輸入蠕虫性疾患の監視と医療対応整備に関する研究

文献情報

文献番号
200400612A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入蠕虫性疾患の監視と医療対応整備に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
太田 伸生(名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 有薗直樹(京都府立医科大学)
  • 川中正憲(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 平山謙二(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 赤尾信明(東京医科歯科大学大学院医学研究科)
  • 田邊將信(慶応義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸入蠕虫性疾患に関する監視体制と医療対応整備に必要な情報整備と技術開発研究を行った。当面の重要課題はその発生動向把握であり、国内の蠕虫症データベース作成と輸入蠕虫症リスク評価などを進め、侵入監視のための診断・検出法開発を課題とした。実験動物を用いた蠕虫感染症の病態研究も行い、治療法開発の基礎資料を得ることを企図した。以上、輸入蠕虫性疾患の総合的研究を通じて適正な対応を取りうる体制構築を目的とした。
研究方法
輸入蠕虫感染症の実態把握と情報整備:国内の症例を文献及び学会報告例からデジタル情報化した。輸入蠕虫性疾患の国内定着の調査目的で広東住血線虫を首都圏と沖縄県で調べた。
蠕虫症のDNA診断法開発:日本住血吸虫症のPCR診断を試みた。標的遺伝子の同定とPCRの条件検討後に、マウス、ミニブタ及びヒト感染血清を用いて感度と特異性を検討した。
モデル動物による病態検討:蠕虫症の慢性病態をマウス、スナネズミ、ミニブタで病理、病態調節、感染防御などを調べた。
結果と考察
①輸入蠕虫症発生の報告事例約3,000件をデータベースとして試験的運用を開始した。今後は症例登録の促進を図る。②首都圏で初めて広東住血線虫の感染した中間宿主の生息地を同定した他、沖縄県で新たな中間宿主の存在を確認し、それを基にリスク評価を行った。③日本住血吸虫のSjR2及びSjα1を標的とするPCR診断法を開発した。マウス血清では感染4週で検出できたがヒト及びミニブタの感染血清では検出感度が不十分であった。本法は検便経験の有無を問わず実施が可能であり、国内の監視体制強化に資する。④Baylisascaris属線虫をスナネズミに感染させると多様な体内移行パターンを示した。クマ回虫感染でヒト類似の神経症状を呈すスナネズミで脳の各所で特徴的病理所見が観察された。⑤腸管寄生線虫感染ヒトの腸管粘膜局所でTh2優位の環境が誘導されており、粘膜感作ワクチンの効果に影響することが推測された。
結論
広東住血線虫の大都市圏でのリスクマップ作製、輸入蠕虫症診断に供する新規診断法など当初の目標に沿うものを確立した。国内の輸入蠕虫性疾患発生動向を把握するためのデータベースの作成も一部運用を開始したので、研究班発足当初に指摘した問題点のいくつかは解決に向かった。基礎的研究成果も実際の対策に応用できる形にして、予防・治療面への応用を図ることを目指すことにした。

公開日・更新日

公開日
2005-06-27
更新日
-