性感染症の効果的な蔓延防止に関する研究

文献情報

文献番号
200500669A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症の効果的な蔓延防止に関する研究
課題番号
H15-新興-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 川名 尚(帝京大学医学部溝口病院産婦人科)
  • 本田まりこ(東京慈恵会医科大学皮膚科)
  • 野口昌良(愛知医科大学産婦人科教室)
  • 塚本泰司(札幌医科大学泌尿器科)
  • 田中正利(福岡大学医学部泌尿器科)
  • 松本哲朗(産業医科大学泌尿器科)
  • 松田静治((財)性の健康医学財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)性器クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス尖圭コンジローマなどの性感染症における
無症候感染者の実態調査を行い、その結果に基づいた性感染症の蔓延防止策を構築する。
2)薬剤耐性淋菌のサーベイランスを継続する。
3)性器ヘルペス、尖圭コンジローマの迅速で精度が高い検査法を開発する。
4)「性の健康メール相談」を通してSTD/HIV感染について適正な知識の普及、啓発を行い効果的な
性感染症の蔓延防止策に貢献する。
研究方法
1)無症候感染者のスクリーニングと若年者における性行動への予防介入を行うため、健康男性ボ
ランティア、高校生及び各種学校での受付、イベント時に募集した検診者を対象として無症候
の性感染症の実態調査を行う。
2)薬剤耐性淋菌のサーベイランス継続し淋菌の咽頭感染の治療法を開発する。
3)性器ヘルペス、尖圭コンジローマの診断法としてLAMP法、PCR法の開発をする。
結果と考察
1)無症候の性感染症感染者の大規模スクリーニングの結果、無症候の性器クラミジアの陽性率は
 16-18歳の女子で最も高く、20歳を過ぎると低くなる傾向がみられ、男子では18歳以上が8%と最も 高かった。これらの結果から性感染症の予防対策は感染防止の認識が低く医療へのアクセスがし にくい高校生を第一の対象に行うべきと考えられた。
2)薬剤耐性淋菌の継続的なサーベイランスの結果、キノロン耐性淋菌は80%近くに達していた。淋
 菌の咽頭感染に対しては、CTRX 1gの単回投与の除菌率が高かった。
3)性器ヘルペスの診断法として、LAMP法とReal-time PCR法は分離培養法と同等の感度が得られ
 た。尖圭コンジローマの診断でもLAMP法の感度、特異度ともPCR法と同等であった。
結論
 若年者における性感染症の予防対策は、高校生を蔓延防止の第一の対象とするべきであり、より早期の段階からの感染予防の教育を実施することが重要である。20歳代前半の若者に対しては、自己採取と郵送による性器クラミジアの病原体検査を導入し、早期発見から治療に結び付けられるよう、医療への連携を具体的に行うことが必要である。また、当事者である若者の視点を取り入れた啓発活動を行うことが重要である。無症候の淋菌の咽頭感染には、咽頭由来の淋菌の除菌効果が高いCTRX 1gの単回投与をガイドラインなどを通して推奨する必要がある。性器ヘルペス、尖圭コンジローマに関する迅速かつ簡便な診断法として、LAMP法やReal-time PCR法の診断精度、特異度が優れている結果が得られその臨床応用が可能と思われた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200500669B
報告書区分
総合
研究課題名
性感染症の効果的な蔓延防止に関する研究
課題番号
H15-新興-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 川名 尚(帝京大学医学部溝口病院産婦人科)
  • 本田まりこ(東京慈恵会医科大学皮膚科)
  • 野口昌良(愛知医科大学産婦人科)
  • 塚本泰司(札幌医科大学泌尿器科)
  • 田中正利(福岡大学医学部泌尿器科)
  • 松本哲朗(産業医科大学泌尿器科)
  • 松田静治((財)性の健康医学財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)性器クラミジア感染症,淋菌感染症の無症候感染者の実態調査を行い,その結果に基づいた性感染症の効果的な蔓延防止策を構築する。
2)薬剤耐性淋菌のサーベイランスを継続し適切な治療法を確立する。
3)性器ヘルペス,尖圭コンジローマの迅速かつ簡便な検査法を開発する。
4)「性の健康メール相談」を通してSTD/HIV感染に対する適正な知識の普及・啓発を行う。
研究方法
1)高校の男女生徒(6000人規模),若年の男子成人ボランティア(200名),専門学校や大学などで募集した受検者や産婦人科の思春期相談受診者800名,若者向けのイベントで検査に協力が得られた600名などを対象として無症候の性器クラミジア陽性率と性感染症に関する質問紙調査を行った。
2)淋菌の薬剤感受性の推移と淋菌の咽頭感染に対するCDZM,CTRXの治療効果について評価した。
3)性器ヘルペス患者から採取した検体を用いて,分離培養法,LAMP法,Real-time PCR法の感度について比較し,尖圭コンジローマではHPV-6,11型など新たなプライマーを設計しLAMP法の感度・特異度について検討した。
結果と考察
1)高校の男女生徒の無症候のクラミジア陽性率は平均10%であったが,16歳の女子で17%と最も高く、産婦人科での受付(12-19歳女子)でも17%と高かった。一方,大学などでの受付やイベントでの調査では男女とも5-6%の陽性率であった。質問紙調査ではコンドームを使わない傾向や若者が検査を受ける機会も少なかったことから,早期の段階からの性感染症教育と検体の自己採取・郵送による検査の導入が必要と思われた。
2)キノロン耐性淋菌は80%に達していたが,咽頭の淋菌に対してはCTRX1gの単回投与が有効であった。
3)性器ヘルペスの診断法としてLAMP法,Real-time PCR法ともHSV-1,2型の診断が可能で,尖圭コンジローマではLAMP法の感度・特異度が優れており臨床応用が可能と思われた。
結論
1)無症状の段階での性器クラミジア感染症を蔓延させないために以下の提言を行う。(1)対策の焦点を感染防止の知識が低く、医療機関へのアクセスがしにくい高校生に当てる(2)中学生から性感染症の予防教育を行う(3)同定された危険因子に基づいた対策を実施する(4)性感染症の病原体検査によるスクリーニングを推進する(5)公衆衛生上の予防対策と治療を連携させる。
2)薬剤耐性淋菌に対する治療法としてCTRX1gの単回投与を推奨する。
3)性器ヘルペス,尖圭コンジローマの診断法として,LAMP法,PCR法の商業検査への導入を検討する。

公開日・更新日

公開日
2006-04-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500669C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)これまで実態が把握できていなかったわが国における無症候の性器クラミジア感染症の実態が明らかになり、今後の蔓延防止策の構築に貢献できる。
2)咽頭の淋菌感染の実態と、その対策として現時点での適切な治療法を明らかにした。
3)性器ヘルペス、尖圭コンジローマの迅速で精度が高い診断法を開発した。
臨床的観点からの成果
1)無症候の性感染症患者に関する調査を基に、今後の効果的な性感染症の蔓延予防策に対する提言を行うことができた。
2)咽頭の淋菌感染に対する治療法が明らかになったことより、この結果をガイドラインに反映できる。
3)性器ヘルペス、尖圭コンジローマに対する新たな診断法は臨床応用が可能である。
ガイドライン等の開発
薬剤耐性淋菌感染症および淋菌の咽頭感染の治療法に関する研究結果は、今年度に行われる、日本性感染症学会の「性感染症 診断・治療ガイドライン 2006」の改正の参考資料として使用される。
その他行政的観点からの成果
「性感染症に関する特定感染症予防指針」の改正のための審議会(17,6月20日:第2回厚生科学審議会感染症分科会 エイズ・性感染症ワーキンググループ,17,8月24日:第7回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会)において、われわれの研究班で行った無症候感染者の実態調査データ及び性感染症およびHIV感染症に関する「特定感染症予防指針」に基づく取り組み状況のアンケート調査結果が議論のたたき台となった。
その他のインパクト
17年7月25日の朝日新聞朝刊で「増える淋病・クラミジア」というタイトルでわれわれが代々木公園のイベントで行った、若者を対象としたスクリーニングが紹介された。また、TBSテレビの報道番組(17年1月27日放送)でも、「医療新世代②,待ったなし、中高生の性感染症対策」として、同様の無症候感染者のスクリーニングが取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
28件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小野寺昭一
無症候性性感染症の現状
化学療法の領域 , 21 (8) , 70-74  (2005)
原著論文2
小野寺昭一
わが国における性感染症の蔓延をいかに防止すべきか
感染制御 , 1 (3) , 228-232  (2005)
原著論文3
小野寺昭一
性感染症の予防と将来
Urlogy View , 13 (1) , 93-97  (2005)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-