高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療の基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
200400246A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療の基盤整備に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 京一(浜松医科大学臨床薬理学(現:大分大学))
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科医薬経済学)
  • 景山 茂(東京慈恵会医科大学薬物治療学)
  • 野元 正弘(愛媛大学医学部臨床薬理学)
  • 橋本 久邦(浜松医科大学附属病院薬剤部)
  • 林 登志雄(名古屋大学大学院医学系研究科老年科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高齢者では青壮年者に比べ有害反応や薬物相互作用が出現しやすい。本研究の目的は、臨床的に高齢者に投与される機会の多い薬物を対象薬として選定し、対象薬投与時のphenotypeデータ(薬物有害反応の特性)とgenotypeデータ(薬物代謝関連遺伝子多型性)の関連を明らかにすることである。
研究方法
 循環器用薬として高脂血症治療薬であるHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)およびI群の抗不整脈薬、中枢神経系薬としてパ-キンソン病や脳血管障害治療薬であるアマンタジン、糖尿病治療薬としてインスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンとスルホニル尿素類グリメピリド、抗結核治療薬としてイソニアジドを対象薬とした。
結果と考察
1) カルシウム拮抗薬とシンバスタチン間で有意な薬物間相互作用が生じたが、OATP-CとOATP-B遺伝子多型ではスタチンのコレステロール低下作用に有意な差は認められなかった。
2)クラスI抗不整脈薬の血中濃度は個体差が大きく、治療域内にあるものは約50%であった。ピルジカイニド及びフレカイニドの血中濃度上昇と加齢に伴う腎機能の低下に相関性が認められた。また、ピルジカイニドで血中濃度が顕著に高い症例では心電図変化及び副作用が認められた。
3)アマンタジンの血中濃度は加齢により増加し、2000mg/dl以上の症例において興奮、幻覚が認められた。
4)インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン投与患者では、高齢者群で心不全, 浮腫の発現頻度は有意に高かった。
5)抗結核治療薬に関して、肝障害はイソニアジドのintermediate acetylatorで高齢患者群の3名中1名、青壮年患者群の7名中1名に認められた。
6)老人医療での高額疾患は脳梗塞、高血圧性疾患、腎不全、骨折、糖尿病などであった。高血圧性疾患は、老人医療のみでみると7,531億円と、脳梗塞(9,700億円)に及ばず、投薬注射費では高血圧性疾患が最高額(2,304億円)であり、脳梗塞(1,239億円)がこれに次いだ。
結論
 高齢者において、薬物有害事象の発生が青壮年者に比較し、高頻度となる事が明らかにされた。また薬物代謝関連遺伝子多型の影響が加齢によりさらに修飾される可能性も示唆された。高齢者における薬物血中濃度のモニタリングは薬物有害事象回避に重要であり、遺伝子多型情報はそれを補足する有効な因子と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-