文献情報
文献番号
200601017A
報告書区分
総括
研究課題名
地域住民の力を活用した地域福祉活動の展開と評価
課題番号
H17-政策-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
杉澤 秀博(桜美林大学大学院国際学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石川 久展(ルーテル学院大学総合人間学部)
- 杉原 陽子(東京都老人総合研究所福祉と生活ケア研究チーム)
- 中谷 陽明(日本女子大学人間社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、「民生委員を活用した閉じこもり高齢者の把握」「専門家による査定」「傾聴ボランティアの養成と派遣」という包括的なモデル事業を実施し、その効果と問題点を検討した。今年度の課題は、モデル事業の継続実施(傾聴ボランティアの派遣)および効果と問題点を量的・質的に分析することであった。
研究方法
1)モデル地区:千葉県我孫子市の「我孫子北地区」をモデル地区に設定。2)効果の量的分析:①ケースの発見:モデル地区の民生委員に閉じこもり高齢者の把握・報告を依頼。報告されたケースが閉じこもりであるか否かを評価し、閉じこもり高齢者の推定値と比較。②地域高齢者に対する効果:事業実施前後でモデル地区と対照地区の70歳以上の高齢者のアウトカム指標を比較。③ボランティアの担い手に対する効果:ボランティア活動に参加する前後でアウトカム指標を比較。④ボランティアの派遣対象者に対する効果:傾聴ボランティアの派遣前後でアウトカム指標を比較。3)効果や課題の質的分析:①民生委員、②傾聴ボランティア、③派遣対象者、など関係者をインタビューし、質的に分析。
結果と考察
1)閉じこもり高齢者の発見:民生委員による発見割合は1%程度と推察。質的分析では、把握が困難な理由として①高齢者に関する情報の不足、②高齢者の消極性、③家族の問題関心の低さ、④閉じこもり以外のニーズの方が高い、⑤告知の問題が、抽出された。2)派遣対象者に対する効果:量的分析では有意な効果が検出されなかった。質的分析では、ボランティアが役立つと認めるか否かには、①聴いてもらうことや家族以外の人との交流を望むか否か、②身体障害の有無が関係していることが推察された。3)ボランティアに対する効果:量的分析では自尊感情の有意な向上が認められた。質的分析では、①自分を振り返る機会、②自分の地域・家庭生活の問題解決、③自分の将来を考える機会、④相手から聴くことができているという充実感、⑤違う価値観に接する、といった効果があることも見出された。4)地域高齢者に対する効果:地域高齢者の閉じこもり予防への効果は観察されなかった。民生委員による閉じこもり高齢者の発見率が低く、モデル地区においてそもそも傾聴ボランティアの派遣対象となる人の把握が効果的に行われなかったことが、地域高齢者全体への効果が乏しかった理由と考えられる。
結論
本研究は民生委員による閉じこもり高齢者の発見、傾聴ボランティアの派遣に伴う問題点と課題を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2007-04-11
更新日
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