全国規模の疫学研究によるシックハウス症候群の実態と原因の解明

文献情報

文献番号
200501211A
報告書区分
総括
研究課題名
全国規模の疫学研究によるシックハウス症候群の実態と原因の解明
課題番号
H16-健康-053
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生分野)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 正敏(福島学院大学福祉学部 福祉心理学科)
  • 柴田 英治(愛知医科大学医学部 衛生学講座)
  • 森本 兼曩(大阪大学大学院医学系研究科 社会環境医学講座環境医学)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 瀧川 智子(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学分野)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部 医療政策・経営科学分野)
  • 西條 泰明(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群と注目を集めているが、十分な疫学調査がなされていなかった。本研究では、日本の6地域で、地域ごとの特徴と日本全体の実態、およびそれに基づく対策の方向を解明することを目的とする。
研究方法
1.統一プロトコールによる全国調査。
平成15年度に建築確認申請からランダム抽出した2,298軒に対する質問票調査を実施、(1)環境測定(VOC・アルデヒド、真菌、ダニアレルゲン)に承諾した425軒の居住者全員(1,479名)を対象とした自覚症状調査を実施した(平成16年度)。(2)症状と住宅環境の追跡調査を行った(平成17年度)。
2.室内空気中VOC濃度と尿中VOC濃度との関係を検討した。
3.パッシブサンプラーによるVOCの捕集時間と捕集量との関係を検討した。
4.RDD電話調査で東京都の有受療率、有病率、医療サービス利用状況調査した。
5.2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)対策の検討を行った。
結果と考察
1.(1)解析対象は425軒(北海道104軒、福島65軒、名古屋57軒、大阪78軒、岡山74軒、北九州50軒)。多変量解析の結果、シックハウス症状にはカビの発生など湿度環境や一部の真菌、家の空気が悪いと感じることなどが有意に関連していた。
(2)平成16年度に調査を実施した住宅270軒に対し追跡調査を行った(北海道64軒、福島29軒、名古屋40軒、大阪68軒、岡山49軒、北九州20軒)。シックハウス症状は変動が大きいことや、住環境が悪化すると症状が出現しやすいことが明らかになった。
2.尿中のトルエン、o-キシレン、Total キシレン、p-ジクロロベンゼンは暴露指標として利用できる可能性がある。
3.室内空気中の主要成分およびTVOCについては、24時間捕集でも定量可能であった。
4.電話調査による追跡の結果、有病率は2年前に比べ減少していた。シックハウス症候群に関する知識は普及しているが、対処行動も医療サービス利用までには至っていないと考えられた。
5.一般には測定されない2E1Hもシックハウスの原因として考えられ、その対策としてフタル酸エステルを含まない床材に交換することが有効であった。
結論
シックハウス対策には、化学物質対策のみならず、湿度環境・真菌、ダニアレルゲンなどの環境要因、さらに家の空気が悪いと感じることやストレスなどの個人要因に十分留意する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501211B
報告書区分
総合
研究課題名
全国規模の疫学研究によるシックハウス症候群の実態と原因の解明
課題番号
H16-健康-053
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生分野)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 正敏(福島学院大学福祉学部 福祉心理学科)
  • 柴田 英治(愛知医科大学医学部 衛生学講座)
  • 森本 兼曩(大阪大学大学院医学系研究科 社会環境医学講座環境医学)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 瀧川 智子(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学分野)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部 医療政策・経営科学分野)
  • 西條 泰明(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群が注目を集めているが、十分な疫学調査がなされていなかった。本研究では、日本の6地域(北海道、福島、名古屋、大阪、岡山、北九州)で、地域ごとの特徴と日本全体の実態、およびそれに基づく対策の方向を解明することを目的とする。
研究方法
1.統一プロトコールによる全国調査:(1)建築確認申請からランダム抽出した住宅の質問票調査、(2)居住者全員の自覚症状調査と環境測定(VOC・アルデヒド、真菌、ダニアレルゲン)、(3)追跡調査。
2.シックハウス疑いの受診者の住宅で環境測定(南岡山医療センター)。
3.化学物質の個人暴露量調査(北九州地域)。
4.シックハウスの有受療率、有病率、医療サービス利用状況のRDD電話調査(東京都特別区)。
結果と考察
1.(1)5,589軒に送付し、解析対象は2,298軒。症状が「いつもある」で、「家を離れるとよくなる」を有意なシックハウス症状と定義した場合、発症率は0.8-2.0%であった。また、症状が「いつもある・時々ある」場合では、発症率は1.8-4.3%であった。カビや結露の発生など湿度環境の指標、家のにおいが気になることなどがシックハウス症状に有意に関連した。
(2)解析対象は425軒。質問票の回答結果と環境要因について多変量解析を行った結果、シックハウス症状には湿度環境や一部の真菌、家の空気が悪いと感じることなどが関連した。眼、鼻など症状の種類別にリスク要因が異なった。
(3)解析対象は270軒。シックハウス症状は変動が大きいこと、住環境が悪化すると症状が出現しやすいことが明らかになった。
2.南岡山医療センターに受診した8症例中、1例(p-ジクロロベンゼン)のみが指針値を超過したが、その他の物質は低濃度であり症状の原因物質は特定できなかった。
3.個人暴露量調査の結果、ホルムアルデヒド、キシレン、アセトン等に暴露している割合が高かった。
4.電話調査では有病率は2年前に比べ減少。シックハウスに関する知識は普及しているが、医療サービス利用までには至っていないと考えられた。
結論
新改築に伴うシックハウス症状発症率は厳しい定義で0.8-2.0%と推定された。シックハウス対策には、化学物質のみならず、湿度環境・真菌、ダニアレルゲンやストレスなどの個人要因に十分留意する必要があること、症状の種類別に原因と対策を考える必要が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-11-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501211C