わが国の疾病負荷(disease burden)等に基づく保健医療研究分野の優先順位付けに関する研究

文献情報

文献番号
200400148A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の疾病負荷(disease burden)等に基づく保健医療研究分野の優先順位付けに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 敏彦(北里大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 平尾 智広(香川大学医学部)
  • 長谷川 敏彦(国立保健医療科学院)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部)
  • 杉森 裕樹(聖マリアンナ医科大学)
  • 池田 俊也(慶応義塾大学医学部)
  • 上村 隆元(杏林大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、行政施策立案の科学的根拠を創出することを主たる目的の一つとする厚生労働科学研究の研究費配分の優先順位付けにおいてわが国の疾病負担をどのように利用すべきかを検討することである。
研究方法
3年間の研究の初年度として以下の検討を行った。1)有病率や罹患率を含む疫学疾患モデルを用いた詳細法によるDALYs (Disability-adjusted Life Years, 障害調整生存年)の算出、2)DALYsやQALYsなど健康統合指標による疾病負担算出に用いる障害調整係数、健康効用値の検討、3)研究費配分における疾病負担以外の因子とその重み付け、の以上である。
結果と考察
上記1)に関しては、肺がんや脳卒中などの主要な疾患でかつデータが比較的完備しているものにつき詳細法により算出し、肺がんの全DALY中のYLD分は男性で約10%、女性で13%であり、簡便法による値の2-3割増しであった。脳卒中では乖離がさらに大きく、致死率が低いものほどそのような傾向が強いと思われた。以上より、引き続き詳細法による疾病負担の算出を他の疾患にも適用継続することとした。2)については、文献により得られた効用値とオランダで設定された障害調整係数との間に正の相関(R2=0.51)を認めた。また、循環器疾患の患者を用いて今回実施した調査においても同様に、障害調整係数と効用値の間に正の相関(R2=0.783)を認めたが、いずれも回帰により障害調整係数を予測するものではなかった。今後障害調整係数設定のためにさらに検討を重ねる必要がある。3)については、米国NIHの研究費配分につき調査を実施した。NIHでは研究費を疾患別に積算することを不可能であるとしながらも、疾患別の配分研究費に関し直接と間接に分けたデータの精度の向上に努めるとともに、公共のニーズに関する疾病負担やインパクトに関するデータの信頼性を上げ、それを研究費配分に用いるよう提案している。
結論
今年度の研究より、疾病負担の算出に詳細法を用いることの必要性が示された。詳細法を用いることの副次的な効果として、各疾病に対するさまざまな介入により疾病負担が減少した場合の健康寿命の延長効果などの算出も可能となる。次年度からは喫煙、高血圧など主要なリスク因子の減少による効果を推定することにより疾患別ではなく分野別で見た研究費配分の検討も可能である。障害調整係数については、わが国独自の値を開発することの必要性が以前より提案されていたが、すでに多く集積している健康効用値に関するデータを用いて開発する可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-09
更新日
-