高齢者における効果的な転倒予防活動事業の推進に関する研究

文献情報

文献番号
200500319A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における効果的な転倒予防活動事業の推進に関する研究
課題番号
H15-長寿-030
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
新野 直明(桜美林大学 大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 博(東北文化学園大 健康社会システム)
  • 安藤 富士子(長寿医療センター研究所 疫学)
  • 杉森 裕樹(聖マリアンナ医大 予防医学)
  • 江藤 真紀(名古屋大学 地域在宅看護)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,703,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
転倒予防活動を推進するための研究として、転倒予防活動事業の実態、必要なプログラム、人材、さらにその人材に求められる資質について調べるとともに、予防活動の新たな効果判定指標についても検討する。
研究方法
愛知県西枇杷島町(現、清須市)の転倒予防事業の内容や効果の検討を継続した。宮城県米山町における転倒予防推進リーダー活動が、身体・心理・社会的側面へ与える影響についての縦断的検討を、追跡期間を延長し継続した。愛知県豊田市、東京都中央区などで新たにプログラムを作り転倒予防教室を実施した。豊田市ではプログラムの効果を、コントロール群との比較から評価した。長寿医療センター研究所疫学研究部の「老化に関する長期縦断疫学調査」データから、転倒恐怖感による行動制限の関連要因を検討した。転倒予防プログラムの新たな医療経済的評価法としてThe Disability Adjusted Life Year(DALY)に注目し、日本の転倒のDALYを計算した。
結果と考察
西枇杷島町では、前年度までの調査を参考に転倒予防事業を展開した。保健師だけでなく参加者自身が体力や生活習慣を確認できるプログラムを採用し、好評であった。転倒予防推進リーダー活動は、約2年と追跡期間を延長しても、精神的健康、ライフスタイル、一日あたりの食品摂取数に対して好影響をもたらすことが示唆された。講義と運動からなる転倒予防教室のプログラムは、心理機能の改善に有用で、特に、運動ソーシャルサポートの低い高齢者に対しては顕著な効果があった。対象者にあわせたプログラムを開発することで効果が増すと期待される.転倒恐怖感による行動制限の関連要因としては、高齢、性別があり、性により関連要因に差異があった。恐怖感による行動制限の予防を考える際に配慮する必要がある。Australian Burden of Disease StudyのDALY詳細法を参考に計算したわが国の転倒・転落のDALYは188,636、人口10万人当たりでは147.7であった。この数値は転倒予防の保健行政面で貴重な情報になるだろう。
結論
転倒予防事業の実態、人材に関する資料、情報を収集し、転倒予防プログラムが心理機能に有効なこと、転倒恐怖による行動制限の関連要因を明らかにした。さらに、日本における転倒のDALYを試算し、転倒予防プログラムの医療経済効果評価に活用可能なことを示した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200500319B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者における効果的な転倒予防活動事業の推進に関する研究
課題番号
H15-長寿-030
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
新野 直明(桜美林大学 大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 博(東北文化学園大学 健康社会システム)
  • 安藤 冨士子(長寿医療センター研究所 疫学)
  • 杉森 裕樹(聖マリアンナ医大 予防医学)
  • 江藤 真紀(名古屋大学 地域在宅看護)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
効果的な転倒予防活動を進めるための研究として、転倒予防活動事業の実態、必要なプログラム、人材、さらにその人材に求められる資質について調べるとともに、医療経済的な効果評価についても検討を加えた。
研究方法
転倒予防事業の推進に必要な情報を収集するために、愛知県西枇杷島町(現、清須市)の転倒予防事業に関する詳細な実態調査、宮城県米山町の事業スタッフ(転倒予防推進リーダー)の特性についての研究、全国の自治体を対象とした郵送実態調査を実施した。また、転倒予防教室を実施し、一部地域ではコントロール群との比較からプログラムの効果評価をした。転倒予防に有効な心理的アプローチに関する研究として、長寿医療センター研究所疫学研究部の「老化に関する長期縦断疫学調査」データから、転倒恐怖感とそれによる行動制限の関連要因を調べた。転倒予防プログラムの医療経済効果評価に関する検討をおこない、新しい評価法として、疾病が健康状態に与える損失を考慮したThe Disability Adjusted Life Year(DALY)について検討した。
結果と考察
3年間の西枇杷島町の調査では、地域の転倒予防事業の具体像が得られた。米山町の調査からは、転倒予防推進リーダーのような高齢者は地域の介護予防の担い手として重要であり、その活動は、高齢者に心理面、社会面で好影響をもたらすことが示唆された。全国郵送調査では、転倒予防事業の内容は、「講話」と「体操」が圧倒的に多く、効果評価をする市町村では、「講話」、「筋力トレーニング」、「体操」、「歩き方教室」を有効とするところが多かった。豊田市の調査では、講義と運動からなる転倒予防プログラムは、心理機能の改善に有用で、特に、運動ソーシャルサポートの低い高齢者に対しては顕著な効果があり、対象者の特性に合わせたプログラムの重要性が示唆された。転倒恐怖感とそれによる行動制限には、高齢、性が強く関係し、男女特有の要因を考慮に入れた介入が重要と考えられた。国内外における転倒のDALYを計算した。DALYは、他の疾患と同じ土俵で比較が可能であり、保健行政面、医療経済面で有用な指標と期待される。
結論
転倒予防事業の実態、人材に関する資料、情報を収集し、効果的なプログラム、心理的アプローチの考案に有用な結果を得た。転倒予防プログラムの医療経済効果にも着目し、評価法としてDALYの活用が可能なことを示した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500319C

成果

専門的・学術的観点からの成果
複数地域の実地調査と全国郵送調査から、転倒予防事業の実態について詳細な情報を得た。事業に必要な人材について、高齢者の中の事業推進者の特性などを明らかにした。事業効果の科学的な分析をおこない心理面での効用を示した。転倒予防に必要な心理的アプローチについても調べた。また、医療経済面にも注目した新たな効果評価法の利用可能性を示した。以上は、新たな転倒予防活動事業の実施に、あるいは、既存の事業内容の修正に有用な情報であり、転倒予防活動事業の普及・推進に貢献すると期待される。
臨床的観点からの成果
講義と運動からなる転倒予防プログラムは、心理機能の改善に有用で、特に、運動ソーシャルサポートの低い高齢者に対しては顕著な効果があり、臨床的効果のある事業の実施には、対象者の特性に合わせたプログラムの重要性が示唆された。
転倒恐怖感の発生要因を調べ、女性、高年代が、さらに,男性では主観的健康感不良、転倒,入院経験が,女性では骨折経験が危険要因となることを示した。恐怖感による行動制限についても同様の分析をした。いじょうは、転倒予防に必要な心理的アプローチを構築する際に有用であろう。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
転倒予防事業の実態に関する調査は、自治体の転倒予防事業の一部なった(愛知県西枇杷島町、宮城県米山町など)。また、実地調査、郵送調査の結果は、地域の転倒予防事業を新規に、あるいは、継続して展開する際のプログラム作成などに利用された(愛知県西枇杷島町、豊田市など)。
その他のインパクト
市民講座、大学の公開講座などで、研究結果を利用した発表をおこなった(愛知県西枇杷島町、愛知県豊田市、埼玉県さいたま市、桜美林大学大学院)。
研究結果の一部を示す動画を、看護ネットのホームページにアップした。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
西枇杷島町老人大学、豊田市転倒予防講演会、さいたま市市民講座、桜美林大学大学院公開講座、豊田市転倒予防教室、聖路加老年看護転倒予防教室、看護ネット(http://www.kango-net.jp/)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
新野直明
高齢者の転倒予防活動事業に関する全国調査
日本未病システム学会雑誌 , 10 (1) , 94-96  (2004)
原著論文2
西田裕紀子、新野直明、小笠原仁美、他
地域在住高年者の転倒恐怖感に関連する要因の検討
日本未病システム学会雑誌 , 10 (1) , 97-99  (2004)
原著論文3
島貫秀樹、植木章三、伊藤常久、他
転倒予防活動事業における高齢推進リーダーの特性に関する研究
日本公衆衛生雑誌 , 52 (9) , 802-808  (2005)
原著論文4
小笠原仁美、新野直明、安藤富士子、他
中年期地域住民における転倒の発生状況
保健の科学 , 47 , 301-305  (2005)
原著論文5
Kozakai R.,Doyo W. ,Tsuzuku S.,et al
Relationships of muscle strength and power with leisure-time physical activity and adolescent exercise in middle-aged and elderly Japanese women
Geriatrics and Gerontology International , 5 , 182-188  (2005)
原著論文6
小坂井留美,道用亘,安藤富士子、他
中高年者における余暇身体活動および青春期の運動経験と骨密度との関連
総合保健体育科学 , 28 (1) , 1-7  (2005)
原著論文7
道用亘,小坂井留美,安藤富士子,他
中高年者における歩行動作の特徴
総合保健体育科学 , 28 (1) , 37-45  (2005)
原著論文8
西田裕紀子,新野直明,小笠原仁美,他
地域在住中高年者における転倒恐怖感の要因に関する縦断的検討.
日本未病システム学会雑誌 , 11 (1) , 101-103  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-