老化、及び老年病関連遺伝子同定を目指した遺伝疫学研究

文献情報

文献番号
200400280A
報告書区分
総括
研究課題名
老化、及び老年病関連遺伝子同定を目指した遺伝疫学研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三木 哲郎(愛媛大学医学部(老年医学講座))
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 郁子(愛媛大学医学部(環境遺伝学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
16,911,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、生活習慣病および老年病に係る遺伝要因を探索し、ひいては老化の予防・遅延を達成することで、長寿科学の発展と健康余命の確保に貢献することを目的とする。本目的を達成するため、生活習慣病のうち最も有病率の高い高血圧と、老年者のQOLに強く影響する晩発性アルツハイマー病(LOAD; Late Onset Alzheimer’s Disease)とを取り上げ、その遺伝的背景について検討した。
研究方法
高血圧感受性遺伝子解析は兵庫県下の一般病院の人間ドック受診者から、本研究に同意の得られた821例を対象とした。臨床情報は人間ドック受信時のものを利用し、遺伝子多型は末梢血より抽出したDNAを用いて行った。
LOAD関連遺伝子解析では、LOAD初期と病理診断された剖検脳の海馬及び頭頂皮質組織よりRNAを抽出し、マイクロアレイを用いて発現解析を行った。また候補遺伝子アプローチとして、老人斑周囲で発現が亢進している繊維芽細胞成長因子(FGF1)遺伝子についても検討した。
結果と考察
高血圧感受性遺伝子解析では、高血圧に対し、Gタンパク質αサブユニット遺伝子多型(GNAS1; rs7172)がGGT(gamma-glutamyl transpeptidase)との交互作用をもって有意に相関した(p= 0.033)。この相関は、他の交絡因子を調整した上でも維持された (p= 0.0025)。昨年度に我々は、GNAS1遺伝子多型と血圧との相関を別の集団で報告しており、由来の異なる大規模2集団で同様の成績が得られたことは、GNAS1遺伝子多型と血圧との相関を立証する成果といえる。
一方、LOAD関連遺伝子解析では、LOAD初期脳の海馬で有意に発現が亢進又は低下していた遺伝子を複数個得た。このうち発現量の変化が大きい順に33遺伝子を選択し、各遺伝子あたり1つのSNPを選出して相関解析を行った結果、遺伝子多型頻度で9SNPが、対立遺伝子頻度で5SNPが統計学的有意差を示した(p<0.05)。このうちPOU2F1遺伝子で最も強い相関が見られた(p< 0.0007)。
結論
GNAS1遺伝子T393C多型はアルコール摂取と関連して血圧上昇、あるいは高血圧発症に関与していることが再現性をもって確認された。また、POU2F1遺伝子がLOADのリスクファクターとなることも見いだした。

公開日・更新日

公開日
2005-03-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200400280B
報告書区分
総合
研究課題名
老化、及び老年病関連遺伝子同定を目指した遺伝疫学研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三木 哲郎(愛媛大学医学部(老年医学講座))
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 郁子(愛媛大学医学部(環境遺伝学講座))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病および老年病に係る遺伝要因を探索し、ひいては老化の予防・遅延を達成することで、長寿科学の発展と健康余命の確保に貢献することを目的とする。そのため、生活習慣病のうち最も有病率の高い高血圧と、老年者のQOLに強く影響する晩発性アルツハイマー病(LOAD; Late Onset Alzheimer’s Disease)とを取り上げ、その遺伝的背景について検討した。
研究方法
高血圧感受性遺伝子解析では、一般地域集団3530例、人間ドック受診者821例を対象とした長期縦断的遺伝疫学研究を行った。DNAは末梢血由来白血球より抽出し、TaqManプローブ法で多型を解析した。LOAD感受性遺伝子解析では、ゲノムワイドに選択した候補遺伝子について疾患/対照法で多型頻度を比較した。また、LOAD初期の剖検脳組織よりRNAを抽出して遺伝子発現量を解析した。
結果と考察
高血圧感受性遺伝子解析では、一般地域住民を対象とした検討から、アルデヒド脱水素酵素遺伝子多型(ALDH2; rs671)が、年齢・BMI・喫煙・飲酒量とともに、男性でのみ高血圧に対する有意な危険因子であることが示された。また、Gタンパク質αサブユニット遺伝子多型(GNAS1; rs7172)が、アルコール摂取量と交互作用をもって高血圧と相関することが示された。この成績は人間ドック受診者を対象とした検討でも検証された。
LOAD関連遺伝子解析では、候補遺伝子アプローチから3遺伝子で統計学的な有意差を認めた(CAST; p=0.036, COL9A1; p=0.045, IL1RAP; p=0.036)。また、近年、LOADとの関連が注目されている繊維芽細胞成長因子遺伝子についても有意な相関を得た(p<0.02)。発現解析では、発現に変化が見られた33遺伝子について、378例の疾患/対照群で多型頻度を比較したところ、14 SNPが有意差を示した(p<0.05)。このうちPOU2F1遺伝子で最も強い相関が見られた(p< 0.0007)。
結論
ALDH2遺伝子とGNAS1遺伝子が、アルコール摂取と関連して血圧と相関することが再現性をもって確認された。また、POU2F1遺伝子がLOADのリスクファクターとなることも見いだした。これらの成果は、個別医療・予防の実現に大きく寄与するものであり、ひいては健康長寿の実現にも貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-03-30
更新日
-