老年症候群に関与する脳皮質下虚血病変の危険因子解明に関する縦断研究

文献情報

文献番号
200500280A
報告書区分
総括
研究課題名
老年症候群に関与する脳皮質下虚血病変の危険因子解明に関する縦断研究
課題番号
H15-長寿-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(杏林大学医学部高齢医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 森本 茂人(金沢医科大学・老年病学)
  • 岩本 俊彦(東京医科大学・老年病学)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科発育・加齢医学講座(老年科学))
  • 西永 正典(高知大学医学部老年病・循環器・神経内科学・老年医学)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部高齢医学教室)
  • 土屋 一洋(杏林大学医学部放射線医学教室)
  • 勝谷 友宏(大阪大学大学院医学系研究科・老年・腎臓内科学)
  • 長野宏一朗(東京大学医学部付属病院・医療社会福祉部)
  • 武地  一(京都大学医学部医学研究科・加齢医学)
  • 横手幸太郎(千葉大学医学部附属病院・糖尿病代謝内分泌内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,021,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
後期高齢者では70%以上の高頻度で出現する脳皮質下虚血病変は、老年症候群と密接な関連が示唆されているが、大血管障害のような危険因子や、遺伝的負荷素因は殆ど解明されていない。 当研究はこの解明のため、MRIによる脳皮質下虚血病変と老年症候群、ADLや認知機能などの生活関連機能を解析する。
研究方法
外来及び地域多数症例において、MRIによる脳皮質下虚血病変(外来、入院のみ)と老年症候群、ADLや認知機能などの生活関連機能評価を記録し、これらを従属変数として、老化関連因子である高血圧・動脈硬化・酸化ストレス・痴呆関連の遺伝子多型や、液性因子の関与を解析する。 
結果と考察
幻覚、妄想、歩行障害、つまづき、頻尿、尿失禁、嚥下障害が、PVHとDHMHの共通の老年症候群として初めて明らかにされた。 DWMHでは、非特異的な自律神経消化器症状が多く合併した。 早朝覚醒、睡眠時無呼吸、認知機能障害とPVHの関連がはじめて定量的に明らかになったが、認知機能との関連では、PVHとDHMHは、認知機能(MMSE)悪化の独立した危険因子であることが明らかになった。 意欲との関連でも、PVHとDHMHは、意欲(Vitality Index)悪化の独立した危険因子であることが明らかになった。
 遺伝子多形との関連では、従来の動脈硬化や高血圧の危険因子とされている遺伝多形の一部に関連する可能性は残るものの、逆の結果も得られており、全く別の機序も考慮する可能性もある。
結論
*{研究により、老年症候群の新しい危険因子が解明され、遺伝子多型を考慮した薬物療法、栄養療法や運動療法による介入によって改善可能な病変として捉えられる可能性が大きいが、介入研究は今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200500280B
報告書区分
総合
研究課題名
老年症候群に関与する脳皮質下虚血病変の危険因子解明に関する縦断研究
課題番号
H15-長寿-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(杏林大学医学部高齢医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 森本 茂人(金沢医科大学・老年病学)
  • 岩本 俊彦(東京医科大学・老年病学)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科発育・加齢医学講座(老年科学))
  • 西永 正典(高知大学医学部老年病・循環器・神経内科学・老年医学)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部高齢医学教室)
  • 土屋 一洋(杏林大学医学部放射線医学教室)
  • 勝谷 友宏(大阪大学大学院医学系研究科・老年・腎臓内科学)
  • 長野 宏一朗(東京大学医学部付属病院・医療社会福祉部)
  • 武地  一(京都大学医学部医学研究科・加齢医学)
  • 横手 幸太郎(千葉大学医学部附属病院・糖尿病代謝内分泌内科)
  • 岩崎 剛(東北大学病院老年・呼吸器内科)
  • 秋下 雅弘(東京大学大学院医学研究科・加齢医学講座・老年医学)
  • 荒井 啓行(東北大学病院老年・呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近、認知機能障害の進展に血管因子の重要性が指摘されている。 なかでも、後期高齢者では70%以上の高頻度で出現する脳皮質下虚血病変は、老年症候群と密接な関連が示唆されているが、大血管障害のような危険因子や、遺伝的負荷素因は殆ど解明されていない。 当研究はこの解明のため、外来及び入院症例において、MRIによる脳皮質下虚血病変と老年症候群、ADLや認知機能などの生活関連機能評価を解析する。
研究方法
MRIによる脳皮質下虚血病変と老年症候群、ADLや認知機能などの生活関連機能評価を横断調査(1年目)及び縦断的に記録し(2、3年目)、これらを従属変数として、老化関連因子である高血圧・動脈硬化・酸化ストレス・痴呆関連の遺伝子多型や、液性因子の関与を解析する。
結果と考察
睡眠時無呼吸と脳室周囲透亮像の密接な関連やアルツハイマー型痴呆においても白質病変は精神運動速度に強く関与している成績を得た。また、老年症候群との関連において幻覚、妄想、歩行障害、つまづき、頻尿、尿失禁、嚥下障害が、PVHとDHMHの共通の老年症候群として初めて明らかにされた。 また、、PVHでは転倒、体重減少、無気力、振戦、固縮などパーキンソン症状がDWMHでは、パーキンソン症状は呈さず、非特異的な自律神経症状で、加齢に伴い高頻度に合併する消化器症状が多く合併するという結果を得た。 認知機能との関連では、既存の動脈硬化因子を加味し、年齢、性を考慮にいれても、PVHとDHMHは、認知機能(MMSE)悪化の独立した危険因子であることが明らかになった。 従来の動脈硬化の危険因子では、白質病変の危険因子としては、年齢以外にの因子は重要性が低かった。 遺伝子多型では、動脈硬化の危険因子はかならずしも皮質下病変の危険因子ではなかった。 
結論
老年症候群との関連において幻覚、妄想、歩行障害、つまづき、頻尿、尿失禁、嚥下障害が、PVHとDHMHの共通の老年症候群として初めて明らかにされた。
遺伝子多型発現頻度はより多数の日本人集団と変わらず(勝谷)、今回の集団は特異な集団ではなく、従来の動脈硬化や高血圧の危険因子と、PVH、DWMHの危険因子は必ずしも一致しないことが示唆される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500280C

成果

専門的・学術的観点からの成果
幻覚、妄想、歩行障害、つまづき、頻尿、尿失禁、嚥下障害が、PVHとDHMHの共通の老年症候群として初めて明らかにされた。 また、DWMHでは、パーキンソン症状は呈さず、非特異的な自律神経症状で、加齢に伴い高頻度に合併する消化器症状が多く合併するという結果を得た。
遺伝子多形との関連では、従来の動脈硬化や高血圧の危険因子とされている遺伝多形の一部に関連する可能性は残るものの、逆の結果も得られており、全く別の機序も考慮する可能性もある。
臨床的観点からの成果
画像解析に時間がかかることについて、頭部MRIのFLAIR像やT2強調像での脳内びまん性高信号域を半自動的に定量診断するソフトを開発済みで、班員において臨床例で動作検証と症例収集を行う予定である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
脳血管障害でも、廃用症候群といわれる痴呆、うつ、歩行障害、転倒、頻尿など重要な老年症候群の悪化因子に皮質下虚血病変が関与している可能性が示された。
その他のインパクト
2006年日本老年医学会(金沢)で、「皮質下虚血病変」に関するシンポジウムを班員によって開催することが決定している。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
68件
その他論文(和文)
31件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
34件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
2006年シンポジウム(金沢)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Toshihiko Iwamoto, Daisuke Watanabe, Takahiko Umahara,et al.
Dual inverse effects of lipoprotein(a) on the dementia process in Japanese late-onset Alzheimer's disease
PSYCHOGERIATRICS , 2004 (4) , 64-71  (2004)
原著論文2
Nishinaga M, Takata J, Okumiya K,et al.
High Morning Home Blood Pressure Is Asasociated with a Loss of Functional Independence in the Community-Dwelling Elderly Aged 75 Years or Older
Hypertens Res , 2005 (28) , 657-663  (2005)
原著論文3
Kubo T, Kitaoka H, Okawa M, Matsumura Y,et al.
Lifelong left ventricular remodeling of hypertrophic cardiomyopathy caused by a founder frameshift deletion mutation in the cardiac Myosin-binding protein C gene among Japanese
J Am Coll Cardiol , 46 (9) , 1737-1743  (2005)
原著論文4
Kobayashi K, Yokote K, Fujimoto M,et al.
Targeted disruption of TGF-β-Smad3 signaling leads to enhanced neointimal hyperplasia with diminished matrix deposition in response to vascular injury
Circ Res(Cover article) , 96 , 904-916  (2005)
原著論文5
Yokote K, Kobayashi K and Saito Y
Role of TGF-/ Smad3 signaling in response to vascular injury
Trends Cardiovasc Med  (2006)
原著論文6
Yu W, Akishita M, Xi H,et al.
Angiotensin converting enzyme inhibitor attenuates oxidative stress-induced endothelial cell apoptosis via p38 MAP kinase inhibition
Clin Chim Acta , 364 , 328-334  (2006)
原著論文7
Akishita M, Nagai K, Xi H,et al.
Renin angiotensin system modulates oxidative stress-induced endothelial cell apoptosis in rats
Hypertension , 45 , 1188-1193  (2005)
原著論文8
Akishita M, Yamada S, Nishiya H,et al.
Effects of physical exercise on plasma concentrations of sex hormones in elderly women with dementia
J Am Geriatr Soc , 53 , 1076-1077  (2005)
原著論文9
Watanabe T, Miyahara Y, Akishita M,et al.
Inhibitory effect of low-dose estrogen on neointimal formation after balloon injury of rat carotid artery
Eur J Pharmacol , 502 , 265-270  (2004)
原著論文10
Watanabe T, Akishita M, Nakaoka T,et al.
Caveolin-1, Id3a and two LIM protein genes are upregulated by estrogen in vascular smooth muscle cells
Life Sci , 75 , 1219-1229  (2004)
原著論文11
Kobayashi K, Akishita M, Yu W,et al.
Interrelationship between non-invasive measurements of atherosclerosis; flow-mediated dilation of brachial artery, carotid intima-media thickness and pulse wave velocity
Atherosclerosis , 173 , 13-18  (2004)
原著論文12
Watanabe T, Akishita M, He H,et al.
17beta-Estradiol inhibits cardiac
Biochem Biophys Res Commun , 311 , 454-459  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-