反復投与毒性や発がん性試験等の実施による既存添加物の安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
200401152A
報告書区分
総括
研究課題名
反復投与毒性や発がん性試験等の実施による既存添加物の安全性評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 卓二(金沢医科大学 腫瘍病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物は、平成7年5月の食品衛生法改正にともなう経過措置として使用が認められているものであり、安全性の面からみれば収載品の多くはそれ自体もしくはその基源が長年食用に供されていたなどの経験はあるものの、動物試験などの科学的な安全性データに欠けるものも少なくない。既知および新規の安全性に係る情報から判断して、慢性毒性および発がん性の解明により安全性確認作業を急ぐ必要があるものが明らかとなってきたため、平成15年度より酸化防止剤トコトリエノールとフェルラ酸を対象として、ラットを用いた慢性毒性・発がん性併合試験を実施した。
研究方法
1年間反復投与毒性試験では、13週間反復投与毒性試験の結果に基づいて、雌雄のラットにトコトリエノールを0%、0.08 %、0.4%及び2%の用量で、フェルラ酸を0%、0.5%、1%及び2%の用量で1年間混餌投与した。がん原性試験についても、トコトリエノールを0%、0.4%及び2%の用量で、フェルラ酸を0%、0.5%、1%及び2%の用量で2年間混餌投与する実験を開始した。試験は食品添加物の指定及び使用基準改正に関するガイドラインに準拠して実施した。
結果と考察
慢性毒性試験の動物実験を終了し、病理組織標本作製作業に入るとともに、がん原性試験を継続した。トコトリエノールの慢性毒性試験では、剖検直前に2%投与群の雄1匹が死亡し、雌雄の2%投与群で有意な体重増加率の減少が認められたが、その他の群に特記すべき一般状態の異常は認められなかった。フェルラ酸の慢性毒性試験は開始後29週を経過し、投与群で一過性の脱毛が観察されているが、その他に特記すべき臨床徴候を認めていない。トコトリエノールのがん原性試験は試験開始後31週を経過し、2%投与群の雄3匹が死亡し、雌雄ともに2%投与群で2週目より有意な体重増加率の減少がみられているが、その他に特記すべき臨床徴候を認めていない。雄の最高用量群の用量を50週後から1%に減量した。フェルラ酸のがん原性試験は試験開始後29週を経過し、一過性の脱毛を観察したが、その他特記すべき臨床徴候を認めていない。
結論
次期研究年度において、1年間反復投与毒性試験の成績から総合的にNOAELを推定するとともに、がん原性試験を終了し、がん原性を含めたトコトリエノール及びフェルラ酸の安全性確認を終了する予定である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200401152B
報告書区分
総合
研究課題名
反復投与毒性や発がん性試験等の実施による既存添加物の安全性評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 卓二(金沢医科大学 )
  • 鰐淵 英機(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 廣瀬 善信 (岐阜大学大学院 医学研究科)
  • 今井田 克己(香川大学 医学部)
  • 中江 大(佐々木研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物の多くはそれ自体もしくはその基源が長年食用に供されていたなどの経験はあるものの、毒性試験などの科学的な安全性データに欠けるものも少なくない。安全性の検討が必要な品目のうち、規格があり流通実態が確認されているものを対象として、ヒトでの基本的安全性の評価を目的に、複数の検体に係る90日間反復投与毒性試験及び1年間慢性毒性/発がん性併合試験を実施し、横断的に既存添加物の安全性について検討した。
研究方法
平成14-15年度には、遺伝毒性が陰性であるヒメマツタケ抽出物、コーパル樹脂、ホホバロウ、マスチック、モンタンロウ、アウレオバシジウム培養液、アルカネット色素及びメバロン酸を対象として、ラット90日間反復投与毒性試験を行った。予備試験結果から設定した用量の各被験物質を基礎飼料に混じ、雌雄のラットに90日間自由に摂食させた。アウレオバジウム培養液は、飲料水に混じ90日間自由に与えた。対照群には基礎飼料及び水道水のみを同様に与えた。平成15-16年度には、遺伝毒性が2試験以上で疑陽性以上であるトコトリエノールとフェルラ酸を対象として、1年間慢性毒性/発がん性併合試験を行った。試験は食品添加物の指定及び使用基準改正に関するガイドラインに準拠して実施した。
結果と考察
ラット90日間反復投与毒性試験の結果、ヒメマツタケ抽出物、アウレオバシジウム培養液及びアルカネット色素では最高用量でも明らかな毒性影響は見られず、NOAELは5%と考えられた。コーパル樹脂では肝重量増加と血清生化学所見、ホホバロウでは摂餌量減少と血清生化学所見を根拠に、NOAELは1.25%と考えられた。マスチックでは肝重量増加などが、モンタンロウでは肝肉芽腫などが最低用量から観察され、無毒性量はそれぞれ0.22%未満及び0.56%未満と考えられた。また、メバロン酸では肝細胞脂肪化及び血清生化学所見を根拠に、NOAELは0.2%と考えられた。このように、マスチックとモンタンロウの無毒性量の推定には、低用量投与による追試験が必要と思われる。一方、トコトリエノールとフェルラ酸の1年間慢性毒性/発がん性併合試験は、現在順調に経過しており、がん原性試験の剖検を17年度に実施予定である。

結論
これらの成果に基づき、安全性に問題があると判明した場合には使用禁止とすることにより、国民の食、特に既存添加物に対する不安に応えることができるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-06-30
更新日
-