エイズ対策における関係機関の連携による予防対策の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200500700A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ対策における関係機関の連携による予防対策の効果に関する研究
課題番号
H15-エイズ-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
五島 真理為(特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院)
  • 秋山 裕由(南和歌山医療センター)
  • 尾澤 るみ子(箕面市立第一中学校)
  • 黒田 研二(大阪府立大学社会福祉学部)
  • 加藤哲夫(せんだい・みやぎNPOセンター)
  • 吉田香月(特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染防止、抗体検査とその事後指導、発症予防の1次から3次予防の各段階において、保健・医療・教育機関や専門団体等の既存社会サービスとNGOの諸機関の連携を進めるための指針を作成する。

研究方法
6年間の最終年度として、これまでの研究成果にもとづき、マニュアル・指針づくりを行った。
結果と考察
 感染者増加の防止という一次予防の課題としは、諸機関の連携による若者相互の予防と人権に関する啓発プログラムの効果判定をもとに教育段階別パッケージとしての連携マニュアルを作成し、その内容に従って小・中・高校で実施し、その評価を通じて、指針を作成した。二次予防としては、A拠点病院における自主的なプレ・ポストカウンセリングによるHIV抗体検査(VCT)の利用者を対象とする調査と、方法論についての検討を通じてマニュアルを実地に適用し、その評価を通じて連携指針を作成した。三次予防の発症予防とQOL確保にかんしては、これまでの歯科診療所調査で明らかになった受入れ阻害要因としての医療者側の知識、認識不足を補うために研修パッケージを作成し、それに基づく研修プログラムを歯科診療所従事者を対象として実施したうえで、参加者を含めたワークショップを通じて、歯科診療室におけるHIV感染者受入れ指針を作成した。
結論
 本研究においては、保健所の全数調査を通じてNGOに関する周知や活用が進み、若者相互の予防啓発プログラムを通じて、地域の保健所・学校・NGOの連携や具体的な活動がひろがるなど、研究過程そのものが、事業の連携を構築することにも結びついた。また、感染者の訪問聞き取り調査や事業主体と利用者の調査、実際の事業への介入研究を通じて、拠点病院や医療機関との連携が図られたり、歯科医師の調査結果が直ちに厚生行政における政策や指導に結びつくなど、事業に直結し得るところに特色があった。
 また、いずれの課題についても、NGOと諸機関との連携をもとにした実際の取り組みを背景にしたマニュアルの活用を試みた。感染者の歯科治療受入れ状況を示した前年度本研究班報告は厚生労働省医政局・健康局課長通知(2005/5/6)の根拠とされ、日本歯科医師会・都道府県等における、HIV感染者の歯科診療受入れの促進ならびに診療室における感染予防対策の周知徹底をうながすこととなった。
 本年度に開発された指針が、研修マニュアルとあわせて活用され効果をあげることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200500700B
報告書区分
総合
研究課題名
エイズ対策における関係機関の連携による予防対策の効果に関する研究
課題番号
H15-エイズ-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
五島 真理為(特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院)
  • 黒田 研二 (大阪府立大学 社会福祉学部)
  • 中瀬 克己(岡山市保健所)
  • 秋山 裕由(南和歌山医療センター)
  • 尾澤 るみ子(箕面市立第一中学校)
  • 伊藤 葉子(中京大学 社会学部)
  • 加藤 哲夫(せんだい・みやぎNPOセンター)
  • 吉田 香月(HIVと人権・情報センター感染者会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染防止(一次予防)、抗体検査とその事後指導(二次予防)、発症予防と感染者のQOL向上(三次予防)というエイズ対策の各段階における諸機関の連携を進める指針を作成する。
研究方法
(1)全国都道府県主管部局・保健所を対象とする対策の現状とNGOとの連携に関する郵送調査。若者相互の予防啓発プログラム(YYSP)の、講演との啓発効果の比較および参加者11,711人の知識、認識、行動変容への姿勢の事前・事後の比較
(2)A拠点病院におけるVCT利用妊婦575人を対象とする認識、行動変容への姿勢に関する調査
(3)全国の歯科診療所500箇所と病院300箇所を対象とするHIV感染者の受入れ及び阻害要因などに関する郵送調査
(4)これらの調査をもとにした現状分析の上で連携のための指針・マニュアルの作成
結果と考察
(1)行政機関の8割以上が社会資源としてAIDS/NGO活用に期待を示したが、現状は講師派遣・物品購入等が多く、本質的な連携は普及していない。NGOとの連携有無が対策に影響することが示唆された。YYSPは講演と比べて知識の完全正解率、事前・事後の認識・行動変容に関する変化が顕著であった。50人以下の小規模実施群で行動変容の可能性が多く、知識の習得率は中学生で特に高かった。A県モデルでは生徒の自発的なエイズ啓発活動が進み、人材育成・啓発・感染者支援や事業の企画・運営等の促進が図られ、他地区への波及の可能性が示唆された。
(2) VCT利用妊婦の69%がパートナーに抗体検査を勧める意思表示など、行動変容をともなう意識変化が見られた。①病院・県カウンセラー・医療スタッフの連携、②管理者と臨床検査技師の積極性、③NGOによる担当者の研修が事業実施要因として確認された。
(3)27%の歯科医師がHIV陽性者の診療を「原則として断る」と回答し、肝炎ウイルス感染者の場合(1%)との格差がみられたが、人権に配慮した歯科診療受入れ促進には歯科診療室における最新の感染防御に関する知見の普及と、行動変容を伴う研修システムの開発・普及、および感染症に対する一般の啓発が重要であることが示唆された。
結論
AIDS啓発、抗体検査プレ・ポストカウンセリング、口腔保健管理等に関する7点のマニュアルやハンドブックを発行し、感染者200名以上のケアサポートに活用した。本研究の成果である指針とマニュアル等が今後のエイズ予防に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500700C

成果

専門的・学術的観点からの成果
諸機関が連携して実施する事業効果について分析した。感染拡大の防止(一次予防)では11,711人を対象とする若者相互の予防啓発プログラム(YYSP)の事業評価を通じて、参加者の認識や行動への効果を確認した。また二次予防として、妊婦を対照とするカウンセリングを伴う即日抗体検査事業とその行動変容における効果について研究した。発症予防と感染者のQOL向上(三次予防)に深くかかわる歯科診療に対する診療所・病院の姿勢の現状とその背景についても分析した。
臨床的観点からの成果
感染防止から感染者支援までを包括した組みの方法を開発し実施効果を確認した。約3万人を対象に実施した若者相互の予防啓発プログラム(YYSP)は知識・認識の変化、自尊感情や感染者との共生など行動変容の効果が得られ、学校・保健所の連携による教育段階別パッケージにもとづく小中高校での実施も、集団的な啓発効果が確認された。NGO・病院・保健所の連携のもと約800名を対象に実施した妊婦検査は、性行動の変容やパートナーへの検査勧奨などの効果があった。また、歯科医師の行動変容にむけて研修システム開発した。
ガイドライン等の開発
以下のマニュアルを作成した。①若者による若者の啓発プログラムのマニュアル、②諸機関連携によるAIDS啓発マニュアルと事例集、③障害者のための啓発マニュアル、④妊婦検診プレ・ポストカウンセリングマニュアル、⑤プライバシー研修マニュアル、⑥栄養支援マニュアル英語版、⑦口腔保健管理マニュアル(和文版、英語版)。また、学校・保健所・NGOの連携指針、自主的なプレ・ポストカウンセリングによるHIV抗体検査(VCT)における連携指針、歯科診療室におけるHIV感染者受入れ指針を作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究事業を通じて地域の保健所・学校・NGOの連携や具体的な活動がひろがるなど、研究過程そのものが、事業の連携の構築に結びついた。また事業主体と利用者の調査、事業への介入研究を通じて、拠点病院や医療機関との連携が図られたり、作成したマニュアルが実際の取り組みに活用された。歯科医師の調査結果は厚生労働省医政局・健康局課長通知(2005/5/6)の根拠とされ、直ちに厚生行政における感染者の歯科治療受入れ政策や指導に結びついた。
その他のインパクト
HIV感染者の歯科治療や口腔保健管理に関する調査結果は、朝日、読売はじめ共同通信を通じた地方紙でもとりあげられるなど、マスコミを通じて、国民や専門家の関心を惹起した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
170件
研究成果をもとに厚生労働省の課長通知が都道府県・歯科医師会に対して行われた。平成17年度には25,878人を対象として研修・講演など啓発事業を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
稲田浩平、新庄文明、五島真理為 他
歯科診療所におけるHIV陽性者の診療受入れ姿勢と関連する要因 
日本口腔衛生学会雑誌 , 56 (4)  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-