高齢者の脳機能障害解明とリハビリテーションに関する研究

文献情報

文献番号
200500317A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の脳機能障害解明とリハビリテーションに関する研究
課題番号
H15-長寿-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西谷 信之(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山脇成人(大学院医歯薬学総合研究科)
  • 伊藤和幸(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳機能の老化と障害の病態評価と情報処理機構の解明に基づき、意欲の向上・自主性の回復のための脳賦活の手法を確立し、高齢機能障害者のリハビリテーションの効率を高める。
研究方法
1)脳統御機構の解明研究では、模倣による機能訓練用にペン型触覚刺激装置を新たに作成し、306チャンネル全頭型MEGを用いて、刺激の模倣と脳賦活の関係を明らかにした。
2)脳血管性うつ病(VD)の病態解明と脳賦活法の研究では、老年期うつ病の病相回数と脳機能障害、脳卒中後うつ病と認知リハrリテーション、脳卒中患者の高次脳機能障害と抑うつにおけるそれぞれの関連について明らかにした。3)機器開発研究では、認知弁別機能の評価のために、両手3指ずつ計6指への刺激が可能な指触覚刺激装置を開発した。(倫理ハへの配慮)ヘルシンキ宣言(2000年改訂版)、日本神経科学学会「ヒト脳機能の非侵襲的研究」の倫理問題に関する指針、所属機関の生物医学研究倫理規程に従い、またインフォームドコンセントを徹底し実施した。
結果と考察
1)模倣による機能訓練用にペン型触覚刺激装置を新たに作成し、指触覚刺激装置とを用いて、刺激の模倣の訓練への導入が脳賦活に効果的であることを明らかにした。脳賦活によるリハビリテーションの一手法として、また中枢神経機能障害者や高齢者の機能回復・機能賦活に模倣が有効である事を示唆するものである。2)老年期うつ病の病相回数と脳機能障害、脳卒中後うつ病とリハ、脳卒中患者の高次脳機能障害と抑うつ、脳卒中後うつ病患者に対する認知的リハ、脳卒中後患者の障害受容とリハに関して明らかにした。脳卒中に伴う脳機能障害が抑うつ症状に影響を与え、前帯状回等の機能を活性化させることが、抑うつ傾向を改善させ、認知リハによる機能回復にとって重要であり、VD患者の長期予後の改善に繋がると考えられた。3)認知弁別機能の評価のために、両手3指ずつ計6指への刺激が可能な指触覚刺激装置を開発した。これらは高齢障害者が自ら操作を行い得る利便な脳賦活・機能訓練用装置と考えられる。
結論
本研究事業の結果から、簡便な体性感覚刺激や前頭葉機能の賦活課題は、中枢神経機能障害者や高齢者の機能回復・機能賦活に有効であり、模倣の導入は、高齢脳機能障害者自身の「主体性の回復」と機能回復を促進する認知リハの手法の確立と効率向上に貢献すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200500317B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の脳機能障害解明とリハビリテーションに関する研究
課題番号
H15-長寿-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西谷 信之(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山脇成人(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 伊藤和幸(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳機能の老化と障害の病態評価と情報処理機構の非侵襲的解明に基づき、脳賦活の手法を確立し、高齢機能障害者のリハの効率を高め、高齢脳機能障害者自身の「主体性の回復」と社会復帰の促進を図ることを目的とした。
研究方法
脳機能解明・賦活研究では、脳波・脳磁場・fMRI、症状調査および認知・うつ状態機能評価スケール等を用いて行った。脳機能賦活機器開発研究では、視聴覚障害や脳機能障害による麻痺等においても感覚入力が可能な、触覚刺激装置の開発・改良を行い、脳活動賦活刺激装置として提供した。(倫理面への配慮)ヘルシンキ宣言(2000年改訂版)、日本神経科学学会「ヒト脳機能の非侵襲的研究」の倫理問題に関する指針、所属機関の生物医学研究倫理規程に従い、またインフォームドコンセントを徹底し実施した。
結果と考察
ヒト脳感覚運動統御機構の解明研究では、健常者および模倣障害を示す障害者を対象に、新たに開発した触覚刺激装置を用いて、脳磁場により感覚運動統御機構および認知弁別機能を解明し、脳機能の賦活と認知機能の非侵襲的評価に、皮膚触覚刺激が有用であることを示した。触覚刺激の模倣を課題とした場合に、体性感覚野・感覚運動連合野等の脳部位の活動が増強することを示し、模倣が脳賦活によるリハの手法として有効であると考えられた。脳血管性うつ病の病態解明と脳賦活法の研究では、VDと遂行機能や注意機能との関係から、VDに対する認知リハ施行の可能性の理論的根拠を示した。VDではうつ病自体の長期的予後が悪く、持続的な器質性の認知障害をきたしやすいこと、うつ傾向の改善が認知リハによる脳機能回復に重要であり、前頭葉機能の障害がVD患者の持続的な認知機能障害や痴呆への進展に関連していると考えられた。脳賦活機器の開発に関する研究では、従来の触覚ディスプレイ装置を改良し、ミリ秒レベルで様々な刺激様式の呈示や、認知機能評価が可能な触覚刺激装置の開発を行った。高齢者の脳機能障害解明と認知リハにむけた脳賦活機器の一つのモデルとなると考えられた。
結論
本研究事業の結果は、中枢神経機能障害者や高齢者の機能回復・機能賦活において、簡便な体性感覚刺激や、前頭葉機能、特に注意機能や実行機能の賦活課題の有効性を示唆し、高齢脳機能障害者自身の「主体性の回復」と機能回復を促進する認知リハの手法の確立と効率向上に貢献するものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500317C