癌免疫細胞療法における凍結血漿の使用に関する調査研究

文献情報

文献番号
200501095A
報告書区分
総括
研究課題名
癌免疫細胞療法における凍結血漿の使用に関する調査研究
課題番号
H16-医薬-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡 正朗(山口大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷 眞至(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 有賀 淳(東京女子医科大学 がん免疫細胞治療学)
  • 山口 佳之(広島大学 原爆放射線医学研究所)
  • 片野 光男(九州大学大学院 医学研究院)
  • 上田 祐二(京都府立医科大学大学院 医学研究科)
  • 河野 浩二(山梨大学 医学部)
  • 平家 勇司(国立がんセンター 薬効試験部)
  • 硲 彰一(山口大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌免疫細胞療法における細胞誘導に際しての凍結血漿添加が、倫理性ならびに安全性の両面から問題となっている。本研究では、1.細胞誘導において凍結血漿が必要であるか否か、2.公的機関ならびに民間医療機関における細胞療法の現状と凍結結晶しようの実態を調査する、ことを目的とした。
研究方法
1.活性化リンパ球ならびに樹状細胞誘導における凍結血漿の必要性・不必要性を検討するため、公的8施設において現在施行中の細胞誘導方法に凍結血漿を加えることにより、細胞尤度の効率が上がるか否かについて検討した。
2.公的機関ならびに民間細胞療法施行施設の現状についてさらに調査を進めた。
結果と考察
1.細胞誘導のうち、樹状細胞に関しては、X-VIVO, AIM-V等のタンパク含有メディウムを使用することにより、さらなる血漿成分の追加は不要であること、また、RPMI1640等のタンパク非含有メディウムを使用した場合も、1%のアルブミンあるいは1-5%の自己血清の添加で効率よく細胞誘導が行われることが確認された。
一方、活性化リンパ球においては、FFPの添加はタンパク含有ならびに非含有メディウムともに細胞誘導効率を上げることが示唆された。しかしながら、タンパク含有メディウムにおいては、凍結血漿の使用無く十分量の活性の高い活性化リンパ球が得られ、さらに、タンパク非含有メディウムにおいても2%自己血清あるいは2-5%合成アルブミン添加により十分な活性を持つリンパ球が得られた。このことから、細胞療法では凍結血漿は不必要であると結論された。
2.全国の大学病院などの公的機関28施設ではFFPを現在使用している施設はなかった。民間65施設では、まず細胞療法の内容が確認できたのは40施設であった。そのうち、アンケート調査に回答したものは5施設と極めて少なかった。この中には、FFP使用施設は無かった。
結論
1.細胞療法において凍結血漿の使用は不要である。
2.公的機関での細胞療法における凍結血漿の使用は現在認められなかった。一方、民間施設ではアンケート調査に答えない施設が多く、我々の調査には限界があり、行政による調査が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200501095B
報告書区分
総合
研究課題名
癌免疫細胞療法における凍結血漿の使用に関する調査研究
課題番号
H16-医薬-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡 正朗(山口大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷 眞至(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 有賀 淳(東京女子医科大学 がん免疫細胞治療学)
  • 山口 佳之(広島大学 原爆放射線医科学研究所)
  • 片野 光男(九州大学大学院 医学研究院)
  • 上田 祐二(京都府立医科大学大学院 医学研究科)
  • 河野 浩二(山梨大学 医学部)
  • 平家 勇司(国立がんセンター 薬効試験部)
  • 硲 彰一(山口大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞免疫療法に使用される免疫細胞においても医薬品としての安全性・有効性の確保はきわめて重要な課題である。なかでも、培養時の添加物として輸血製剤である凍結血漿を使用している施設があり、凍結血漿はヒトからの供給によるため、緊急時の供給量の確保や未知の感染症、免疫反応等の問題を内在しており、細胞培養時の使用は献血者に対する倫理性、投与患者に対する安全性の面から問題となっている。
本研究では、本邦における細胞免疫療法の現状について調査するとともに、各種細胞培養法による抗腫瘍活性誘導効率を検討することにより、凍結血漿の不必要性を証明することを目的とした。
研究方法
1.基礎研究において細胞培養において、凍結血漿の使用の必要性について確認することを目的とした。
2.細胞療法を行っている施設のアンケート調査を行い、凍結血漿の使用状況を把握すると共に、FFPによると思われる有害事象について調査する。
結果と考察
結果
1.研究班8施設でFFPを現在使用している施設は無く、FFPの不必要性が強く示唆された。細胞培養における血清成分の必要性について検討したところ、タンパク成分含有メディウムでは血清の添加を必要としなかった。タンパク非含有メディウムにおいても、合成アルブミンなどを使用することにより、十分な免疫細胞誘導が可能であった。
2.全国の大学病院などの公的機関28施設ではFFPを現在使用している施設はなかった。民間65施設では、まず細胞療法の内容が確認できたのは40施設であった。そのうち、アンケート調査に回答したものは5施設と極めて少なかった。この中には、FFP使用施設は無かった。

考察
GMP gradeの細胞誘導を行うにあたり、何らかの血清成分は必要であるが、FFP以外のもので代用できることが確認された。
民間細胞療法の調査に関しては、患者負担の自由診療を行っている民間施設に対するアンケート調査は回収率が極めて悪く(8%)アンケートに答えない民間施設の現状を立ち入り調査など行う必要があると考えられた。
結論
免疫細胞療法ではFFPは必要が無い。また、民間施設に対する詳細は、我々の調査では把握しがたく、行政による調査が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-07-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501095C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究班8施設でFFPを現在使用している施設は無く、FFPの不必要性が強く示唆された。細胞培養における血清成分の必要性について検討したところ、タンパク成分含有メディウムでは血清の添加を必要としなかった。タンパク非含有メディウムにおいても、合成アルブミンなどを使用することにより、十分な免疫細胞誘導が可能であった。従って、GMP gradeの細胞誘導を行うにあたり、何らかの血清成分は必要であるが、FFP以外のもので代用できることが確認された。
臨床的観点からの成果
細胞療法においてFFPを使用しなくても免疫細胞療法が行いうることが確認された。これは、FFPを使用することによる問題点、すなわち、未知の感染症や免疫反応等の問題、献血者に対する倫理性、投与患者に対する安全性の面が解決されたといえる。FFPの使用無く、免疫細胞療法がさらに発展することにより、癌患者のQOL改善や難治性癌の克服が可能となり、臨床的に意義があるといえる。
ガイドライン等の開発
免疫細胞療法は、各施設独自の研究により行われているのが現状である。本研究を発展させることで、免疫細胞誘導のガイドラインを制定すれば、日本の細胞療法が統一され、さらに有効な細胞免疫療法の確立が可能になると思われる。日本バイオセラピィ学会では免疫療法のガイドライン作りが検討されており、本研究成果も参考に取り組む予定である。
その他行政的観点からの成果
調査した民間65施設で細胞療法の内容が確認できたのは40施設であった。そのうち、アンケート調査に回答したものは5施設と極めて少なかった。民間細胞療法施設に対するアンケート調査は回収率が極めて悪く(8%)アンケートに答えない民間施設の詳細を把握するためには、我々の調査では限界があり、行政主導の調査が必要であると考えられた。
その他のインパクト
第18回日本バイオセラピィ学会において、「エビデンスに基づいたバイオセラピィ」を特別企画として取り上げ、細胞免疫療法の現状と進むべき道について報告と討論がなされ、約400名の参加者に本研究の内容についても公開された。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
33件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
第18回日本バイオセラピィ学会において、「エビデンスに基づいたバイオセラピィ」を取り上げ、細胞免疫療法の現状と進むべき道について約400名の参加者に啓蒙した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
近藤浩史、硲 彰一、岡 正朗
癌免疫細胞療法における細胞誘導条件の検討
Biotherapy  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-