フタル酸/アジピン酸エステル類の生殖器障害に関する調査研究ー発達期ないし有病時暴露による影響評価ー

文献情報

文献番号
200401256A
報告書区分
総括
研究課題名
フタル酸/アジピン酸エステル類の生殖器障害に関する調査研究ー発達期ないし有病時暴露による影響評価ー
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 真杉(東京大学 大学院農学生命科学研究科 動物生理学講座)
  • 福島 昭治(大阪市立大学 大学院医学研究科 都市環境病理学講座)
  • 白井 智之(名古屋市立大学 大学院医学研究科 実験病態病理学講座)
  • 九郎丸 正道(東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医解剖学講座)
  • 江崎 治(国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プラスチック製品の可塑剤として広く利用されているフタル酸/アジピン酸エステル類による精巣毒性と生殖・発生毒性に焦点を当て、ヒトへの影響評価上問題となる不確実性要因の解明を目的とした以下の研究を行った。
研究方法
ラット周産期曝露影響評価のうち、病理研究ではDINPとDEHAを、性行動研究ではDEHAを評価した。またエチニルエストラジオールや高用量のDEHP曝露例の内側視索前野(MPOA)特異的なマイクロアレイ解析により得られた、脳の性分化障害標的遺伝子の発現レベルをリアルタイムRT-PCRで検証した。更にDINP曝露例のMPOAでの各種性分化関連遺伝子の発現解析を行った。基礎疾患修飾作用の解析では、ラット肝、腎障害モデルでDEHPとDEHAを評価した。モノ体であるMEHPによる精巣毒性の感受性種差を若齢マウスや成体ニホンザルで検討し、分子メカニズム解析では、昨年度得た標的遺伝子のMEHPによる転写活性を測定した。文献調査では、発達期曝露影響や感受性要因の検索を継続した。倫理面への配慮として、実験は経口投与、屠殺は深麻酔下で大動脈からの脱血により行い、動物への苦痛は最小限にとどめ、飼育・管理は各機関の利用規程に従った。
結果と考察
周産期曝露影響の病理評価では、DINP、DEHAは最低用量から発達期性分化影響を誘発し、DEHAによる性行動は雌で低下した。脳の性分化障害標的遺伝子の発現変動は検証され、それとは別に高用量のDINP曝露雌で、脳の性分化に関連するプロジェステロン受容体の発現減少を認めた。また、肝、腎障害下でDEHPによる精巣障害が増強した。感受性種差については評価を終了し、ニホンザルでは昨年度のヤギより感受性が高かった。分子メカニズムに関しては、MEHPによりマウスHMG CoAシンターゼ2の転写活性は上昇したが、ヒトホモログではPPRE配列がなく、毒性の感受性種差が示唆された。文献調査では、フタル酸エステル類のヒトでの曝露影響調査や実験毒性の遺伝子解析の報告が増加している。
結論
DINP、DEHAの周産期曝露により性分化障害を示唆する発達期影響が最低用量から出現し、実際DEHPやDINPの高用量では脳の標的遺伝子が得られた。肝、腎障害下ではDEHPによる精巣障害の増強を認め、感受性種差の評価も終了した。MEHPによる精巣の標的遺伝子を見出したが、ヒトでは反応しない可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200401256B
報告書区分
総合
研究課題名
フタル酸/アジピン酸エステル類の生殖器障害に関する調査研究ー発達期ないし有病時暴露による影響評価ー
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 真杉(東京大学 大学院農学生命科学研究科 動物生理学講座)
  • 福島 昭治(大阪市立大学 大学院医学研究科 都市環境病理学講座)
  • 白井 智之(名古屋市立大学 大学院医学研究科 実験病態病理学講座)
  • 九郎丸 正道(東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医解剖学講座)
  • 江崎 治(国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プラスチックの可塑剤として広く利用されているフタル酸/アジピン酸エステル類による精巣毒性と生殖・発生毒性に焦点を当て、ヒトへの影響評価上問題となる不確実性要因の解明を目的とした以下の研究を行った。
研究方法
ラット周産期曝露影響評価では、病理、性行動解析ともに3物質を評価した。また組織部位特異的なマイクロアレイ解析法を開発し、内側視索前野(MPOA)での発現解析を行った。更にDINP曝露例のMPOAでの各種性分化関連遺伝子の発現解析を行った。基礎疾患修飾作用の解析では、ラット肝、腎障害モデルを確立し、3物質を評価した。モノ体であるMEHPによる精巣毒性の感受性種差を5動物種で検討し、分子メカニズム解析ではマウスモデルでMEHPの標的遺伝子を探索し、転写活性を調べた。文献調査では発達期曝露影響や感受性要因の検索を行った。倫理面への配慮として、実験は経口投与、屠殺は深麻酔下で大動脈からの脱血により行い、動物への苦痛は最小限にとどめ、飼育・管理は各機関の利用規程に従った。
結果と考察
周産期曝露によりDBP、DINP、DEHAとも発達期性分化影響を最低用量から誘発し、DBPでは成熟後影響が同用量から残ったものの、DINP、DEHAでは軽微であった。またMPOAのマイクロアレイ解析により、エチニルエストラジオールで見出されたG蛋白質のシグナル伝達を介したシナプス可塑性障害が、高用量のDEHPでも示唆された。それとは別に高用量のDINP曝露雌で脳の性分化に関連するプロジェステロン受容体が発現減少を示した。肝、腎障害下で共にDBPとDEHPによる精巣障害の増強が明らかとなり、種による感受性は幼若精巣器官培養でマウス>ラット>モルモット>シバヤギ、成熟動物ではニホンザル>ヤギの順であった。MEHPはマウスHMG CoAシンターゼ2の転写を促進したが、ヒトホモログではPPRE配列がなく、毒性の感受性種差を示唆した。文献調査ではヒトでの曝露影響調査や実験毒性の遺伝子解析の報告が増加している。
結論
DBP、DINP、DEHAの周産期曝露により性分化障害を示唆する影響が最低用量から出現し、高用量のDEHPやDINPで脳での標的遺伝子が得られた。肝、腎障害下ではDBPとDEHPによる精巣障害の増強が確認され、感受性種差の評価も終了した。MEHPによる精巣の標的遺伝子を見出したが、ヒトでは反応しない可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-