動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
200500651A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策に関する研究
課題番号
H15-新興-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 正男(酪農学園大学 環境システム学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川中正憲(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 高倉 彰(実験動物中央研究所)
  • 渡辺純一(東京大学 医科学研究所)
  • 奥祐三郎(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エキノコックス症の流行地拡大が懸念されている。飼い犬も人の感染源となり、流行地拡大に関与する危険性が高い。まず、北海道の主たる感染源であるキツネの流行を抑えること、また、ペットにおける診断法の改善と感染状況の把握、さらに今後の対策を立てることを目的とした。
研究方法
感染源(キツネ)対策のため、ベイト(駆虫剤入り蒲鉾)散布法を北海道の住民が実施できるように技術移転を試みた。また、都市周辺の山間部におけるベイト散布法を検討するために小樽市近郊で調査を継続した。札幌市における感染リスクの評価のため、野幌森林公園においてキツネ糞便を対象に地理情報システムを活用して、虫卵汚染状況を調べた。流行状況推測のために多包条虫伝播の数理モデルを深度化した。多包条虫流行状況の確認のために北海道と本州におけるペットの調査を継続した。ペットの診断キット(ICG)の開発を継続し、また、虫卵排泄前におけるDNA診断を試みた。カザフスタンおよび中国青海省でエキノコックス感染状況を調査した。アライグマ回虫の調査を継続し、回虫卵の鑑別法を開発した。
結果と考察
小清水町と倶知安町で地域住民に技術移転が可能であった。小樽市では本年ベイト散布を行わなかったが、感染率の上昇は認められなかった。野幌森林公園では虫卵汚染の季節変動と地域差について明らかとなった。数理モデルではキツネのIndividual model化を行い、伝播ストカスティック数理モデルを構築した。北海道のペット検査で2頭の感染犬が発見されたが、依頼検査頭数の減少が見られ、さらなる普及活動が必要と考えられた。東北のペットの継続検査では感染動物は発見されなかったが、埼玉県で感染例が発見され、本症拡大阻止の有効な手立ての必要性が強く認識された。インハウス診断キットのICG法を改良するとともに診断薬申請の準備を開始した。虫卵排泄前の糞便内DNAによる確認は可能であったが、さらに改善が必要であった。カザフスタンでは新たな多包条虫流行地、青海省でも重度浸淫地域を発見した。アライグマの糞便検査ではアライグマ回虫卵は発見できなかったが、タヌキ回虫の寄生が認められ、マルチプレックスPCR法による迅速鑑別法を開発した。
結論
多包条虫感染源対策として野生動物、主にキツネに対するベイト散布法とその評価法の有効性が示された。地域住民への技術移転は可能である。ペットについても北海道内と本州においても感染犬が発見され、北海道内のペットおよび道外へ移動に際する対策の普及(診断・駆虫)が必要ある。開発技術の海外流行地への普及で国際貢献が期待されている。

公開日・更新日

公開日
2006-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200500651B
報告書区分
総合
研究課題名
動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策に関する研究
課題番号
H15-新興-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 正男(酪農学園大学 環境システム学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川中正憲(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 嘉田良平(農林水産省 農林水産政策研究所 (UFJ総合研究所、現アミタ株式会社))
  • 高倉 彰(実験動物中央研究所)
  • 渡辺純一(東京大学 医科学研究所)
  • 奥祐三郎(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エキノコックス症の流行地拡大が懸念されている。飼い犬も人の感染源となり、流行地拡大に関与する危険性が高い。まず、北海道の主たる感染源であるキツネの流行を抑えること、また、ペットにおける診断法の改善と感染状況の把握、さらに今後の対策を立てることを目的とした。
研究方法
感染源対策のため、北海道でベイト(駆虫剤入り蒲鉾)散布法を地域住民が実施できるように技術移転を試み、また、都市周辺の山間部におけるベイト散布法も検討した。都市部における感染リスクの評価のため、札幌東北部と野幌森林公園で調査した。流行状況推測のために多包条虫伝播の数理モデルを構築し、深度化した。北海道と本州の多包条虫流行状況の確認のためにペットの調査を行った。ペットのインハウス迅速診断キットを開発し、また、虫卵排泄前におけるDNA診断を試みた。旋毛虫(トリヒナ)とアライグマ回虫の調査を継続し、回虫卵の鑑別法を開発した。
結果と考察
北海道において地域住民へのベイト散布法とその評価法の技術移転は可能と考えられた。小樽市周辺の山間部のベイト散布後に感染率の顕著な減少が認められた。仮想評価法を用いて、ベイト剤散布によりもたらされるリスク削減便益の経済評価を行い、住民の支払い意志額を調べた。札幌市の市街地周辺部や野幌森林公園内で多包条虫が伝播していることが示唆された。キツネにおける伝播ストカスティック数理モデルを構築した。北海道でのペット検査で犬から虫卵排泄例(約0.5%)が発見され、健康危険情報もしくは獣医師による届け出がなされ、犬のエキノコックス症対策ガイドラインを作成した。動物取扱業者により北海道外へ搬出される動物や東北・関東のペットの検査では感染動物は発見されなかったが、埼玉県の捕獲犬から感染例が発見され、本症拡大阻止のための対策の必要性が示された。インハウス迅速診断キット(ICG法)の開発がほぼ完了し、申請の準備を開始した。虫卵排泄前の糞便内DNAによる確認は可能であったが、さらに改善が必要であった。アライグマの糞便検査ではアライグマ回虫卵は発見できなかったが、タヌキ回虫の寄生が認められ、マルチプレックスPCR法による迅速鑑別法を開発した。
結論
エキノコックス(多包条虫)感染源対策としてのベイト散布法とその評価法の地域住民への技術移転から、その実用性が示された。ペットについても北海道内と本州においても感染犬が発見され、北海道内のペットおよび道外へ移動に際する対策の普及(診断・駆虫)が必要ある。開発された技術は海外における動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策にも期待されている。

公開日・更新日

公開日
2006-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500651C