精神保健の知識と理解に関する日豪比較共同研究

文献情報

文献番号
200400737A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健の知識と理解に関する日豪比較共同研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中根 允文(長崎国際大学 人間社会学部 社会福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 正(国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部)
  • 中根 秀之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科精神病態制御学)
  • 吉岡 久美子(長崎国際大学 人間社会学部 社会福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成14年度に開発した日豪共同研究用「精神保健の知識と理解に関する」面接調査票によって、平成15年度は全国各地の一般住民(2,000人)を対象に一般人における精神障害(者)に係る知識及び態度を調査し、一部は日豪両国間で比較した。これを前提に、いわゆる専門職における精神保健に係る知識についても大規模に把握して、一般人とのギャップを明らかにしながら、将来の精神保健福祉行政に対するEBMを確立する。
研究方法
上記の面接調査票を全く同様な内容なアンケート調査用修正版に作成して、平成16年秋からいくつかの全国学会・協会に対して調査協力依頼を行い、合意の得られた組織で無作為抽出された構成会員に対して郵送調査を行った。
結果と考察
個別の調査依頼(4,575人)に対して総数1,377人からの回答(2005年2月末まで)が得られた(内訳は医師253人、残りはコメディカルスタッフ)。依頼した組織の中における構成員の調査協力率は、全体として30.1%であり、想定より高いものであった。
 統合失調症およびうつ病に対する認識度は、精神科医(それぞれ、68.0;71.1%)、プライマリケア医(59.2;63.0%)、精神保健福祉士(75.9;70.4%)、作業療法士(73.4;72.0%)、一般看護師(32.8;36.1%)、精神科看護師(37.2;29.1%)であり、看護者における認識の低さは予想外であった。この差異の背景について解析中である。「統合失調症およびうつ病事例を地域の人々が差別する」と考える割合は、精神科医(それぞれ、64.0;20.5%)、プライマリケア医(69.4;47.8%)、精神保健福祉士(54.6;22.6%)、作業療法士(65.5;40.1%)、一般看護師(64.8;36.8%)、精神科看護師(59.3;31.4%)であり、やはり各職種間で差異を見たが、これについてもさらなる解析を予定している。いずれのグループにおいても差別の根深さは拭い去れず、その背景に潜む様々な誤解、一般社会の偏見の強さを改めて認識させられるものであった。
 
結論
今回は、未だ統計解析のレベルに至っておらず、これから詳細な解析を行うが、「偏見」、「差別」といった用語の根底にある一般人及び専門職の精神障害(者)への認識には様々な要因が複雑に関与していると考えられた。こうしたグループ間の差異を確認して調整できる部分での共同作業、および各メンバーにとって適切な普及啓発活動の指針を早急に開発していくことが重要であろう。

公開日・更新日

公開日
2005-09-27
更新日
-