Dorfinによる老年期神経変性疾患の治療法の開発

文献情報

文献番号
200400288A
報告書区分
総括
研究課題名
Dorfinによる老年期神経変性疾患の治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科(神経内科))
研究分担者(所属機関)
  • 道勇 学(名古屋大学大学院医学系研究科(神経内科))
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所(先端研究センター))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
25,557,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変異蛋白質を特異的に認識すると考えられるDorfinを高発現することは、異常蛋白質蓄積病といえる老年期神経変性疾患の治療法開発の上で非常に有望な戦略である。これまでにDorfinの外来性発現によりALSモデルマウスの生存期間および罹病期間を延長させえたが、Dorfinによるさらなる治療効果の増大のために、Dorfinの活性制御に関与する分子の同定や、遺伝子工学的手法を用いたDorfinの改変を試みた。
研究方法
1) 培養細胞より抽出したDorfin複合体のマススペクトロメータを用いたハイスループットプロテオミクス解析を行い、Dorfin結合蛋白質を同定してその機能解析を行った。
2) Dorfinの基質結合部位である疎水性ドメインを含む部分を、carboxyl terminus of the Hsc70-interacting protein (CHIP)のユビキチン化活性を有するU-box領域と結合した人工E3の多数のコンストラクトを作製し、人工E3の発現量およびin vivoユビキチン化活性を検討した。
結果と考察
1) Dorfin結合蛋白質として多機能性の分子シャペロン型ATPase complexであるVCPを同定した。VCPはDorfinのE3活性を正に制御する因子であることが判明し、Dorfinを用いた老年期神経変性疾患の新たな標的分子となりうる。
2) Dorfinによる老年期神経変性疾患治療法を開発する上での問題点の一つに、中枢神経系内でのDorfinのターンオーバーが速く、結果としてDorfinの発現量が低く抑えられてしまうことがあげられる。N末端側にCHIPのU-boxとC末端側にDorfinの基質結合部位を融合した人工E3により、Dorfinに比べ高発現でユビキチン化活性を増強させることができた。現在ウィルスベクターを用いて臨床応用を目指した病変部位へのデリバリー法の開発を進めている。
結論
Dorfinによる老年期神経変性疾患の治療効果を高めるために、Dorfinの活性を制御し治療の標的分子となりうるVCPを同定し、さらに発現の安定性とE3活性を高めたDorfin改変人工E3を開発した。今後臨床応用に向け、病変部位への効果的なデリバリー法の開発等さらなる検討を重ね、一刻も早く老年期神経変性疾患の有効な治療法の開発を行ってゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200400288B
報告書区分
総合
研究課題名
Dorfinによる老年期神経変性疾患の治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科(神経内科))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
パーキンソン病、アルツハイマー病などの老年期神経変性疾患では異常蛋白質が中枢神経へ蓄積することが原因と考えられるため、ユビキチン-プロテアソーム系の働きを補強して毒性蛋白質を除去する治療戦略は有望である。われわれが発見したユビキチンリガーゼ(E3) Dorfinが、老年期神経変性疾患治療に有用であるかどうかを多面的解析により明らかにする。
研究方法
1) 抗Dorfin抗体パネルを作製し、老年期神経変性疾患症例を神経病理学的に解析した。
2) 培養神経細胞へ疾患関連遺伝子を導入することにより培養細胞モデルを構築し、Dorfinの導入による細胞保護効果を検討した。Dorfinを発現するTgマウスを作製し、疾患モデルマウスと交配することでDorfinの治療効果を検討した。
3) 治療効果をより高めるためDorfinの基質認識部位と他のE3のユビキチン化活性部位を融合した人工蛋白質を開発した。
4) 酵母Two-Hybrid法および高感度マススペクトロメーターによる大規模ハイスループット・プロテオミクス解析により、Dorfin活性制御分子を探索した。
結果と考察
1) Dorfinは様々な老年期神経変性疾患病変部位のユビキチン化封入体に局在し、封入体形成と密接に関わることが明らかになった。
2) Dorfinを発現するTgマウスと変異SOD1-Tgマウスとの交配実験では、変異SOD1-Tgマウスの罹病期間および生存期間の延長と病理学的に変異SOD1蓄積の減少が観察され、Dorfinが老年期神経変性疾患の治療応用に有望であることが示唆された。凝集体形成と神経突起の形成低下などの細胞機能障害を引き起こすsynphilin-1およびcystatin Cを脳・脊髄に高発現させたTgマウスを作製し、現在Dorfinの治療効果の検討が進行中である。
3) CHIPのU-boxとDorfinの基質結合部位を融合した人工E3により、Dorfinよりも高発現とユビキチン化活性の増強が得られた。現在ウィルスベクターにより臨床応用を目指した効果的な治療法の開発を進めている。
4) Dorfin結合蛋白質としてMAP1BおよびVCPが同定された。VCPはDorfinのE3活性の正の制御因子であることが判明し、Dorfinを用いた老年期神経変性疾患の新たな標的分子となりうる。
結論
Dorfinは老年期神経変性疾患の病態に深く関わり、Dorfinの高発現や機能制御を通してユビキチン-プロテアソーム系の働きを増強することで毒性蛋白質の蓄積防止・除去を行うことが今後の重要な治療戦略となりうる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-14
更新日
-