パーキン蛋白の機能解析と黒質変性及びその防御

文献情報

文献番号
200400773A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキン蛋白の機能解析と黒質変性及びその防御
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学医学部神経学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 啓二(東京都臨床医学研究所)
  • 高橋 良輔(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター運動系神経変性研究チーム)
  • 澤田 誠(名古屋大学環境医学研究所脳生命科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
常染色体劣性若年性パーキンソニズム(AR-JP)の原因遺伝子であるパーキン遺伝子とその遺伝子産物パーキン蛋白の機能解析を推進し、本症における黒質神経細胞死の機序を分子レベルで解明することを目的とする。またパーキン遺伝子陰性例が少なからず存在することが明らかにされ、PINK1 やDJ-1も単離され、原因遺伝子産物の相互作用も注目されてきている。本課題では、パーキン蛋白の機能解明のみならず新規遺伝子の単離も視野に入れている。
研究方法
研究課題を遂行するために、次の4名よりなる研究グループを組織し、各研究者の研究分担により研究を推進した。服部信孝:パーキン遺伝子・遺伝子産物解析、新規原因遺伝子単離。田中啓二:パーキンノックインマウス作製・解析。遺伝子産物の制御機構解析。高橋良輔:パーキンソン病におけるパエル受容体の機能解析。澤田誠:神経変性疾患でのマイクログリアの毒性転換のメカニズムに関する研究。
結果と考察
パーキン蛋白の機能解析に関しては,ヒトSH-SY5Y(神経芽細胞腫)細胞においてパーキン(PARK2遺伝子産物)の全長鎖アンチセンスRNAを発現させるとドパミンキノン体の増加に伴い細胞生存率が低下した。更に、正常α-シヌクレインがパーキンノックダウンによる細胞死を抑制し、変異α-シヌクレイン(A30P and A53T)ではその抑制効果が観察されなかったことを見出した。ユビキチンリガーゼであるパーキン蛋白の活性調節機構については、活性を負に制御する新しいタンパク質分子として14-3-3ηの同定に成功した。パエル受容体の遺伝子改変モデルを作製し、行動学的・生化学的検討を加えた。パエル受容体過剰発現マウスでは、線条体ドパミン量が、20%増加していたのに対し、パエル受容体ノックアウトマウスでは、40%減少していた。
結論
パーキン遺伝子変異陰性例が、少なからず存在し、約40%の症例については未知の原因遺伝子変異によることが分かった。パーキン遺伝子変異による神経細胞死にはドパミンキノン体の関与が明らかにされ、またパーキンのリガーゼ活性を制御する因子として14-3-3ηの関与が明らかにされた。その活性制御はα-シヌクレインにより抑制されており、ドパミンキノン体の増加が、α-シヌクレインにより抑制することと併せて家族性パーキンソン病における遺伝子産物が共通機構を形成していることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-