduces ischemia- and stimulation-induced myocardial interstitial norepinephrine and acetylcholine releases.
J Appl Physiol. , 102 (2) , 622-627  (2007)
原著論文3
Kawada T, Yamazaki T, Akiyama T, et al.
Effects of Ca2+ channel antagonists on nerve stimulation-induced and ischemia-induced myocardial interstitial acetylcholine release in cats.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 291 (5) , 2187-2191  (2006)
原著論文4
Michikami D, Kamiya A, Kawada T, et al.
Short-term electroacupuncture at Zusanli resets the arterial baroreflex neural arc toward lower sympathetic nerve activity.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 291 (1) , 318-326  (2006)
原著論文5
Kawada T, Miyamoto T, Miyoshi Y, et al.
Sympathetic neural regulation of heart rate is robust against high plasma catecholamines.
J Physiol Sci. , 56 (3) , 235-245  (2006)
原著論文6
Zheng C, Kawada T, Li M, et al.
Reversible vagal blockade in conscious rats using a targeted delivery device.
J Neurosci Methods. , 156 (1) , 71-75  (2006)
原著論文7
Kawada T, Yamazaki T, Akiyama T, et al.
Vagal stimulation suppresses ischemia-induced myocardial interstitial norepinephrine release.
Life Sci. , 78 (8) , 882-887  (2006)
原著論文8
Yamamoto K, Kawada T, Kamiya A, et al.
Static interaction between muscle mechanoreflex and arterial baroreflex in determining efferent sympathetic nerve activity.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 289 (4) , 1604-1609  (2005)
原著論文9
Kawada T, Yamazaki T, Akiyama T,
Myocardial interstitial choline and glutamate levels during acute myocardial ischaemia and local ouabain administration.
Acta Physiol Scand. , 184 (3) , 187-193  (2005)
原著論文10
Sugimachi M, Sunagawa K.
Bionic cardiovascular medicine. Functional replacement of native cardiovascular regulation and the correction of its abnormality.
IEEE Eng Med Biol Mag. , 24 (4) , 24-31  (2005)
原著論文11
Uemura K, Kawada T, Kamiya A, et al.
Prediction of circulatory equilibrium in response to changes in stressed blood volume.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 289 (1) , 301-307  (2005)
原著論文12
Kawada T, Yamamoto K, Kamiya A, et al.
Dynamic characteristics of carotid sinus pressure-nerve activity transduction in rabbits.
Jpn J Physiol. , 55 (3) , 157-163  (2005)
原著論文13
Uemura K, Kawada T, Sugimachi M, et al.
A self-calibrating telemetry system for measurement of ventricular pressure-volume relations in conscious, freely moving rats.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 287 (6) , 2906-2913  (2004)
原著論文14
Miyamoto T, Inagaki M, Takaki H, et al.
Integrated characterization of the human chemoreflex system controlling ventilation, using an equilibrium diagram.
Eur J Appl Physiol. , 93 (3) , 340-346  (2004)
原著論文15
Kashihara K, Kawada T, Uemura K, et al.
Adaptive predictive control of arterial blood pressure based on a neural network during acute hypotension.
Ann Biomed Eng. , 32 (10) , 1365-1383  (2004)
原著論文16
Yanagiya Y, Sato T, Kawada T, et al.
Bionic epidural stimulation restores arterial pressure regulation during orthostasis.
J Appl Physiol. , 97 (3) , 984-990  (2004)
原著論文17
Miyamoto T, Kawada T, Yanagiya Y, et al.
Cardiac sympathetic nerve stimulation does not attenuate dynamic vagal control of heart rate via alpha-adrenergic mechanism.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. , 287 (2) , 860-865  (2004)
原著論文18
Kashihara K, Kawada T, Li M, et al.
Bezold-Jarisch reflex blunts arterial baroreflex via the shift of neural arc toward lower sympathetic nerve activity.
Jpn J Physiol. , 54 (4) , 395-404  (2004)
原著論文19
Sugimachi M, Okamoto H, Hoka S, et al.
Faster oscillometric manometry does not sacrifice the accuracy of blood pressure determination.
Blood Press Monit. , 9 (3) , 135-141  (2004)
原著論文20
Li M, Zheng C, Sato T, et al.
Vagal nerve stimulation markedly improves long-term survival after chronic heart failure in rats.
Circulation. , 109 (1) , 120-124  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-