循環器系疾患治療のための次世代遺伝子導入ベクターの創製

文献情報

文献番号
200400049A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器系疾患治療のための次世代遺伝子導入ベクターの創製
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岸田 晶夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
  • 浅原 孝之(東海大学 医学部)
  • 盛 英三(国立循環器病センター研究所)
  • 永谷憲歳(国立循環器病センター研究所)
  • 清水達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、虚血性心筋症(心筋梗塞、心筋症)や慢性閉塞性動脈硬化症などの血管狭窄病変に対する遺伝子細胞療法のための両親媒性遺伝子ベクターを開発し、これを用いて①血管内投与による高効率なGene Therapyさらに②血管成長因子等の遺伝子を導入した血管内皮前駆細胞などによるハイブリッド細胞-遺伝子治療法を開発する。
研究方法
遺伝子の徐放が可能でかつ凝集のない次世代遺伝子ベクターを生体吸収性ゼラチンあるいは合成高分子であるポリビニルアルコールから作製した。次に、これらを利用して、治療機能を有する細胞内に遺伝子を導入することで細胞治療と遺伝子治療の要素を併せもった新しいハイブリッド治療法について検討した。また、温度応答性基材を用いて作製した細胞シートへの遺伝子導入による機能強化に対して、この遺伝子導入システムの有効性について検討した。
結果と考察
次世代遺伝子ベクターとして、カチオン化ゼラチンにポリエチレングリコール(PEG)を結合させ、PEG導入カチオン化ゼラチンを作製した。これらの試料は分子サイズ数百ナノメータの高分子ミセルを形成した。次に、PEG修飾カチオン化ゼラチンとプラスミドDNAとの微細化粒子を作製、マウス皮下に投与したところ、遊離のプラスミドDNAに比較して、高い遺伝子発現レベルが認められた。また、超高圧処理による遺伝子-高分子複合体の安定性と遺伝子発現との間に相関性があることを示した。一方、次世代遺伝子ベクターを用いて、血管内皮前駆細胞(EPC)へ血管内皮増殖因子(VEGF)の遺伝子を導入したところ、遺伝子導入されたEPCはVEGFを分泌し、自己増殖能が促進された。さらに、兎下肢虚血モデルでadrenomedulin遺伝子と次世代遺伝子ベクターとの複合体の血管再生治療効果を確認した。最後に、次世代遺伝子ベクターを用いて遺伝子導入したEPCを細胞シートとともに心筋梗塞モデルに移植したところ、EPCが細胞シートとともに効率的に生着、梗塞部の血管網が再生されることによって、心機能が改善されることがわかった。
結論
微細化したプラスミドDNAを徐放する次世代遺伝子ベクターに対する分子デザインが完成した。EPCにプラスミドDNA含浸ハイドロゲル粒子を取り込ませ、細胞内でプラスミドDNAを徐放したところ、EPCの生物活性は増強された。ハイブリッド細胞-遺伝子治療の概念と有効性が確認できた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200400049B
報告書区分
総合
研究課題名
循環器系疾患治療のための次世代遺伝子導入ベクターの創製
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岸田 晶夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
  • 浅原 孝之(東海大学 医学部)
  • 盛 英三(国立循環器病センター研究所)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所)
  • 清水 達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、虚血性心筋症(心筋梗塞、心筋症)や慢性閉塞性動脈硬化症などの血管狭窄病変に対する遺伝子細胞療法のための両親媒性遺伝子ベクターを開発し、これを用いて①血管内投与による高効率なGene Therapyさらに②血管成長因子等の遺伝子を導入した血管内皮前駆細胞などによるハイブリッド細胞-遺伝子治療法を開発することである。また、機能強化した細胞をシート化して移植組織の機能向上を実現する。
研究方法
プラスミドDNAを徐放するための生体吸収性のカチオン化ゼラチンからなる次世代遺伝子ベクターを作製した。さらに、カチオン化ゼラチンにポリエチレングリコール(PEG)を結合させ、PEG導入カチオン化ゼラチンを作製した。得られたPEG修飾カチオン化ゼラチンとプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックスからなる微細化粒子について、遺伝子の導入・発現効率を評価した。また、超高圧処理による遺伝子-高分子複合体の調製とその遺伝子発現特性について検討した。一方、血管内皮前駆細胞(EPC)への遺伝子導入によるハイブリッド細胞-遺伝子治療について検討した。すなわち、強力な血管拡張ペプチドであるアドレノメデユリン遺伝子を次世代遺伝子ベクターにより導入、機能強化したEPCを投与し、肺高血圧治療の有効性について検討した。最後に、細胞移植方法として、単離細胞移植と細胞シート移植とを比較検討した。
結果と考察
本研究の成果は、1)細胞内外でのプラスミドDNAの徐放化システムを開発、それを利用することによって、遺伝子発現レベルの増強と発現期間の延長の達成、2)徐放粒子システムを用いることで、EPC内でのプラスミドDNAの徐放化、それに伴う効率のよいEPCの遺伝子改変、3)遺伝子改変EPCを利用した細胞治療効率の向上(ハイブリッド遺伝子-細胞治療の概念の確立)である。
結論
本研究を通じて、微細化したプラスミドDNAを徐放する次世代遺伝子ベクターに対する分子デザインが完成した。次世代遺伝子ベクターを用いて、細胞内でプラスミドDNAを徐放したところ、EPCはその生物活性を増強されることがわかった。貪食作用をもつEPCに代表されるような細胞に対しては、ハイブリッド細胞-遺伝子治療の概念と動物疾患モデルを用いた、その治療法の有効性の確立は達成できた。本研究成果は、今後の新しい治療法の方向性を示唆するものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-