骨髄異形成症候群の原因遺伝子の同定と発症機構の解明

文献情報

文献番号
200400043A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄異形成症候群の原因遺伝子の同定と発症機構の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小川 誠司(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 滋(東京大学医学部附属病院)
  • 黒川 峰夫(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄異形成症候群(MDS)は高齢者に多発する難治性造血器疾患であるが、現在のところ治療毒性の少ない効果的な治療法は知られていない。本研究事業の目的は、先進のゲノム解析技術と発生工学技術を駆使して、MDSの原因となる遺伝子変異を同定し、その病態を明らかにすることである。
研究方法
MDSで高頻度に欠失する7qの標的遺伝子の同定に関して、7番染色体長腕で特異的にメチル化を受ける遺伝子として同定した25個の遺伝子について、定量PCR法により腫瘍検体における遺伝子発現の解析を行い、メチル化に伴って発現の低下する遺伝子の同定を行った。また、BACアレイおよび高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いたゲノムコピー数の解析システムを構築し、これを用いてMDS検体で生ずるゲノムコピー数の変化を網羅的に探索した。一方、MDSで高頻度に変異を生ずるAML1遺伝子とMDSの病態との関連に関しては、成体造血組織でAML1を特異的に欠失するマウスにおける造血前駆細胞のFACS解析ならびにOP9/Delta1細胞を用いた造血幹細胞のin vitro培養系等を用いて、AML1を欠失した造血組織におけるリンパ球系の分化の異常を解析した。
結果と考察
7番染色体長腕でメチル化により不活化をうける標的遺伝子としてPFTK1およびQ9P1T7を同定した。これらの遺伝子は、7qで不活化をうけるMDS標的遺伝子の有力候補と考えられた。アレイ技術を用いたMDSゲノムのコピー数変化の網羅的探索では、MDSの発症に関わることが推定される複数の遺伝子が同定された。Swhawmee(11p15)、Q8NBE4(7q31)、AK130123(8p21)などは複数の症例で欠失を認めるいくつかの例であるが、これらはMDSにおける遺伝子変異の標的となっている可能性が示唆された。AML1:欠失マウスの解析では、AML1の欠失によってB細胞ではHardy AからB分画への移行が、またT細胞ではDN2からDN3およびDN3からDN4への移行が強く傷害されることを示し、AML1がこれらの文化の段階で必須であることが明らかとなった。
結論
MDSで不活化を受ける7qの標的遺伝子の候補として、PFTK1およびQ9P1T7を同定した。BACアレイおよび高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いたコピー数解析システムを新たに構築した、これを用いたMDSゲノムの解析によって、MDSで増幅・欠失を生ずる多数のゲノム領域とその標的遺伝子の候補を同定した。AML1遺伝子の不活化の観点からMDSの病態におけるリンパ球系の障害のメカニズムを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200400043B
報告書区分
総合
研究課題名
骨髄異形成症候群の原因遺伝子の同定と発症機構の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小川 誠司(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 滋(東京大学医学部附属病院)
  • 黒川 峰夫(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄異形成症候群(MDS)は高齢者に多発する難治性造血器疾患であるが、現在のところ治療毒性の少ない効果的な治療法は知られていない。本研究事業の目的は、先進のゲノム解析技術と発生工学技術を駆使して、MDSの原因となる遺伝子変異を同定し、その病態を明らかにすることである。
研究方法
MDSで高頻度に認める予後不良の転座であるder(1;7)についてその発症機構を解析する目的で、定量的FISH法を用いた転座切断点の同定を試みた。同様にMDSの典型的な予後不良異常である7qに関して、同染色体に存在するCpGアイランドの網羅的メチル化解析によりその標的遺伝子の探索を行った。また、BACアレイおよび高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いたゲノムコピー数の解析システムを構築し、これを用いてMDS検体で生ずるゲノムコピー数の変化を網羅的に探索した。MDSで高頻度に変異を生ずるAML1遺伝子とMDSの病態に関しては、成体造血組織でAML1を特異的に欠失するマウスを作成し、造血系に生ずる異常を解析した。
結果と考察
der(1;7)の解析では、転座が1番7番両染色体の動原体の長大なalphoid配列内で生じており、転座の結果生ずる1q+および7q-がその病態の形成に重要であることが示唆された。また、網羅的メチル化解析では、メチル化により不活化をうける7qの標的遺伝子の候補としてPFTK1およびQ9P1T7を同定した。また、アレイ解析技術を用いたMDSゲノムのコピー数変化の網羅的探索では、MDSでホモ欠失を生ずる標的遺伝子の候補として複数の遺伝子を同定した。AML1遺伝子を成体造血組織で特異的に欠失するマウスの解析では、同遺伝子が成体造血の維持には不可欠ではないが、リンパ球および血小板の産生には不可欠であること、また同マウスがMDSの病態を再現する優れたモデルマウスとなることを明らかにした。
結論
MDSで高頻度に認められるder(1;7)の転座切断点を同定し同転座の新たな分子診断法を確立した。また7q欠失で不活化を受ける7qの標的遺伝子の候補として、PFTK1およびQ9P1T7を同定した。BACアレイおよび高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いたコピー数解析システムを新たに構築し、これを用いたMDSゲノムの解析によって、MDSで増幅・欠失を生ずる多数のゲノム領域とその標的遺伝子の候補を同定した。MDSで高頻度に不活化を受けるAML1遺伝子の欠失マウスを作成することにより、同遺伝子の不活化によるMDSの病態を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-