組織工学による血管増生心筋組織の構築ならびにその移植による冠血管床の再生

文献情報

文献番号
200400080A
報告書区分
総括
研究課題名
組織工学による血管増生心筋組織の構築ならびにその移植による冠血管床の再生
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所(心臓生理部))
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 光夫(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 )
  • 福田 恵一(慶應義塾大学医学部 心臓病先進治療学)
  • 浅原 孝之(東海大学医学部 再生医療科学)
  • 清水 達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は虚血性心疾患に伴う重症心不全に対する次世代の再生医療として組織工学的手法を用い3次元的な組織を再構築しそれを虚血部位に移植することで心機能の改善を実現することを目的とした。特に再生組織のスケールアップを実現するため組織内に血管網を増生する新たな手法の開発を行った。
研究方法
細胞シートの回収には温度応答性培養皿を用いた。この培養皿を用い温度降下処理のみで細胞を非侵襲的にシート状に回収しさらに積層化することで3次元組織を作製した。作製した組織内での血管新生促進を目的に1.血管内皮細胞との共培養細胞シートの移植による再生組織内の血管増生および心機能改善効果の評価2.血管内皮前駆細胞(EPC)を用いた細胞シートの作製3.血管新生関連遺伝子ーゼラチン複合体の血管新生効果の解析を行った。
結果と考察
EPCあるいは生体組織由来の血管内皮細胞を細胞シートに導入し共培養細胞シートとして心筋梗塞モデルに移植したところ心機能の改善効果が確認された。細胞シートとともに移植したEPCや血管内皮細胞が再生組織内の新生血管網の一部を構成しており血管となる細胞ソースを含む共培養細胞シート移植の有用性が示された。またヒトEPCに関しては血漿コーティングを行うことで安定した細胞シートの回収が可能となったことから今後EPCを細胞シートとして移植することで効率的な治療も可能と考えられる。一方、アドレノメジュリン遺伝子-ゼラチンハイドロゲル複合体を虚血部に投与したところ遺伝子単独群あるいはゼラチンハイドロゲル単独群よりも有意に血管密度ならびに血流量が増加し、虚血性の組織変化が軽減することが明らかとなった。これらの結果より血管の細胞ソースを含んだ細胞シートに遺伝子ーゼラチンハイドロゲル複合体を導入することでさらに血管網に富んだ再生組織の作製が可能であることが示唆された。
結論
心筋組織再生には細胞ソース、組織再構築・培養法、血管増生法、移植法と多岐にまたがる技術開発が必要であるが、本研究においては細胞シートを不全心筋部にパッチとして移植するという新たな治療コンセプトを基本とし細胞ソース、遺伝子導入法、組織再構築法に関し新たな技術開発を行いより血管床を伴った機能的な心筋組織の再構築を可能とする基盤技術を確立した。今後、これらの技術をさらに発展させ統合することにより臨床応用可能な心筋パッチの開発が実現するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200400080B
報告書区分
総合
研究課題名
組織工学による血管増生心筋組織の構築ならびにその移植による冠血管床の再生
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所(心臓生理部))
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 光夫(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 福田 恵一(慶應義塾大学医学部 心臓病先進治療学)
  • 浅原 孝之(東海大学医学部再生医療科学)
  • 清水 達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
虚血性心疾患に伴う重症心不全に対する次世代の再生医療として組織工学的手法を用い3次元的な組織を再構築したうえでそれを心筋パッチとして虚血部位に移植する治療法の開発が始まっている。本研究では細胞シートを重層化して不全心筋部に移植する独自の手法を要素技術とし血管増生によるスケールアップという再生医療における新たな課題を克服するための技術開発を行うことを目的とした。
研究方法
血管床再生能力の高い再生心筋組織の作製を目的に多面的なアプローチで研究を行った。主なものとして以下の実験を行った。1.血管内皮前駆細胞(EPC)や間葉系幹細胞を用いた共培養細胞シートを作製し心筋梗塞モデルへの移植実験を行った。2.ゼラチンハイドロゲルを用いた遺伝子導入法の最適化を行い、アドレノメジュリン遺伝子を用いたゼラチン複合体を作成しその血管新生効果を検討した。3.重層化心筋細胞シートを十分な血管網が新生するのを待って繰り返し移植した。4.組織還流培養装置を開発し酸素・栄養の供給を増大することでin vitroでのスケールアップを試みた。
結果と考察
EPCや間葉系幹細胞を用いた共培養細胞シートの移植により高い心機能の改善効果が確認された。これは、移植した共培養細胞シートに含まれる血管の細胞ソースが心筋パッチ内の血管新生を増生しているためと推察された。ゼラチンハイドロゲルを用いた遺伝子導入は細胞に効率良く遺伝子導入することが可能であり、アドレノメジュリン遺伝子-ゼラチン複合体の虚血改善効果も確認したことから細胞シートへの導入によりさらなる血管増生が期待される。また重層化細胞シートの多段階移植を行ったところ血管網を伴った厚さ1mmの同期して拍動する心筋組織の再生が可能となった。これは少なくともin vivoにおいては多段階移植により虚血の限界を克服しうることを示す結果であった。一方、還流培養装置を用い酸素分圧やpHを向上させて組織培養を行ったところ静置培養に比べより厚い組織の作製がin vitroでも可能となった。
結論
本研究では細胞シートを用いた独自の組織工学的手法を基本とし細胞ソース、遺伝子導入法、組織培養法に関する技術導入あるいは新たな技術開発を行い血管床を伴ったより厚く機能的な組織の再生を可能とした。今後、これらの技術を発展させ統合することにより臨床応用可能な心筋パッチの開発が実現するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-