高齢化社会に適応する人工関節の開発-MPCポリマーによる長寿命人工関節に関する戦略的研究-

文献情報

文献番号
200400290A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢化社会に適応する人工関節の開発-MPCポリマーによる長寿命人工関節に関する戦略的研究-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高取 吉雄(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
  • 川口 浩(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
  • 茂呂 徹(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター)
  • 石原 一彦(東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学)
  • 水野 峰男(財団法人 ファインセラミックスセンター)
  • 高玉 博朗(財団法人 ファインセラミックスセンター)
  • 瀧川 順庸(大阪府立大学大学院工学系研究科)
  • 塙 隆夫(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)
  • 丸山 典夫(独立行政法人 物質・材料研究機構)
  • 松下 富春(日本メディカルマテリアル株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
13,489,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工股関節置換後に生じる弛みは最大の合併症であり、その主因は関節摺動面から生じるポリエチレン (PE) 摩耗粉をマクロファージ(MΦ)が貪食して惹起する骨吸収である。したがって、耐摩耗性と生体適合性に優れた人工関節の開発が求められている。我々は、生体適合性と潤滑性を基材に与える生体材料・MPCポリマーをPEライナー表面にナノスケールで光学的にグラフトする方法(MPCポリマー処理) を創案した。この技術の臨床応用に必要な基礎検討を行うため、今年度は、1)MPCポリマー処理した関節面の摩耗特性、2) MPC摩耗粉が骨吸収に与える影響、3)生体内の安全性、について検討した。
研究方法
耐摩耗性は、生体の歩行周期を再現する股関節シミュレーターを用いて検討した。MPC摩耗粉が骨吸収に与える影響については、MPCポリマーナノ微粒子を作製し、in vitroのマウス骨吸収モデルに用いてRANKLの発現を、in vivoのマウス骨吸収モデルに用いて破骨細胞形成と骨吸収の有無を観察した。生体内の安全性は、試験は、「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方」別添「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」、「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」別添「医療機器の生物学的安全性評価のための試験法について」に基づいて実施した。
結果と考察
股関節シミュレーター試験を用いた検討では、PEライナー表面をMPC ポリマー処理することでその摩耗を著明に抑制することができ、その効果は試験終了時まで持続していた。MPCポリマーのナノ微粒子をin vitro / vivo のマウス骨吸収モデルを用いた実験では、RANKLの発現、破骨細胞の形成・活性化、骨吸収の誘導が抑制された。また、安全性試験は実施した全ての項目で陰性であり、MPCポリマーの生体内での安全性も確認できた。
結論
今回の研究により、MPCポリマー処理がPEライナーの摩耗を低減して長期の力学的負荷に耐えられること、MPCポリマー摩耗粉が骨吸収を誘導しないことが明らかになった。これらの研究成果により、長寿命型人工関節の開発を達成できるという強い確信を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400290B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢化社会に適応する人工関節の開発-MPCポリマーによる長寿命人工関節に関する戦略的研究-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高取 吉雄(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
  • 川口 浩(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
  • 茂呂 徹(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター)
  • 石原 一彦(東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学)
  • 水野 峰男(財団法人 ファインセラミックスセンター)
  • 高玉 博朗(財団法人 ファインセラミックスセンター)
  • 瀧川 順庸(大阪府立大学大学院工学系研究科)
  • 塙 隆夫(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)
  • 丸山 典夫(独立行政法人 物質・材料研究機構)
  • 松下 富春(日本メディカルマテリアル株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工関節置換手術は優れた治療法であるが、手術後に生じる弛みはその最大の合併症である。弛みの主因は関節摺動面から生じるポリエチレン (PE) 摩耗粉をマクロファージ(MΦ)が貪食して惹起する骨吸収である。したがって、耐摩耗性と生体適合性に優れた人工関節の開発が求められている。我々は、生体の関節軟骨表面の構造に着目し、生体適合性と潤滑性に優れたMPCポリマーをPEライナー表面にナノスケールで光学的にグラフトする方法(MPCポリマー処理) を創案した。この技術の臨床応用に必要な基礎検討を行うため、1)MPCポリマー処理した関節面の摩耗特性、2) MPC摩耗粉が骨吸収に与える影響、3)生体内の安全性、について検討した。
研究方法
耐摩耗性は、生体の歩行周期を再現する股関節シミュレーターを用いて検討した。MPC摩耗粉が骨吸収に与える影響については、MPCポリマーナノ微粒子を作製し、in vitro/ vivoのマウス骨吸収モデルに用いて検討した。生体内の安全性については、「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方」別添「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」、「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」別添「医療機器の生物学的安全性評価のための試験法について」に基づいて実施した。
結果と考察
股関節シミュレーター試験を用いた検討では、PEライナー表面をMPC ポリマー処理することでその摩耗を長期にわたり著明に抑制することができ、その効果は試験終了時まで持続していた。MPCポリマーのナノ微粒子をin vitro / vivo のマウス骨吸収モデルを用いた実験では、MPCポリマー微粒子はMΦの貪食うけず、骨吸収を誘導する液性因子の分泌、RANKLの発現、破骨細胞の形成・活性化、骨吸収の誘導が抑制されていた。また、安全性試験は実施した試験の全ての項目で陰性であり、MPCポリマーの生体内での安全性も確認できた。
結論
今回の研究により、MPCポリマー処理が関節摺動面のPEライナーの摩耗を低減して長期の力学的負荷に耐えられること、MPCポリマーが生体内で仮に摩耗粉になっても骨吸収を誘導しないこと、MPCポリマーが生体内で安全であることが確認できた。以上の研究成果により、長寿命型人工関節の開発を達成できるという強い確信を得ることができた。今後は本技術の実用化に向け、さらなる検討を続ける予定である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-